医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究

文献情報

文献番号
201821019A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究
課題番号
H30-医療-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
嶋森 好子(学校法人 岩手医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 一人(中京大学)
  • 石川 雅彦(公益社団法人 地域医療振興財団)
  • 児玉 安司(国立大学法人 東京大学)
  • 水木 麻衣子(国立大学法人 東京大学)
  • 小松 恵(学校法人 岩手医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,677,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全支援センター(以下支援センター)相談員と医療機関の医療対話推進者等の相談員は、いずれも住民の安全・安心を確保することを目的に設置されている。しかし、その活動は、それぞれが所属する機関内に留まり、先駆的な取り組みを除いて連携した活動が行われていない。また、相談員の育成のための研修も独自のプログラムで行われており、必ずしも連携した活動を行うために適した研修とはなっていない。地域包括ケア推進を目指す今日、同一地域内に有って、ともに患者・家族の安心・安全を目的に設置されているこれらの相談員が、連携して活動することは必定である。本研究では、地域住民が医療に対する不信や不満を解消して、安心して医療が受けられるように、地域の支援センターの相談員と医療機関の相談員の連携の実態ついて調査を行い、連携を推進する上での課題を明らかにする。
研究方法
1.全国の支援センターを対象に質問紙調査と先駆的な取組を行っている支援センター5カ所のインタビュー調査を行った。2.質問紙調査とインタビュー調査の回答にあたっての倫理的配慮として、1)それぞれの依頼文書と質問紙及びインタビューへの回答についての説明文書に、(1)平成30年度厚生労働科学研究費の補助を受けた研究であり、(2)回答は自由意志で、回答をしないことによる不利益はなく、医療安全支援センターの今後の活動に生かせる可能性があること、(3)回答の途中でも中断が可能で、(4)データは匿名化し施設や個人名が特定されない、(5)一時的に突合可能なコード表を作成するが、研究終了時点で再生不可能な状態に破壊又は削除、(6)今後、学会等で報告することを説明した。2)インタビュー調査では、(1)説明文書、インタビュー内容、インタビューの同意書及び同意撤回書について説明後、同意書に署名の後インタビューを行った。(2)了解を得て録音した。3)岩手医科大学看護学部倫理委員会の倫理審査を受けた(N2018-9)、3.質問紙の回答は、SPSS によって量的分析を行った。自由記載内容を Nvivo を用いて分析した。4.インタビュー調査内容は、録音内容を分析し、連携が推進される要因や相談員の支援体制、相談者が受けている研修内容等について整理した。5.両者の結果を医療安全の専門家である研究協力者が参加する班会議で検討して考察を加えた。
結果と考察
1.回収率は67%で、医療安全支援センターが医療法に基づく行政の機関であり、厚生労働科学研究への理解があることで、回収率が得られたと考える。2.支援センターへの相談件数は、0件から4,000件を超えるセンターもある。件数の多い支援センターは、相談員の専任化がされている。3.支援センターの約5割は相談者の意向や相談員の判断で、医療機関へ情報提供している。4.52%のセンターが、医療機関からの結果報告が必要と答えている。5.情報提供に対して結果報告が必ずあるものは、11.6%で、支援センターの期待と、医療機関の対応にずれがある。6.支援センターが相談者から得た情報を医療機関に提供する際に、医療機関の窓口が不明確で、たらいまわしになることがある。7.支援センターの5割が相談内容を医療機関に伝えているが、その際の医療機関の対応について「不満」及び「非常に不満」と答えたのは11.2%で、その対応がセンター相談員のモチベ―ションの低下を招いている可能性がある。8.先駆的な取り組みをしている支援センターは、相談員を専任化し、積極的に相談を受けている。9.行政の課として取り組んでいる支援センターは、課内の職員の協力を得て研修の企画を行い、十分な準備の上で事業展開・評価を行うなど、PDCAサイクルを回して継続性を担保している。10.先駆的な取組を行う支援センターは、設置主体によって医療機関との連携の取りやすさの違いはあるが、研修や事例検討の場で情報共有するなど、連携を深める仕組みを創っている。
結論
1.支援センターと医療機関の連携を推進するには、支援センターが期待する医療機関の対応と医療機関の対応のずれを修正する必要がある。具体的には、医療機関がセンターの相談員から提供された情報について、その後の対応や事例の経緯等を報告する体制整備が望まれる。2.支援センターの相談員は、相談事業が対人サービス業務であり、相談者や医療機関及び自分自身の業務に対する期待など、多くの期待の板挟みとなる相談業務の特徴を知り、相談者として目的達成に必要な対人コミュニケーション技術について学ぶことも重要と考えられる。3.医療機関は、相談窓口を明確にし、地域の支援センターとの連携を推進する姿勢が必要と考えられる。4.相談員への支援体制が整っているセンターでは積極的に地域との連携が進んでおり、行政の支援センター相談員への支援体制も重要な課題と考える。

公開日・更新日

公開日
2019-12-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,700,000円
(2)補助金確定額
2,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 591,911円
人件費・謝金 144,225円
旅費 1,223,412円
その他 117,452円
間接経費 623,000円
合計 2,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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