文献情報
文献番号
201817001A
報告書区分
総括
研究課題名
聴覚障害児支援のための研修プログラム・テキスト開発のための研究
課題番号
H30-感覚器-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 生子(帝京平成大学 健康メディカル学部)
研究分担者(所属機関)
- 熊井 正之(東北大学大学院教育学研究科)
- 大倉 得史(京都大学大学院人間・環境学研究科)
- 森 尚彫(関西福祉科学大学 保健医療学部)
- 野原 信(帝京平成大学 健康メディカル学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦では新生児聴覚スクリーニングの普及に伴い、0歳台から臨床支援を要する子どもが増加している。しかし療育機関の設置状況の地域差ゆえに、居住地域で十分な支援を受けられないケースも少なくない。
当事者によれば、難聴とは音韻記号の聴取困難に留まらず、子どもの自己形成や社会性の獲得に影響する感性(情操)的なコミュニケーションの不全感を招き、それに伴う不安感や孤独感、抑うつ感を招く問題である。同時に日常を彩る音の風景の喪失と、ことばや文化の概念基盤を支える感性的な経験の喪失も大きい問題である。
これらに鑑み、子どもの生育後の社会参加と自己形成を念頭に、児童発達支援初任者向けに聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援研修プログラム・テキストを開発し、望ましい臨床発達支援の在り方を示した。また子どもの発達を養育者や子どもを取り巻く人々との関係発達の視点でとらえ、聴覚活用と手話使用が単純に拮抗しないことを示した。
当事者によれば、難聴とは音韻記号の聴取困難に留まらず、子どもの自己形成や社会性の獲得に影響する感性(情操)的なコミュニケーションの不全感を招き、それに伴う不安感や孤独感、抑うつ感を招く問題である。同時に日常を彩る音の風景の喪失と、ことばや文化の概念基盤を支える感性的な経験の喪失も大きい問題である。
これらに鑑み、子どもの生育後の社会参加と自己形成を念頭に、児童発達支援初任者向けに聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援研修プログラム・テキストを開発し、望ましい臨床発達支援の在り方を示した。また子どもの発達を養育者や子どもを取り巻く人々との関係発達の視点でとらえ、聴覚活用と手話使用が単純に拮抗しないことを示した。
研究方法
児童発達支援現場の現任者、有識者、当事者の協力を得て、医療、福祉、教育・心理の各領域を網羅した包括的な学習プログラムを作成した。保育支援の考え方には鯨岡の関係発達論を基調に据え、さらに医療的な聴覚障害児支援の在り方については、田中・廣田らが実践したホームトレーニング指導の考え方を応用した内容とした。
テキストは研究代表者が作成した言語聴覚士養成用の講義用資料を基に、医師、言語聴覚士、視能訓練士、当事者ら11名の研究協力を得て作成した。またDVDは、医師、言語聴覚士、視能訓練士、当事者、手話通訳者他26名の研究協力下に4番組を作成・収録した。テキストおよびDVDに登場する患者のプライバシーに配慮し、個人を特定できないよう注意した。VTR撮影の際は画像の使用目的を説明し、書面にて同意を得た上で撮影を行い、希望に応じて画像処理と匿名化を図った。
テキストは研究代表者が作成した言語聴覚士養成用の講義用資料を基に、医師、言語聴覚士、視能訓練士、当事者ら11名の研究協力を得て作成した。またDVDは、医師、言語聴覚士、視能訓練士、当事者、手話通訳者他26名の研究協力下に4番組を作成・収録した。テキストおよびDVDに登場する患者のプライバシーに配慮し、個人を特定できないよう注意した。VTR撮影の際は画像の使用目的を説明し、書面にて同意を得た上で撮影を行い、希望に応じて画像処理と匿名化を図った。
結果と考察
本邦の児童発達支援現場では、聴覚障がい児および盲ろう児の早期支援法は十分普及しておらず、その普及と支援内容の質の担保が、今後早急に解決すべき重要な課題である。
他方、発達の最早期にある聴覚障がい児及び盲ろう児の支援では、子どもを育成する養育者への初期対応は極めて重要であり、早期に補装具(補助具)を適切に活用するとともに、柔軟に補助的手段を活用しながら、情操的で、生き生きとした親子の感性的なコミュニケーション関係を構築することには大変大きい意義がある。
そしてこうした親子間の感性的なコミュニケーション関係の構築とは、子どもの日本語(特に概念)の獲得や文化の理解に大きい意義を有するのみならず、子どもの健やかな自己形成や社会性の発達にも、極めて大きい影響を及ぼすと考えらえる。
テキストは子どもと養育者双方への支援を重視し、基礎研修3領域(【領域1】:聴覚障がい乳幼児・盲ろう乳幼児の早期発達支援の基本指針【領域2】:聴覚障害・視覚障害の評価・診断の基礎【領域3】:聴覚障害・視覚障害の補装具・補助具と環境調整、情報アクセシビリティ)と、応用研修1領域(【領域4】:聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援の実際)から構成(総ページ数は394ページ)し、初任者が基礎から実践まで、段階的に学習可能となるよう具体的かつ平易に作成した。
また学習補助教材としてDVDを作成し4番組(番組1:聴覚障がい児および聴覚障害ベースの盲ろう児の支援 基礎編・番組2:聴覚障がい児および聴覚障害ベースの盲ろう児の支援 実践編・番組3:視覚障がい児および視覚障害ベースの盲ろう児の支援 基礎編・番組4:盲ろう者とコミュニケーション)を収録してテキストに添付した。
今後、本テキストを活用した初任者向け研修会の定期開催等により、聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援法が普及するとともに、支援内容の質的な向上が期待される。
他方、発達の最早期にある聴覚障がい児及び盲ろう児の支援では、子どもを育成する養育者への初期対応は極めて重要であり、早期に補装具(補助具)を適切に活用するとともに、柔軟に補助的手段を活用しながら、情操的で、生き生きとした親子の感性的なコミュニケーション関係を構築することには大変大きい意義がある。
そしてこうした親子間の感性的なコミュニケーション関係の構築とは、子どもの日本語(特に概念)の獲得や文化の理解に大きい意義を有するのみならず、子どもの健やかな自己形成や社会性の発達にも、極めて大きい影響を及ぼすと考えらえる。
テキストは子どもと養育者双方への支援を重視し、基礎研修3領域(【領域1】:聴覚障がい乳幼児・盲ろう乳幼児の早期発達支援の基本指針【領域2】:聴覚障害・視覚障害の評価・診断の基礎【領域3】:聴覚障害・視覚障害の補装具・補助具と環境調整、情報アクセシビリティ)と、応用研修1領域(【領域4】:聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援の実際)から構成(総ページ数は394ページ)し、初任者が基礎から実践まで、段階的に学習可能となるよう具体的かつ平易に作成した。
また学習補助教材としてDVDを作成し4番組(番組1:聴覚障がい児および聴覚障害ベースの盲ろう児の支援 基礎編・番組2:聴覚障がい児および聴覚障害ベースの盲ろう児の支援 実践編・番組3:視覚障がい児および視覚障害ベースの盲ろう児の支援 基礎編・番組4:盲ろう者とコミュニケーション)を収録してテキストに添付した。
今後、本テキストを活用した初任者向け研修会の定期開催等により、聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援法が普及するとともに、支援内容の質的な向上が期待される。
結論
聴覚障がい児および盲ろう児の早期支援体制に、地域差の大きい本邦の現状に鑑み、聴覚障がい児および盲ろう児の発達支援プログラムを開発し、DVD付きテキストを編纂した。
テキストは医療・福祉・教育・心理の広い領域を網羅した内容とし、基礎研修領域3領域と応用研修領域1領域の全4領域から構成され、学習補助教材としてDVD(4番組収録)が添付されている。 支援法には鯨岡の保育理論(関係発達論)を基調とし、子どもと養育者双方への支援を重視した。本テキストは現任者と有識者、当事者との協働により作成された点に大きい特色がある。
今後、テキストを活用した研修体制の確立により、聴覚障がい児および盲ろう児の早期支援の方法が広く周知され、当事者の利益に還元されることが強く期待される。
テキストは医療・福祉・教育・心理の広い領域を網羅した内容とし、基礎研修領域3領域と応用研修領域1領域の全4領域から構成され、学習補助教材としてDVD(4番組収録)が添付されている。 支援法には鯨岡の保育理論(関係発達論)を基調とし、子どもと養育者双方への支援を重視した。本テキストは現任者と有識者、当事者との協働により作成された点に大きい特色がある。
今後、テキストを活用した研修体制の確立により、聴覚障がい児および盲ろう児の早期支援の方法が広く周知され、当事者の利益に還元されることが強く期待される。
公開日・更新日
公開日
2019-08-14
更新日
-