文献情報
文献番号
201821011A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模医療データを利用した医療ICT利用の効果検証に関する研究
課題番号
H29-医療-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
石川 ベンジャミン光一(国際医療福祉大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科 地域社会医学健康科学講座 医療システム学分野)
- 渡邊 亮(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール設置準備担当)
- 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
- 松居 宏樹(東京大学大学院 医学系研究科公共健康医学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,645,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では医療分野における様々なICT利用が広まっているものの、その現実的な効果を定量的に把握する研究には乏しい状況にある。本研究では、大規模医療データに基づいて医療の改善に関する指標を算出した上で、地域連携やICT技術の利用との関連性を検討することにより、医療ICT利用の現実的な効果について定量的に把握することを目的として検討を行った。
研究方法
地域レベルでのICT利用の実態を把握するためのデータとして、レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)の第三者提供の申し出を行い、入院/入院外・医療機関所在地の市区町村・診療年月の別に分けてICT利用に係わるレセプト電算処理コードについての算定件数・算定医療機関数・算定患者数を集計したNDB集計表情報の提供を受けて分析を行った。また、地域医療情報連携ネットワーク利活用の実態と課題について検証するため、半構造化質問票を用いたリサーチ・インタビューを実施した。
結果と考察
大規模データに基づく分析では、NDB集計表情報を利用することにより、新たに診療報酬に追加された電子的な情報の提供・評価の実態を把握することができた。ただし、医療ICT利用の具体的な効果検証にあたっては、診療の経過を通じた最適化と患者にとっての価値向上の両側面からの評価が不可欠であり、今後は特別抽出データを利用した分析を行うことが望まれる。またその際には、(1)情報提供が行われた患者に注目して、提供と評価の連鎖は適切な流れになっているか、(2)情報の提供と評価の前後での診療の内容に注目して、検査等の重複は排除されるか、(3)提供~評価の時間的な経過に注目して、診療にかかる時間は短縮されるか、について定量的な評価を進める必要があると考えられた。
また、地域医療情報連携ネットワークの実地調査からは、診療報酬請求で明示的な診療情報提供書の発出が求められることに対し、現場では必要に応じて随時情報を共有・参照する運用となっている点でのズレが浮き彫りとなった。今後は常時接続型のサービスを前提として現場での運用に対応したユースケースを考え、診療報酬上の評価に結びつけていくことが重要と考えられた。
また、地域医療情報連携ネットワークの実地調査からは、診療報酬請求で明示的な診療情報提供書の発出が求められることに対し、現場では必要に応じて随時情報を共有・参照する運用となっている点でのズレが浮き彫りとなった。今後は常時接続型のサービスを前提として現場での運用に対応したユースケースを考え、診療報酬上の評価に結びつけていくことが重要と考えられた。
結論
本研究では医療ICT化の現実的な効果を定量的に把握するために、大規模な医療データを用いてICT利用の実態を把握し、その効果を評価する上での課題等を明らかにすることを目的として検討を行った。その結果、2016年の診療報酬改定で追加された検査・画像情報提供加算および電子的診療情報評価料等についてNDB集計表情報を用いて算定の実態を把握することができ、今後は診療の過程を通じた最適化と患者にとっての価値向上の両側面からICT利用の効果を検証するために、提供と評価の連鎖、検査等の重複排除、診療にかかる時間の短縮という3つのアプローチで定量的な評価を進める必要があると考えられた。また、地域医療情報連携ネットワークの実地調査からは、単発的な診療情報提供のやりとりではなく、将来的には常時接続型のEHR利用を前提とした患者管理のためのICT利用を診療報酬上で評価していく必要があることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2020-01-17
更新日
-