文献情報
文献番号
201817011A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害の原因、疫学に関する情報のデータベース構築のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
- 土屋 賢治(浜松医科大学 子どものこころの発達教育センター)
- 篠山 大明(信州大学 学術研究院医学系)
- 内山 登紀夫(大正大学 心理学部)
- 野見山 哲生(信州大学 学術研究院医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,発達障害の原因や疫学に関する国内外の調査・研究等の収集と分析を行い,継続的に情報を蓄積・公表していくためのデータベースの仕組みを提案することである。
研究方法
(1)疾患・障害の情報データベースに関する先行事例の実態調査,(2)原因に関する調査・研究の収集および分析,(3)発達障害の疫学に関する情報の収集および分析,(4)成人の発達障害に関する調査・研究の収集と分析,(5)国内の複数の拠点における発達障害の定点観測システムの構築に関する研究,(6)学校における発達障害の支援ニーズ把握のシステム化の方法論の検討,の6つのテーマについて,調査・研究を行った。
結果と考察
(1)アメリカ,イギリス,日本の公的ウェブサイトを検索した結果,ASD,ADHD,LD,言語症,その他の障害,発達障害全体のすべてについてページを作成していたのは,アメリカの疾病予防管理センター(CDC)と国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センターだけであった。CDCはASD,ADHD,トゥレット症,神経発達症全体についての項で,研究や統計に関するページを含んでいた。
わが国の発達障害情報・支援センターおよび発達障害教育推進センターのウェブサイトでは,それぞれ厚生労働省や文部科学省の研究助成事業等で行われた研究成果のサイトへのリンクなどはあったが,それ以外の研究の紹介や疫学的な情報は掲載していなかった。
国立がん研究センターのがん情報提供部では,がんに関連する情報や支援プログラムの作成,活用支援,普及/均てん化に関する活動を行っており,疫学等の統計データについては,2016年1月から開始されたがん登録の情報がここで公開されていた。
(2)ASD,ADHDの病因研究の両方に共通して,①論文の絶対数が経年的に増えている,②従来の主役であった遺伝学的研究や心理学的研究から神経科学的研究が主流になりつつある,ことが明らかになった。これらの動向を読み解き,また重要な総説を通して,以下の領域における病因論のエビデンスレベルを詳細に検討するべきであること,またそれをデータベースに収載すべきであることが明らかになった。
(3)ADHDの有病率に関しては明らかな経時的な増加が示されていないが,ASDの有病率に関しては世界的な著しい増加を示していた。このような経時的変化を反映するためにデータを定期的にアップデートすることが求められており,恒常的な疫学データ収集を可能にする仕組み作りが必要である。
(4)調査・研究の文献レビューにより,①地域をベースにした成人発達障害の疫学調査は海外においても少ないこと,② 精神科病院や司法施設における疫学調査が重視されていること,③精神科合併症についての議論が増大していること,④老年期の発達障害について関心が高まっていることなどが明らかになった。
地域の高齢者を中心とした福祉相談の最寄りの窓口として全国に設置されている地域包括支援センターにおいて,少ないながら発達障害者の相談事例があることがインタビューから確認された。
(5)国内12市において,平成18年4月2日~平成19年4月1日生まれの子どもたちを対象とした発達障害の疫学調査を行った。このコホートについては,小学1年生から6年生までの縦断的な疫学データの推移をみることができた。その他,名古屋市において新たな調査を行った。
(6)長野県教育委員会が定期的に行っている発達障害に関する実態調査の概要についてインタビュー調査を行った。また,現在の学校現場で発達障害がどの程度問題とされているかを把握するため,全国連合小学校長会に連絡をとり,同会の資料を入手し,分析した。発達障害のある子どもおよびその疑いのある子どもの実態の把握を学校で定期的に行うことが,わが国の発達障害対策においてきわめて重要であることが示唆された。
わが国の発達障害情報・支援センターおよび発達障害教育推進センターのウェブサイトでは,それぞれ厚生労働省や文部科学省の研究助成事業等で行われた研究成果のサイトへのリンクなどはあったが,それ以外の研究の紹介や疫学的な情報は掲載していなかった。
国立がん研究センターのがん情報提供部では,がんに関連する情報や支援プログラムの作成,活用支援,普及/均てん化に関する活動を行っており,疫学等の統計データについては,2016年1月から開始されたがん登録の情報がここで公開されていた。
(2)ASD,ADHDの病因研究の両方に共通して,①論文の絶対数が経年的に増えている,②従来の主役であった遺伝学的研究や心理学的研究から神経科学的研究が主流になりつつある,ことが明らかになった。これらの動向を読み解き,また重要な総説を通して,以下の領域における病因論のエビデンスレベルを詳細に検討するべきであること,またそれをデータベースに収載すべきであることが明らかになった。
(3)ADHDの有病率に関しては明らかな経時的な増加が示されていないが,ASDの有病率に関しては世界的な著しい増加を示していた。このような経時的変化を反映するためにデータを定期的にアップデートすることが求められており,恒常的な疫学データ収集を可能にする仕組み作りが必要である。
(4)調査・研究の文献レビューにより,①地域をベースにした成人発達障害の疫学調査は海外においても少ないこと,② 精神科病院や司法施設における疫学調査が重視されていること,③精神科合併症についての議論が増大していること,④老年期の発達障害について関心が高まっていることなどが明らかになった。
地域の高齢者を中心とした福祉相談の最寄りの窓口として全国に設置されている地域包括支援センターにおいて,少ないながら発達障害者の相談事例があることがインタビューから確認された。
(5)国内12市において,平成18年4月2日~平成19年4月1日生まれの子どもたちを対象とした発達障害の疫学調査を行った。このコホートについては,小学1年生から6年生までの縦断的な疫学データの推移をみることができた。その他,名古屋市において新たな調査を行った。
(6)長野県教育委員会が定期的に行っている発達障害に関する実態調査の概要についてインタビュー調査を行った。また,現在の学校現場で発達障害がどの程度問題とされているかを把握するため,全国連合小学校長会に連絡をとり,同会の資料を入手し,分析した。発達障害のある子どもおよびその疑いのある子どもの実態の把握を学校で定期的に行うことが,わが国の発達障害対策においてきわめて重要であることが示唆された。
結論
発達障害に関する情報データベースは,国内外ともにまだ十分に整えられてはいないが,アメリカのCDCおよび国立がんセンターの先行事例は参考になると思われた。
収集すべき研究については,近年論文の絶対数が増えている。疫学では,ASDの有病率データが上昇傾向にあり,定期的なアップデートが必要である。
成人期の発達障害に関する研究は児童期に比してまだ少ないが,成人期特有の問題への注目が高まっている。
今後,国内の複数の拠点で定期的に発達障害の統計データをモニターする体制をつくっていくことが求められる。その際には,医療機関だけでなく学校においても通常業務統計の一環として発達障害およびその疑いのある子どもたちの実態を把握し,データを蓄積できる体制づくりが必要である。
収集すべき研究については,近年論文の絶対数が増えている。疫学では,ASDの有病率データが上昇傾向にあり,定期的なアップデートが必要である。
成人期の発達障害に関する研究は児童期に比してまだ少ないが,成人期特有の問題への注目が高まっている。
今後,国内の複数の拠点で定期的に発達障害の統計データをモニターする体制をつくっていくことが求められる。その際には,医療機関だけでなく学校においても通常業務統計の一環として発達障害およびその疑いのある子どもたちの実態を把握し,データを蓄積できる体制づくりが必要である。
公開日・更新日
公開日
2019-10-03
更新日
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