文献情報
文献番号
201815007A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅・介護施設等における医療的ケアに関連する事故予防のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
- 後 信(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 坂口 美佐(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 栗原 博之(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,835,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療機関における医療事故の発生状況および対策については、日本医療機能評価機構が医療事故情報収集等事業として2004年から実施しており、医療事故情報収集等事業には、2018年12月31日現在、合計1,502施設が参加している。また、2015年10月からは医療事故調査制度が施行され、全医療機関から死亡事例の分析報告が登録されるようになっている。しかし、介護施設については、全国規模の報告・集計の仕組みや再発防止に関する情報提供等は行われておらず、介護施設においてどのような医療事故がどのような原因でどの程度の頻度で発生しているか、予防および再発防止についてどのような取り組みがなされているか等の分析、また、その結果のフィードバックはほとんど行われていない。
現在、医療提供体制は、従来の病院を中心とした医療から在宅を含めた地域全体での医療・介護という仕組みに移行しつつあり、介護施設においても安全な医療・介護の実施が求められている。今後、超高齢化社会を迎えるにあたり、介護施設の果たす役割は益々大きくなるため、国民の介護施設に対する様々な要求がさらに高まる可能性が考えられる。
介護施設と医療機関では医療的ケアを実施する職員の職種や構成が異なるため、介護施設で発生する医療的ケアに関する事故については、発生するプロセスや背景要因、根本原因などが医療機関における事故とは異なる可能性が示唆される。従って、介護施設において発生した事故事例を収集し、詳細に分析することは、介護施設における安全な医療的ケアの提供に大きな意味を持つものと考えられる。
本研究では、介護施設における医療・介護の質および安全の向上を目的に、介護施設において発生した医療的ケアに関する事故等を収集・分析し、再発防止に取り組むといった全国規模の事故予防の仕組みを構築することについて検討する。
現在、医療提供体制は、従来の病院を中心とした医療から在宅を含めた地域全体での医療・介護という仕組みに移行しつつあり、介護施設においても安全な医療・介護の実施が求められている。今後、超高齢化社会を迎えるにあたり、介護施設の果たす役割は益々大きくなるため、国民の介護施設に対する様々な要求がさらに高まる可能性が考えられる。
介護施設と医療機関では医療的ケアを実施する職員の職種や構成が異なるため、介護施設で発生する医療的ケアに関する事故については、発生するプロセスや背景要因、根本原因などが医療機関における事故とは異なる可能性が示唆される。従って、介護施設において発生した事故事例を収集し、詳細に分析することは、介護施設における安全な医療的ケアの提供に大きな意味を持つものと考えられる。
本研究では、介護施設における医療・介護の質および安全の向上を目的に、介護施設において発生した医療的ケアに関する事故等を収集・分析し、再発防止に取り組むといった全国規模の事故予防の仕組みを構築することについて検討する。
研究方法
介護施設のうち、医療提供度が高い介護老人保健施設を対象にヒアリング調査を行った。ヒアリング先は、研究協力者等から推薦された施設を中心に候補を選定し、協力に同意を得られた施設を対象とした。また、介護施設ヒアリングのヒアリング先所在地を中心に、県市区等の担当者を対象としてヒアリング調査を実施した。さらに、自治体への事故報告のフォーマットや医療事故情報収集等事業で用いられている報告項目をもとに、「介護事故情報収集システム(仮称)」の収集項目および仕様について検討を行い、仕様書を作成した。
結果と考察
1.事故情報報告の仕組みに関する実態調査
介護老人保健施設17施設、および4県、6市区を対象にヒアリング調査を実施した。その結果、①各施設で発生している事故の大部分が軽微な事故であること、②各自治体の定義に従って事故報告がなされていること、③各施設において事故予防・再発防止の取り組みがなされていることが明らかとなった。自治体への事故報告制度については様式や定義、報告された事例の集計、フィードバック、ならびに介護施設間での情報共有等の取り組みに地域差が大きかった。
2.事故情報収集システムの検討
自治体の報告書様式に共通する事項をベースとして、介護事故情報収集システム(仮称)の開発の基本となる仕様書を作成した。事故事例の登録方式として、介護施設から登録する方式と介護施設から報告された事例をもとに自治体職員が登録する方式が考えられるが、自治体間の報告書式や報告する事例の定義が異なることから、事前に運営組織からID・パスワードを発行された介護施設から直接登録することを想定した。
介護老人保健施設17施設、および4県、6市区を対象にヒアリング調査を実施した。その結果、①各施設で発生している事故の大部分が軽微な事故であること、②各自治体の定義に従って事故報告がなされていること、③各施設において事故予防・再発防止の取り組みがなされていることが明らかとなった。自治体への事故報告制度については様式や定義、報告された事例の集計、フィードバック、ならびに介護施設間での情報共有等の取り組みに地域差が大きかった。
2.事故情報収集システムの検討
自治体の報告書様式に共通する事項をベースとして、介護事故情報収集システム(仮称)の開発の基本となる仕様書を作成した。事故事例の登録方式として、介護施設から登録する方式と介護施設から報告された事例をもとに自治体職員が登録する方式が考えられるが、自治体間の報告書式や報告する事例の定義が異なることから、事前に運営組織からID・パスワードを発行された介護施設から直接登録することを想定した。
結論
本研究の結果、介護保険制度のなかで行われている事故報告の書式や報告対象の定義が自治体によってさまざまであること、紙ベースの報告であるため、介護施設職員にとっても自治体職員にとっても業務負荷となっていること、都道府県単位での集計が公表されている場合とされていない場合があること、市町村に報告した事故情報について介護施設には原則としてフィードバックはないこと(都道府県単位での集計が公表されていても個別介護施設にはフィードバックされていない例が多かった)、等の課題が明らかとなった。
介護施設における事故の状況を可視化し、介護現場の質・安全を向上させるためには、医療機関で行われているように、事故情報を集約して原因分析・再発防止の検討を行い、その結果を広くフィードバックするしくみが有用である。本研究では「介護事故情報収集システム(仮称)」について基本的な仕様を検討し仕様書を作成した。今後、「介護事故情報収集システム(仮称)」の試行を行うことによりその実効可能性を評価するとともに、介護老人保健施設以外の介護施設または事業所において同様のしくみを活用することが可能かどうかを検証していくことが必要である。
介護施設における事故の状況を可視化し、介護現場の質・安全を向上させるためには、医療機関で行われているように、事故情報を集約して原因分析・再発防止の検討を行い、その結果を広くフィードバックするしくみが有用である。本研究では「介護事故情報収集システム(仮称)」について基本的な仕様を検討し仕様書を作成した。今後、「介護事故情報収集システム(仮称)」の試行を行うことによりその実効可能性を評価するとともに、介護老人保健施設以外の介護施設または事業所において同様のしくみを活用することが可能かどうかを検証していくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2020-04-24
更新日
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