医療観察法の制度対象者の治療・支援体制の整備のための研究

文献情報

文献番号
201817037A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法の制度対象者の治療・支援体制の整備のための研究
課題番号
H30-精神-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 精神リハビリテーション部、第二精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 太郎(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
  • 壁屋 康洋(独立行政法人国立病院機構 榊原病院)
  • 村杉 謙次(独立行政法人国立病院機構 小諸高原病院)
  • 大鶴 卓(独立行政法人国立病院機構 琉球病院)
  • 岡田 幸之(国立大学法人 東京医科歯科大学)
  • 五十嵐 禎人(国立大学法人 千葉大学)
  • 今村 扶美(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主たる目的は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)の制度対象者に関する転帰・予後・治療介入等の実態を継続的に明らかにすること、国際比較やいわゆる複雑事例のプロファイリングとセグメント化を行い、それらを基にした実効性の高い治療や介入方法等を示すことである。
研究方法
8つの分担研究班を編成し、各分担研究班の連携を図るとともに研究成果を共有することを目的として2回の研究班会議を開催した。各分担研究班は、疫学調査または介入研究を実施した。研究の実施に先立って、6つの分担研究班において倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
医療観察法重度精神疾患標準的治療法確立事業により平成29年12月から全国の指定入院医療機関から毎月提出され国立精神・神経医療研究センター病院に蓄積されることとなった、いわゆる“入院データベース”を臨床及び研究活用するための準備を進めた。また退院後の対象者について、転帰・長期予後に関する全国調査等を行った。指定入院医療機関を退院し通院処遇に移行した対象者の再他害行為発生率をKaplan-Meier法により算出すると1.9%/3年であった。また、自殺既遂の累積発生率は1.6%/3年であった。全指定入院医療機関を対象として、長期入院例や行動制限実施例など複雑事例の統計学的検討及び個別調査を実施した。「長期入院群」と「行動制限群」の両群に重複して属する事例が複雑事例の中核群と推測された。困難・複雑事例に対して個別性の高い心理社会的介入を実施し、その効果測定を開始した。指定入院医療機関全施設での実施を目指し、今後も継続予定である。コンサルテーションの対象となった困難・複雑事例は、統合失調症に加えて、知的・発達の問題を抱えた対象者が多い傾向が認められた。
各種判例データベースを利用して、医療観察法の審判が難しかったと思われるケースを抽出し、審判の判断の要点を特定する作業を行った。その結果、医療観察法審判において重視される6つの要点が明らかとなった。また、裁判所と適切な審判のあり方について協議を開始した。
通院医療に携わる各種医療関係の団体や協会と密接に協議し、通院医療の実態把握のためのシステム概略案、収集項目案を作成した。また、全指定通院医療機関を対象として同案に沿った予備的、実態把握調査を実施する研究計画を作成した。今後、同案の実行可能性の検証及び運用のための課題整理を行う予定である。
英国の司法精神医療の最近の動向について、文献調査を行った。司法精神医療の入院患者を減少させるためには、地域資源の整備と地域住民への啓発活動が重要であることが示唆された。また、将来的には、司法精神医療でもコストの問題に目を向ける必要があることが示唆された。
結論
我が国の医療観察制度は約13年間運用され、再他害行為発生率の低さや各種の指標から概ね順調に運用されていると考えられた。一方、指定入院医療機関では、長期入院や、長期または頻回行動制限を必要とする複雑事例が認められ、その特徴が一部明らかにされたが、さらに明確化し治療・介入方法の開発が必要である。クロザピンなどの生物学的治療に加え、行動障害や生活障害に対する心理社会的介入の強化が必要である。指定入院医療機関同士の密接な連携による、施設を超えたコンサルテーションの実施や高規格ユニット、もしくは既存の指定入院医療機関への転院の実践も検討する必要がある。医療観察制度の運用や見直しにとって必要不可欠な通院処遇の基礎的データを収集するための体制をただちに構築する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201817037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,028,278円
人件費・謝金 2,575,362円
旅費 3,236,806円
その他 1,698,554円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
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