介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究

文献情報

文献番号
201815002A
報告書区分
総括
研究課題
介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究
課題番号
H28-長寿-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院医学系研究科)
  • 辻 大士(千葉大学 予防医学センター)
  • 亀田 義人(千葉大学 予防医学センター)
  • 岡田 栄作(浜松医科大学 医学部・健康社会医学講座)
  • 菖蒲川 由郷(新潟大学 大学院医歯学総合研究科国際保健学分野)
  • 谷 友香子(東京医科歯科大学 大学院・医歯学総合研究科)
  • 横道 洋司(山梨大学大学院 社会医学講座)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
  • 伊藤 美智予(名古屋大学 予防早期医療創成センター)
  • 白井 こころ(大阪大学 大学院医学研究科)
  • 林 尊弘(星城大学 リハビリテーション学部)
  • 花里 真道(千葉大学 予防医学センター)
  • 鈴木 規道(千葉大学 予防医学センター)
  • 佐々木 由理(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,816,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,地域づくりによる介護予防を戦略的に推進するための方法論の開発や知見の創出を目指した.H30年度の目的は,Ⅰ.個票レベルの研究で効果的な介護予防に資するリスク要因や保護的要因の抽出を行うことである.また,地域づくりによる介護予防を戦略的に進めるには重点課題や重点対象地域を明らかにし,地域介入に用いることができる資源を把握し,有益な手掛かりを引き出すうえで有用な地域診断指標を作成し,その中から信頼性と妥当性が高い指標群を抽出することが必要である.そこでⅡ.地域診断指標に期待される基準関連妥当性を明らかにすることも目的とした.さらに,Ⅲ.地域づくり支援の方法とプロセスや効果を明らかにすることとした.
研究方法
Ⅰ.個票レベルの研究:要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象とした2003,2006,2010,2013年調査データに2016年までの追跡データを結合した縦断追跡データ,および2016年調査の横断分析用データなど複数のデータベースを構築し,それらを活用して多数の実証分析を進めた.
Ⅱ.地域診断指標に関する研究:個票レベルの研究による併存的妥当性と予測妥当性の他,地域診断指標としての妥当性の検証(個人主義的錯誤の除外)のため地域相関分析なども行った.
Ⅲ.地域づくり支援の研究:複数の市町村との共同研究を行い,その支援プロセスや効果評価結果を記述した.
結果と考察
Ⅰ 個票レベルの研究:むせ(相田報告)や痩せ(横道報告)がリスクであること,一方で痩せの背景要因は農村と都市部で異なること(菖蒲川報告),調理頻度でも野菜・果物摂取頻度が異なっていることなど(谷報告)を明らかにした.他方,社会的サポート(佐々木報告)や生きがい(白井報告)など心理社会的要因は保護要因であることが明らかになった.フレイル高齢者においてもスポーツの会参加は有用であること(林報告),参加していない高齢者においても,その地域の高齢者のスポーツの会参加率が高いと認知症リスクが抑制されているということが縦断研究(辻報告)で確認された.
Ⅱ.地域診断指標に関する研究:要介護リスク指標とソーシャルキャピタル指標の関連は,個人および地域レベルで違い、二つのレベルで同じような相関がみられる組み合わせは半数に満たないこと,地域診断指標は個人レベルでも地域レベルでも同じ相関がみられる指標が望ましいことを報告した(井手報告1).知見の再現性や量的な指標が満たすべき6基準からするとスポーツ・趣味の会参加や社会的サポートなど14指標が地域診断指標として妥当と考えられた(井手報告2).また居住地面積あたりの公園面積が,スポーツの会参加者割合や運動機能低下者割合と関連を示すことから,これらの指標も介護予防に資する地域診断指標になりうることが明らかになった(花里報告).
Ⅲ.地域づくり支援の研究:「健康とくらしの調査」保険者共同研究会への参加者(保険者職員)の参加者アンケート調査で満足度は高く(斉藤報告),データを用いた支援は,大都市(藤並報告)でも,町村部(岡田報告)でも有用で,船橋市独自施策への研究者の協力事例(亀田報告)や,東海市の独自施策の効果評価の事例も生まれた(細川報告)ことを紹介した.さらにJAGESの研究者と職員の密な協働があった市町村では,データのみ提供した対照群に比べ男性で死亡率の抑制が見られることを報告した(長谷田報告).
結論
Ⅰ.個票レベルの研究で,効果的な介護予防に資するリスク要因として,むせや痩せ,保護的要因としてスポーツの会参加や社会的サポート,生きがいなどが抽出できた.Ⅱ.地域診断指標として社会参加や社会的サポートなど14指標が基準関連妥当性を持つことが明らかになった.Ⅲ.地域づくり支援では,大都市から町村部におけるプロセスを記述し,データを用いた研究者による支援や研究者と保険者職員との共同研究会は満足度が高いだけでなく,男性の死亡率を抑制する効果を持つ可能性が明らかなった.
以上,本年度の研究によって,地域づくりによる介護予防を戦略的に推進するための方法論の開発や知見の創出ができた.

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201815002B
報告書区分
総合
研究課題
介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究
課題番号
H28-長寿-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院医学系研究科)
  • 辻 大士(千葉大学 予防医学センター)
  • 亀田 義人(千葉大学 予防医学センター)
  • 岡田 栄作(浜松医科大学 医学部・健康社会医学講座)
  • 菖蒲川 由郷(新潟大学 大学院医歯学総合研究科国際保健学分野)
  • 谷 友香子(東京医科歯科大学 大学院・医歯学総合研究科)
  • 横道 洋司(山梨大学大学院 社会医学講座)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
  • 伊藤 美智予(名古屋大学 予防早期医療創成センター)
  • 白井 こころ(大阪大学 大学院医学研究科)
  • 林 尊弘(星城大学 リハビリテーション学部)
  • 花里 真道(千葉大学 予防医学センター)
  • 鈴木 規道(千葉大学 予防医学センター)
  • 佐々木 由理(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 三澤 仁平(日本大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域づくりによる介護予防を根拠に基づき戦略的に推進するため,Ⅰ.地域毎に健康状態や社会資源等をアセスメントし,ニーズや課題を把握する大規模調査の方法を開発・改良し,Ⅱ.根拠に基づく戦略的な地域づくりによる介護予防を推進するためのエビデンスづくりと,Ⅲ.市町村支援の方法を開発し,Ⅳ.その効果検証などができる地域診断指標や「見える化」システムを開発・改良すること,を進めることを目的とした.
研究方法
Ⅰ.大規模調査:日本老年学的評価研究(JAGES)の一環として41市町村にて大規模データを収集し,それらを結合してビッグデータとすること,およびそれを用いて市町村間や日常生活圏域など市町村内の小地域間で比較分析する手法の実現可能性を検証した.Ⅱ.介護予防に関わるリスクの実証的観察研究:2003以降の調査データを用い,要介護認定やうつなどの個人レベルの要介護リスクおよび緩和要因に関する横断・縦断研究,さらにソーシャル・キャピタルなどの地域レベル要因を解明する地域相関研究,マルチレベル分析などを行った.Ⅲ.市町村支援に向けた研究:大都市(横浜市,名古屋市など)から中規模市(東海市,常滑市など),人口数万人規模の町(長柄町,武豊町など)までを対象に,データに基づく研究者による支援を実際に行い支援方法について検討した.東海市,武豊町などにおいて「憩いのサロン」などを増やす地域づくり型介護予防の方法の開発とその効果を検証するため,参与観察や介入を行い,認知機能低下の発生割合などを参加群と非参加群とで比較する縦断分析で効果評価した.Ⅳ.地域診断指標と「見える化」システムの研究:地域診断指標の妥当性を検証し,「見える化」システム(JAGES HEART:健康の公正の評価と対策のためのツール)を開発した.
結果と考察
Ⅰ.大規模調査:JAGES2016年調査39市町,2017年調査2市町で、計約20万人の高齢者から調査票を回収でき,大規模調査の実施・データ結合・市町村内外の比較分析の方法論を確立できた.
Ⅱ.介護予防に関わるリスクの実証的観察研究:死亡や要介護を招く個人レベルのリスク要因として口腔機能,閉じこもり,うつなどがあり,社会参加や社会的サポートなどがそれらを緩和する要因であり,これらが不足していることがリスクであること,これらが複雑に関連している経路が明らかになった.その中には,15歳当時の生活程度や逆境体験の有無などライフコースにおける経験が,高齢期の生活機能などにも影響を及ぼしていることも明らかとなった.また個人レベル要因を調整後にも,その人が暮らしている地域における社会参加割合が高いことや所得格差が小さいこと,公園などの建造環境が豊かであることが,うつや手段的日常生活動作(IADL)低下が少ないなど介護予防に望ましい地域要因であることが,マルチレベル分析などで明らかになった.それらの成果を『健康格差社会への処方箋』(医学書院,2017),『長生きできる町』(角川新書,2018)にまとめて出版した.
Ⅲ.市町村支援に向けた研究:複数の市町において,地域づくりの事例と手順などの蓄積ができた.それらを書籍『住民主体の楽しい「通いの場」づくり』(日本看護協会出版会,2019)にまとめた.また参与観察・介入研究では,サロンへの参加回数が多い群で要介護認定が抑制されることに加え,新たに7年間の認知症発症が少ないことなどが明らかになった.またJAGESの研究者と職員の密な協働があった市町村では,データのみ提供した対照群に比べ,職員のソーシャル・キャピタル関連指標が高く,男性高齢者の社会参加が多く,死亡率の抑制が見られることが明らかとなった(投稿中).
Ⅳ.地域診断指標と「見える化」システムの研究:試作した指標の中で,社会参加や社会サポートなど14指標の妥当性が高いと考えられ,それらを搭載した「見える化」システムJAGES HEARTを開発し,保険者の声を踏まえて改訂も行った.
結論
地域診断やエビデンスづくりに使える大規模調査やデータベース構築,市町村間・内の地域間比較分析の方法を確立し,根拠に基づく戦略的な地域づくりによる介護予防を推進するためのエビデンスや事例が得られ,地域別に健康状態や社会資源等をアセスメントし,ニーズや課題を把握するための地域診断指標と「見える化」システム開発ができた.一連の手法と得られた知見について“Advancing universal health coverage through knowledge translation for healthy ageing: lessons learnt from the Japan Gerontological Evaluation Study.”と題するモノグラフにまとめWHO(2018)から出版した.

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201815002C

収支報告書

文献番号
201815002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,560,000円
(2)補助金確定額
7,560,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 189,757円
人件費・謝金 3,652,985円
旅費 716,630円
その他 1,256,628円
間接経費 1,744,000円
合計 7,560,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
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