認知症の予防と認知症者のリハビリテーションのガイドライン作成

文献情報

文献番号
201816005A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の予防と認知症者のリハビリテーションのガイドライン作成
課題番号
H29-認知症-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 土井 剛彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部 )
  • 牧迫 飛雄馬(鹿児島大学 学術研究院医歯学域・医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,638,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 認知症予防を目指した取り組みとして、非薬物療法による取り組みが検討されてきた。そのなかでも、身体活動の増進や運動の実施が健常高齢者の認知機能の維持・向上にある一定の効果があると報告されてきた。しかし、軽度認知障害(MCI)のように認知機能が低下した高齢者を対象にした研究のメタアナリシスにおいては一貫した結果を得られるには至っていない。さらに、大規模集団に対して実施可能なプログラム、そしてその効果については未だ検討がなされていない。これらを明らかにするために、プログラムの開発とその効果検証を本研究の目的とし、今年度においては、レビューの結果を考慮しプログラムの構成要素として選定されたウォーキングを、より効果的に一人でも実施できるようにするために、ツールを用いた方法を検討した。その中で、ポールウォーキングを含むNordic Walking(NW)に着目し、その方法および効果についてレビューした。また、システマティックレビューを実施し、身体、知的活動の2種類の介入において、介入頻度や介入時間、および対象者の参加率が認知機能の維持・向上における介入効果に及ぼす影響について検討した。さらに、1年以上の長期の運動介入が、認知症発症およびMCI発症抑制に寄与するかについてエビデンスの精査を実施した。
研究方法
 NWについて、歩行様式、使用する器具について基礎情報を含め先行研究等に基づいて要約した。また、NWによる種々の効果についても同様に、先行研究およびシステマティックレビューについて検討した。
 身体、知的活動を介入に用いた研究のシステマティックレビューを実施し、主要アウトカムは認知機能とした。プログラムの構成要素として、介入頻度、総介入時間、対象者の参加率によるサブグループ化を行い、解析を実施した。
 RCTデザインで1年以上の長期の運動介入の効果について認知症発症およびMCI発症をアウトカム指標として設定している先行研究をレビューした。
結果と考察
 NWは、高齢者において安全で実行可能性の高い有酸素運動であり、身体機能や、生活の質を高める有効な介入方法であることがわかっている一方で、身体機能や一部、心理面への効果を検証するにとどまっている。認知機能への効果を検証することは、運動による認知症予防のエビデンスの構築を加速することができると考えられる。先行研究にみられる知見を勘案すると、有酸素運動であるウォーキングに、NWや運動と同時に認知的課題をこなすデュアルタスク・トレーニングの要素を取り入れることで、多くの人に対して効果的な運動習慣化を図ることが期待できる。
 システマティックレビューにより、身体活動による介入では、頻度が高い、介入時間が長いプログラムで実施した方が、より多様な認知機能において有意な改善効果が認められた。参加率については、注意機能の向上を目的とする場合には、参加率を高めるような工夫が積極的に求められると考えられる。知的活動による介入では、今回採用したカットポイント未満の頻度、介入時間での実施であっても介入効果が認められる可能性があるが、介入時間の担保によってより大きな効果が得られる可能性がある。参加率については、80%未満でも認知機能に対し有意な改善効果が認められたが、80%未満に該当する研究が多く、効果量と合わせて解釈を行う必要がある。
 1年以上の長期にわたる運動介入では、認知症およびMCI発症に対して、対照群に比べて運動群が明らかに発症率を抑制できたとする差異は認められなかった。これらの報告では、対照群にも運動以外の介入が行われており、介入を全く行わなかった場合と比較することで運動介入の効果を検証する必要があると考えられる。
結論
 ツールを利用したウォーキングを実施することで、多くの人が認知機能低下抑制のためのプログラムに取り組める可能性があり、認知機能に与える影響を検証する必要性が示された。また、システマティックレビューの解析により、望ましい頻度や介入時間などが明らかになり、それらを検証するプログラムに反映する必要性が示唆された。さらに、認知症の発症予防を明確にするためには、より多くの対象者を長期にわたって観察し、対照群の設定を適切に行う必要がある。これらの知見を今後の検討課題に反映させることが重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-02-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-02-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201816005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,729,000円
(2)補助金確定額
4,729,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 666,439円
人件費・謝金 460,357円
旅費 205,910円
その他 2,305,294円
間接経費 1,091,000円
合計 4,729,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-02-21
更新日
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