在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証

文献情報

文献番号
201815004A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証
課題番号
H30-長寿-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
福井 小紀子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 川越 雅弘(埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
  • 埴岡 健一(国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 藤田 淳子(順天堂大学 医療看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,751,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、在宅医療・介護連携の評価について、住民・従事者・コストといった切り口を包含する評価ツールを開発することを目的とする。市町村担当者による活用を想定し、簡便なものを目指す。
研究方法
 在宅医療・介護連携やロジックモデルに明るい研究者等による班会議を通じて枠組み・指標の検討を行うとともに、並行して既存統計情報の入手可能性も検討した。また、評価枠組みの妥当性・実用性を検証する調査設計を行い、倫理審査承認を得た。
結果と考察
1.在宅医療・介護連携推進事業の評価枠組みの整理
(1)評価枠組みの検討
 本研究では、在宅医療・介護連携やロジックモデルに明るい研究者等により在宅医療・介護連携の評価枠組み・指標を検討し、暫定的な枠組みを策定した。ロジックモデルのアウトカムとして、最終アウトカムにあたる全体目標に加え、中間アウトカムとして場面別(日常の療養・急変時の対応・看取り・入退院支援)目標を設定した。アウトカムを測定する指標については、Donabedianモデル(ストラクチャー指標・プロセス指標・アウトカム指標)と上記4場面による3×4次元を設定し、その中核となる「日常の療養」については全体目標を兼ねる形とした。ヘルスケアの評価枠組みであるTriple/Quadruple aimなどを援用し、全体目標には住民、従事者、コストという3つの次元を設けた。
(2)指標の検討
 「日常の療養」場面の目標(全体目標を兼ねる)は、住民指標として、主観的幸福感(General Social Surveysや介護予防・日常生活圏域ニーズ調査など国内外で多く使用されているもの)、人生満足度(カントリルの人生の階梯尺度)という主観的指標、在宅療養率(住民の療養場所を病院、介護施設、集合住宅、自宅の4類型に分類して分布の推移や地域差をみるために用いる)のような客観的指標を設定した。従事者指標は、主観的指標として就業満足度、主観的幸福感、人生満足度、医療・介護職間にヒエラルキーがなく相談できる状況を評価する項目として「介護職が医療職に相談したり話をするのは敷居が高い」と回答した者の割合、客観的指標としては在宅医療・介護サービスが提供されている人数・回数、ならびにそれらを提供している機関数を指標として設定した。コスト指標は、住民1人あたりの医療・介護費を算出して用いることとした。
 その他の3場面については、「急変時の対応」場面の目標としては、Ambulatory care-sensitive conditions(ACSCs)の概念(Bardsley, et al., 2013)を用いて、訪問診療・看護を受けるACSCsの者における夜間休日救急搬送医学管理料及び初診料・再診料の時間外加算・休日加算・深夜加算の算定が少ない方が良質な管理がされていると解釈して、これらをアウトカム指標として設定した。「看取り」場面の目標は、「日常の療養」に関する指標群について、集計対象を在宅医療・介護サービス利用者全体ではなく死亡日からさかのぼって6ヶ月以内の者に限定することにより、アウトカム指標として用いることとした。「入退院支援」場面の目標は、退院後の再入院率が低いことをもって良質な管理がされていると解釈し、アウトカム指標とすることを検討したが、データ取得上の限界があり適切な指標化が困難であったため、暫定的に「急変時の対応」に関する指標によって代用した。

2.評価枠組みの妥当性・実用性の検証
 枠組み整理の結果を受けて、デルファイ法に準じたプロセスを踏むための調査票を作成し、研究倫理審査承認を得た。これに基づき、令和元年度にこの調査を実施し、妥当性・実用性の検討を行う。

3.既存統計情報の市町村別集計の入手可能性の検討
 今回作成した暫定版の評価枠組み・指標は、ほとんどの項目を医療・介護レセプト情報から集計できるよう配慮し、住民・従事者指標のうち、直接住民や従事者から認識を聴取しなければいけない項目のみアンケート調査等を実施する形とした。指標集計のために必要となるレセプト情報の入手可能性については、既存のデータベースの仕様を調査して検討したところ、NDB、介護DB、KDBのいずれについても現行仕様に不足があり、それらの仕様を改修していくか、あるいは国保連等が管理するデータそのものを用いることが必要と考えられた。いずれの方針をとる方が関係者(住民、医療・介護従事者、市町村職員、都道府県職員、研究者など)の手間の総量が小さく済むか、という観点からデータ入手の方策を継続的に検討する必要がある。
結論
 本研究を通じ、在宅医療・介護連携の評価枠組み・指標を暫定的に設定した。令和元年度は、引き続きその妥当性・実用性を検証していく。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201815004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,575,000円
(2)補助金確定額
3,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 39,195円
人件費・謝金 701,442円
旅費 574,790円
その他 1,435,573円
間接経費 824,000円
合計 3,575,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
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