文献情報
文献番号
201818005A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌一部)
- 大島 謙吾(東北大学病院・総合感染症科)
- 笠原 敬(奈良県立医科大学・感染症センター)
- 木村 博一(群馬パース大学・保健科学部検査技術学科)
- 金城 雄樹(国立感染症研究所・真菌部 客員研究員)
- 窪田 哲也(高知大学・教育研究部医療学系)
- 砂川 富正(国立感染症研究所・感染症疫学センター)
- 高橋 英之(国立感染症研究所 細菌一部)
- 高橋 弘毅(札幌医科大学 医学部呼吸器・アレルギー内科学講座)
- 武田 博明(済生会山形済生病院・Total Quality Managementセンター)
- 田邊 嘉也(新潟大学・医歯学総合研究科)
- 常 彬(国立感染症研究所 細菌一部)
- 西 順一郎(鹿児島大学・大学院医歯学総合研究科微生物学分)
- 藤田 次郎(琉球大学・大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科))
- 丸山 貴也(独立行政法人国立病院機構三重病院・呼吸器内科)
- 村上 光一(国立感染症研究所・感染症疫学センター)
- 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター・臨床研究センター)
- 渡邊 浩(久留米大学・医学部感染制御学講座)
- 福住 宗久(国立感染症研究所・感染症疫学センター)
- 神谷 元(国立感染症研究所・感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,752,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD), 侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD),劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の届出症例毎の患者情報と原因菌を収集し、原因菌の血清型や遺伝子型等の関連性を明らかにする。
研究方法
研究デザインは前向き観察研究で、IPD, IHD, STSSについては、国内10道県で感染症発生動向調査(NESID)に報告された症例を登録し、その基本情報を各自治体から研究分担者に連絡した。IMD については全47都道府県で小児~成人を対象に同様の調査を実施した。
結果と考察
2013年~2018年11月までに、成人IPDサーベイランスにおいて、1,496症例の症例情報と原因菌の血清型について解析した。20015年度に12F血清型によるIPD症例が初めて検出され、2016年、2017年には全症例数の16%、15%を占め、最も多い血清型となったが、2018年4~11月には12%とやや減少した。また、65歳以上の12F IPDの罹患率(/10万人)は1.0以下であり、2018年には低下傾向となった。12F IPD症例(n=120)と非12F IPD症例(n=1157) の臨床疫学的な解析から、12F IPDはより若い成人にみられ、免疫不全を含む併存症の頻度が少いことが明らかとなった。また、12F IPD死亡例の年齢はより若く、菌血症の患者の割合が多かった。この臨床的特徴から、12F血清型が高侵襲性ポテンシャルを有することが示唆された。成人の侵襲性肺炎球菌性髄膜炎228 例の原因菌の解析では、血清型 10A および 23A 型の分離頻度が17.1% と高かった。髄膜炎由来株の34.8%はペニシリン耐性であった。また、23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)のIPDに対するワクチン効果をBroome法で解析し、65歳以上で39%、15―64歳では60%と算出された。
2013 年~2018年の間に成人のIHDは 210 例 が報告された。このうち、NESID に報告された 184 症例において、患者年齢は 15―97 歳と幅広く分布し、中央値が 77 歳であった。180 症例の約 8 割に何らかの基礎疾患があり、また約 3 割は免疫抑制状態であった。記載のあった患者のうち菌血症を伴う肺炎を呈した患者が、半数以上を占めた (105/173,60.7%)。菌血症(原発巣不明)は 35.3%、髄膜炎 4.7%、関節炎 1.8% の順に多かった。65歳以上の症例では、菌血症を伴う肺炎が最も多かった。患者由来 184 株のうち、176 株 (95.7%) が non-typable Haemophilus influenzae (NTHi)であった。莢膜株はe 型が 3 株、f 型 3 株および b 型 1 株認められた。
2016年9月から2018年12月までに、93例のSTSS症例が登録された。うち、菌種が決定された77例について解析を行い、その致命率は48%であった。年齢中央値は、S. pyogenes (63.5歳)が、S. agalactiae (83.5歳)及びStreptococcus dysagalactie subsp. equisimilis (以下、SDSE) (81歳)より低かった。推定侵入門戸が判明した34症例 (41%)では、その74%が皮膚であった。侵入門戸としては皮膚がS. pyogenes (73%)、SDSE (88%)で多かったが、S. agalactiaeでは皮膚の報告はなかった。
2017年1月から2018年12月までに、67例のNESID登録症例のうち47例(70%)のIMD症例が研究班に登録され、解析された。患者年齢は0~4歳、15~85歳以上と幅広く分布し、死亡は6例であった。原因菌はY群が49%,B群21%,C群7%、W群4%であった。
2013 年~2018年の間に成人のIHDは 210 例 が報告された。このうち、NESID に報告された 184 症例において、患者年齢は 15―97 歳と幅広く分布し、中央値が 77 歳であった。180 症例の約 8 割に何らかの基礎疾患があり、また約 3 割は免疫抑制状態であった。記載のあった患者のうち菌血症を伴う肺炎を呈した患者が、半数以上を占めた (105/173,60.7%)。菌血症(原発巣不明)は 35.3%、髄膜炎 4.7%、関節炎 1.8% の順に多かった。65歳以上の症例では、菌血症を伴う肺炎が最も多かった。患者由来 184 株のうち、176 株 (95.7%) が non-typable Haemophilus influenzae (NTHi)であった。莢膜株はe 型が 3 株、f 型 3 株および b 型 1 株認められた。
2016年9月から2018年12月までに、93例のSTSS症例が登録された。うち、菌種が決定された77例について解析を行い、その致命率は48%であった。年齢中央値は、S. pyogenes (63.5歳)が、S. agalactiae (83.5歳)及びStreptococcus dysagalactie subsp. equisimilis (以下、SDSE) (81歳)より低かった。推定侵入門戸が判明した34症例 (41%)では、その74%が皮膚であった。侵入門戸としては皮膚がS. pyogenes (73%)、SDSE (88%)で多かったが、S. agalactiaeでは皮膚の報告はなかった。
2017年1月から2018年12月までに、67例のNESID登録症例のうち47例(70%)のIMD症例が研究班に登録され、解析された。患者年齢は0~4歳、15~85歳以上と幅広く分布し、死亡は6例であった。原因菌はY群が49%,B群21%,C群7%、W群4%であった。
結論
成人IPDサーベイランスにおいて、12Fは高侵襲性の血清型と考えられた。その臨床像はより若い成人に発症し、菌血症の割合が多かった。また、12F IPDの増加は小児PCV13の定期接種導入に伴うserotype replacementではないと考えられた。PPSV23の成人IPDに対する効果が確認された。成人IHD症例184 症例において、患者年齢の中央値は77歳であった。その原因菌の大半がNTHiであった。成人STSSの77例について菌名別の解析を行い、年齢中央値は、S. pyogenesが、S. agalactiae及びSDSEより若かった。推定侵入門戸としては皮膚がS. pyogenes、SDSEで多かった。IMD47症例中、死亡は6例であった。原因菌で最も多い血清群はY群で、以下、B群、C群、W群の順であった。
公開日・更新日
公開日
2019-08-01
更新日
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