今後の医療安全管理者の業務と医療安全管理者養成手法の検討のための研究

文献情報

文献番号
201821018A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の医療安全管理者の業務と医療安全管理者養成手法の検討のための研究
課題番号
H30-医療-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 久義(日本医療マネジメント学会)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 すが(東京医療保健大学)
  • 澤口 聡子(国立保健医療科学院)
  • 佐々木 美奈子(東京医療保健大学)
  • 末永 由理(東京医療保健大学)
  • 本谷 園子(東京医療保健大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」(以下,現行指針)策定後10 年余りが経過した.この間,医療事故調査制度や特定機能病院の医療安全管理に関する承認要件の見直しなど,医療安全に関する法整備や施策が進んでおり,現行指針に対して制度の変化や社会ニーズに十分対応出来ていない等といった意見が聞かれている.そこで,医療安全管理者の業務の実態および医療安全管理者を養成するために行われている研修の内容・方法の現状と課題を明らかにすることを目的として本研究を行った.また,医療安全対策加算を算定していない施設を対象とした調査も行い,病院規模や機能による医療安全管理活動の実態や研修へのニーズの違いを明らかにした.
研究方法
医療安全管理者の養成研修を行っている医療関係団体に対するヒアリング調査と諸外国におけるrisk management研修の状況と具体例について文献検索を行った.また,首都圏の病院に勤務する医療安全管理者に対するフォーカスグループインタビュー(以下,FGI)を実施し,病院の規模・機能別に4~5 名から成るグループに対し,業務実態および研修の必要性について尋ねた.ヒアリング調査やFGIで得られたデータおよび研究協力者による研究班会議での検討を経て調査項目を設定し,医療安全対策加算の届出を行っている病院・有床診療所(全数),医療安全対策加算の届出を行っていない病院・有床診療所(各500施設を抽出),無床診療所・歯科診療所・保険薬局(機縁法)を対象として,アンケート調査を行った.調査はWebアンケート方式とし,対象施設の医療安全管理者(もしくは医療安全の担当者)1名に対し,業務の実施状況や遂行上の困難,組織の医療安全体制,養成研修の実務への活用や研修ニーズ等について回答を求めた.各項目について単純集計を行い,回答者および所属施設の属性で比較した.
結果と考察
ヒアリング調査では,医療事故調査制度の創設に伴い,「医療事故」という用語の理解が様々であることや安全文化醸成,組織作りのための組織マネジメント能力の向上が必要とされていること,団体により研修内容に違いはあるが,参加者のニーズを把握しながら改良を重ねてきていること,フォローアップ研修など必要な研修を追加で実施していることが把握された.FGIでは業務遂行上の困難として,組織的・管理的支援の不十分さや組織横断的な活動による業務の曖昧さ,効果判定の難しさ,多職種協働や医療安全文化の醸成等が明らかとなり,活動評価,医療事故調制度や相互評価等の新しい制度に関する研修ニーズが聞かれた.医療安全対策加算の届出を行っている施設を対象にしたアンケート調査では医療安全管理者は他者の関与を伴う業務や活動の評価に困難を感じていた.医療事故調査制度に関する業務の多くに医療安全管理者が関与しており,また関与すべきと認識していた.8割が医療安全対策地域連携加算を届け出ており,多くの回答者が他施設との交流を希望し,交流による医療安全の質向上を期待していた.養成研修については,8割以上が実務に活用できたと回答しており,活用できなかった理由は,実務につながる内容でなかったことや研修修了から時間があいたこと等であった.また,業務遂行に必要な研修内容として,医療事故後の対応や医療事故調査制度,職員の動機づけ等をあげていた.医療事故調査制度や医療安全に関する地域連携への関与が医療安全管理者には求められており,こうした新たな業務を踏まえた業務指針の改訂および研修内容・方法の検討が必要である.医療安全対策加算の届出を行っていない病院および有床診療所,無床診療所・歯科医院・保険薬局を対象としたアンケート調査では限られた人材やリソースを活用し,医療安全管理体制を構築し,活動を行っていることが明らかになった.
結論
医療安全の担当者は限られた人材やリソースを活用し,医療安全管理体制を構築し,活動を行っていたが,患者や家族,他職種に働きかける業務や医療安全活動の評価に関する業務には知識や技能の不足,評価基準の不備等により困難を感じていた.また,現行指針に示された業務以外にも医療安全管理者は医療事故調査制度に関わっており,医療安全に関する地域連携等の役割が期待されていたことから,現場のニーズに対応した業務指針の改訂が望まれる.医療安全管理者の養成研修の内容は現行指針で概ねカバーできているものの,遂行が困難な業務や新たな業務が求められており,こうした研修の充実化を図る必要がある.また,基本的な業務の遂行に必要な研修とその後のフォローアップ研修等,研修時期や方法の検討が望まれる.

公開日・更新日

公開日
2019-10-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成19年3月に「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」が策定された。本研究ではこれに示された業務に加え、策定以降に開始された医療事故調査制度や医療安全対策地域連携加算に関する業務及び業務遂行に必要な研修へのニーズを明らかにした。医療安全対策加算を届け出ている全施設を対象とした調査であり、制度の変化に即した医療安全管理の現状が示された。
臨床的観点からの成果
業務の実態や業務遂行に必要な研修へのニーズを明らかにしたことで、医療安全に関する体制や人材育成上の課題とそれへの対応策を検討することができ、ひいては医療を提供する場における安全の確保につながる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
令和2年3月に改定された「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」には、本研究での提言が反映された。また、病院だけでなく、診療所や薬局等における医療安全業務の実態を明らかにしたことで、地域包括ケアにおける医療安全の確保について検討する際の材料となる。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
第21回日本医療マネジメント学会学術総会、第23回日本看護管理学会学術集会、第26回日本産業精神保健学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
堀込由紀 佐々木美奈子 中山純果 他
医療安全管理者が抱える業務遂行上の困難-フォーカス・グループ・インタビューの分析から-
日本医療マネジメント学会雑誌 , 22 (3) , 124-129  (2021)
原著論文2
末永由理 佐々木美奈子 李 廷秀 他
中小規模施設における医療安全管理者による医療事故調査制度関連業務の遂行状況と担当すべき職種-施設規模別、加算別での比較
日本医療マネジメント学会雑誌 , 23 (1) , 2-7  (2022)

公開日・更新日

公開日
2019-10-24
更新日
2023-06-02

収支報告書

文献番号
201821018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,200,000円
(2)補助金確定額
3,192,000円
差引額 [(1)-(2)]
8,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 494,429円
人件費・謝金 470,011円
旅費 427,134円
その他 1,481,009円
間接経費 320,000円
合計 3,192,583円

備考

備考
文献取り寄せの費用が想定よりもかからなかったため、残額が生じた。
確定額と支出合計額の差額は、自己資金583円である。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-