向精神薬の処方実態の解明と適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインに関する研究

文献情報

文献番号
201817027A
報告書区分
総括
研究課題名
向精神薬の処方実態の解明と適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインに関する研究
課題番号
H29-精神-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山之内 芳雄(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神医療政策研究部)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 橋本 亮太(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神疾患病態研究部)
  • 稲田 健(東京女子医科大学 医学部・精神医学)
  • 岸 太郎(藤田医科大学精神神経科学)
  • 渡辺 範雄(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻)
  • 岡田 俊(国立大学法人 名古屋大学名古屋大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業の目的は、国内の6種の向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬、ADHD治療薬)の処方実態とその臨床的問題点を明らかにし、向精神薬の適正処方を実践するための実証的データとエビデンスを収集して政策提言を行い、専門家によるコンセンサスミーティングを通じて向精神薬の適正処方を実践するためのガイドラインと応用指針を作成することである。
研究方法
目的を達成するため以下の課題に取り組んだ。各分担研究班は関連領域の研究協力者を募り学際的に研究を進め、定期的に班会議を開催し、相互に連携してデータの分析と解釈を行った。
1)大規模診療報酬データを用いた向精神薬処方に関する実態調査研究
2)医師・薬剤師を対象とした向精神薬処方に関する意識調査
3)薬物乱用・依存リスクの高い向精神薬と乱用・依存患者の背景要因に関する研究
4)EGUIDEプロジェクトと連動した向精神薬の処方実態調査と診療の質指標による教育効果の評価
5)向精神薬の適正処方、減薬基準、減薬方法などに関するエビデンスの抽出方法の策定
6)向精神薬の適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインの作成
結果と考察
各研究課題の成果は以下の通りである。
1) 大規模診療報酬データを用いた向精神薬処方に関する実態調査研究:社会保険及び国民健康保険を含む大規模診療報酬データを用いて国内における向精神薬の処方実態を調査すると同時に、平成24年度/26年度/28年度の診療報酬改定の効果検証及び今後の検討課題の抽出を行った。同時に小児や高齢者など向精神薬のあり方が論議されている臨床群での処方状況、適応外処方、併用禁忌処方の実態を明らかにした。
2)医師を対象とした向精神薬処方に関する意識調査:精神科・心療内科の医師(319名; M/F=286/33)を対象にして、向精神薬をその主たる標的疾患に用いる際の薬剤の選択基準、薬物療法によって症状が改善した後の中止の是非、中止(減薬を開始)するまでの期間、減薬方法等に関する処方医のオンライン意識調査を実施した。
3)薬物乱用・依存リスクの高い向精神薬と乱用・依存患者の背景要因に関する調査:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患患者の調査から、向精神薬乱用・依存を引き起こしやすい薬剤の種類と患者側の要因を明らかにした。
4)EGUIDEプロジェクトと連動した大学病院での向精神薬の処方実態調査と診療の質指標による教育効果の評価:EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究:Effectiveness of GUIdeline for Dissemination and Education in psychiatric treatment)と連動して大学病院における向精神薬の処方実態を調査するとともに、適正使用講習によって医師の処方行動、理解度、診療の質指標(Quality Indicator: QI)の向上が得られるか検証した。
5)精神疾患に対する向精神薬の有用性、安全性、減薬・中止法の検討:精神疾患の薬物療法に関する国内外の既存ガイドライン及び関連する臨床研究、疫学研究を系統的レビューすることにより、基礎疾患別の向精神薬のリスクベネフィット比の違い、乱用・依存形成のリスク要因、長期服用例における安全で効果的な減量・休薬法に関する検討を行った。
6)向精神薬の適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインの作成:精神疾患の薬物療法に関する国内外の既存ガイドライン及び関連する臨床研究、疫学研究を系統的レビューすることにより、基礎疾患別の向精神薬のリスクベネフィット比の違い、乱用・依存形成のリスク要因、長期服用例における安全で効果的な減量・休薬法に関する検討を行った。また、本研究班において作成する向精神薬ガイドライン全体に関して、先述の方法論の質を一定水準以上で担保するための指針作りを行なった。
結論
本研究事業の成果により、国内における向精神薬の処方実態が明らかになった。とりわけ、平成24年度〜28年度の診療報酬改定以降の診療報酬改訂の効果に関する実証的データが得られた。全国の精神科医療施設及びEGUIDEプロジェクト参加施設を対象とした調査により向精神薬への乱用、依存の実態とその背景要因、適正使用に向けた教育効果を明らかになった。これらは今後の医療行政及びわが国における向精神薬の適正使用を推進する上での重要な基礎資料となる。また、系統的レビューによる精神疾患に対する向精神薬の有用性、安全性、減薬・中止法の検討を行った。向精神薬の適正使用ガイドラインの普及により多剤併用、高用量処方の主因である向精神薬の漫然長期処方に歯止めがかかり、精神科薬物療法の質の向上と均てん化を進める効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201817027B
報告書区分
総合
研究課題名
向精神薬の処方実態の解明と適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインに関する研究
課題番号
H29-精神-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山之内 芳雄(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神医療政策研究部)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 橋本 亮太(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神疾患病態研究部)
  • 稲田 健(東京女子医科大学 医学部・精神医学)
  • 岸 太郎(藤田医科大学精神神経科学)
  • 渡辺 範雄(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻)
  • 岡田 俊(国立大学法人 名古屋大学名古屋大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業の目的は、国内の6種の向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬、ADHD治療薬)の処方実態とその臨床的問題点を明らかにし、向精神薬の適正処方を実践するための実証的データとエビデンスを収集して政策提言を行い、専門家によるコンセンサスミーティングを通じて向精神薬の適正処方を実践するためのガイドラインと応用指針を作成することである。
研究方法
目的を達成するため以下の課題に取り組んだ。
1)大規模診療報酬データを用いた向精神薬処方に関する実態調査研究
2)医師・薬剤師を対象とした向精神薬処方に関する意識調査
3)薬物乱用・依存リスクの高い向精神薬と乱用・依存患者の背景要因に関する研究
4)EGUIDEプロジェクトと連動した向精神薬の処方実態調査と診療の質指標による教育効果の評価
5)向精神薬の適正処方、減薬基準、減薬方法などに関するエビデンスの抽出方法の策定
6)向精神薬の適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインの作成
結果と考察
各研究課題の成果は以下の通りである。
1) 大規模診療報酬データを用いた向精神薬処方に関する実態調査研究:社会保険及び国民健康保険を含む大規模診療報酬データを用いて国内における向精神薬の処方実態を調査すると同時に、平成24年度/26年度/28年度の診療報酬改定の効果検証及び今後の検討課題の抽出を行った。同時に小児や高齢者など向精神薬のあり方が論議されている臨床群での処方状況、適応外処方、併用禁忌処方の実態を明らかにした。
2)医師を対象とした向精神薬処方に関する意識調査:精神科・心療内科の医師(319名; M/F=286/33)を対象にして、向精神薬をその主たる標的疾患に用いる際の薬剤の選択基準、薬物療法によって症状が改善した後の中止の是非、中止(減薬を開始)するまでの期間、減薬方法等に関する処方医のオンライン意識調査を実施した。
3)薬物乱用・依存リスクの高い向精神薬と乱用・依存患者の背景要因に関する調査:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患患者の調査から、向精神薬乱用・依存を引き起こしやすい薬剤の種類と患者側の要因を明らかにした。
4)EGUIDEプロジェクトと連動した大学病院での向精神薬の処方実態調査と診療の質指標による教育効果の評価:EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)と連動して大学病院における向精神薬の処方実態を調査するとともに、適正使用講習によって医師の処方行動、理解度、診療の質指標(Quality Indicator: QI)の向上が得られるか検証した。
5)精神疾患に対する向精神薬の有用性、安全性、減薬・中止法の検討:精神疾患の薬物療法に関する国内外の既存ガイドライン及び関連する臨床研究、疫学研究を系統的レビューすることにより、基礎疾患別の向精神薬のリスクベネフィット比の違い、乱用・依存形成のリスク要因、長期服用例における安全で効果的な減量・休薬法に関する検討を行った。
6)向精神薬の適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインの作成:各向精神薬の治療終結(主要標的疾患の寛解・回復後の減薬・休薬・中止)の基準、妥当性、安全性に関するガイドラインを作成するため、精神科医、心療内科医、薬剤師、臨床心理士、一般有識者、法曹関係者、計80名から構成されるガイドライン班を立ち上げた。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬、ADHD治療薬の6種の向精神薬について治療終結の可否と是非を問うSCOPE(CQ設定)の作成を行った。レビューチームが6つの向精神薬チームに分かれ、Minds法に準じて、スコープ(クリニカルクエスチョン; CQ)の作成、検索式の作成と文献検索、スクリーニング、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。最終的に9つのCQに対してレビューを完遂し、推奨を決定した。
結論
本研究事業の成果により、国内における向精神薬の処方実態が明らかになった。とりわけ、平成24年度〜28年度の診療報酬改定以降の診療報酬改訂の効果に関する実証的データが得られた。全国の精神科医療施設及びEGUIDEプロジェクト参加施設を対象とした調査により向精神薬への乱用、依存の実態とその背景要因、適正使用に向けた教育効果を明らかになった。これらは今後の医療行政及びわが国における向精神薬の適正使用を推進する上での重要な基礎資料となる。また、系統的レビューによる精神疾患に対する向精神薬の有用性、安全性、減薬・中止法の検討を行った。向精神薬の適正使用ガイドラインの普及により多剤併用、高用量処方の主因である向精神薬の漫然長期処方に歯止めがかかり、精神科薬物療法の質の向上と均てん化を進める効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201817027C

収支報告書

文献番号
201817027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,775,000円
(2)補助金確定額
10,775,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,298,610円
人件費・謝金 2,092,081円
旅費 2,761,345円
その他 3,347,964円
間接経費 1,275,000円
合計 10,775,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-