非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備

文献情報

文献番号
201813003A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備
課題番号
H29-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部内科学(血液)教室)
研究分担者(所属機関)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学・大学院医学研究科医学専攻内科学講座血液内科学分野)
  • 日野 雅之(大阪市立大学・大学院医学研究科血液腫瘍制御学)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院・血液内科)
  • 中世古 知昭(国際医療福祉大学 三田病院 血液内科)
  • 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社・血液事業本部技術部)
  • 矢部 普正(東海大学・医学部再生医療科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学・医学部 内科学講座血液・腫瘍内科部門)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター・血液内科)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院・造血細胞移植センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,191,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、(1)非血縁者末梢血幹細胞移植(UPBSCT)後合併症〔特に慢性GVHD〕の効果的な予防・治療法、(2)非血縁者末梢血幹細胞効率的提供体制、そして(3)非血縁者ドナーからの末梢血幹細胞採取(UPBSCC)の安全性を担保する体制の確立と普及を目的として、非血縁者間末梢血幹細胞に携わる様々な国内・海外の組織と連携し、目的達成に繋がる様々な調査、解析を実施する。
研究方法
少量ATGを併用する移植前処置、移植後大量エンドキサンを用いた移植後免疫抑制療法後の慢性GVHDの頻度重症度を評価し、移植推進拠点病院事業で構築される地域連携ネットワークを活用した配置について検討を進めた。骨髄採取との比較による末梢血幹細胞採取前後のドナー身体的QOL(負担)を比較し、末梢血幹細胞採取後1週間目の身体的QOLの低下は骨髄採取に比較して優位に少なく、ドナーへの身体的負担はより少ない採取法であることを示した。ドナー負担軽減を目的とした1日での末梢血幹細胞採取を可能とする採取方法に関して、2018年12月までに施行された非血縁ドナー600例の採取情報を解析し、採取上限を300ml/kg(血縁ドナーにおける処理上限値)引き上げることで、移植に必要な細胞を確保するのに2日を必要としていた97例中56例(52.8%)において、1日での十分量の細胞採取が可能となりうことを確認した。同種末梢血ドナーフォローアップ体制に関しては、現在構築中のJMDPドナーコーディネートシステム、日本造血細胞移植データセンター、の本造血細胞移植学会ドナー委員会と連携して、タイムリーな採取安全性に関するデータ収集と施設への情報発信の具体的な方法と内容に関する検討を進めた。加えてWMDA EBMT年次総会の造血幹細胞ドナーに関するactivityに参加しドナー安全情報の収集を継続した。日本赤十字社の日本輸血細胞治療学会認定アフェレーシスナースの技術的支援は可能であると考え、実現に向けての具体的な施策について検討を継続した。非血縁者間骨髄移植と末梢血幹細胞移植成績の比較検討では、非血縁者間末梢血幹細胞移植におけるHLA不適合の移植成績に及ぼす影響について検討を加え、現時点では観察期間が短いが、HLA不適合の影響はUBMTとUPBSCT間で有意差はなく、HLA不適合UPBSCTは妥当な選択であることを確認した。
結果と考察
本年度は、少量ATGを併用する移植前処置、移植後大量エンドキサンを用いた移植後免疫抑制療法などの進歩を考慮して、非血縁者間末梢血造血幹細胞移植(UPBSCT)後の合併症として懸念される慢性GVHD治療に用いるECPの効率的配置の再検討、骨髄採取との比較による末梢血幹細胞採取前後のドナー身体的QOL〔負担〕の明確化、ドナー負担軽減を目的とした1日での末梢血幹細胞採取を可能とする採取方法(採取日、処理血液量など)に関する検討の継続、末梢血血縁ドナーフォローアップ体制の強化による安全情報の更なる充実と移植施設へのfeedbackシステムの確立、日本赤十字社の日本輸血細胞治療学会認定アフェレーシスナースの技術的支援の可能性、非血縁者間骨髄移植と末梢血幹細胞移植成績の比較検討の継続(非血縁者間末梢血幹細胞移植におけるHLA不適合の移植成績に及ぼす影響)、海外におけるUPBSCC/ UPBSCTの実態調査の継続、を通して本研究の目的達成に取り組むと同時に、今後の具体的な研究の方向性を明らかにした。
結論
我が国の非血縁者末梢血の利用率は増加傾向にあるが、骨髄と比較すると以前その利用率は低い。今年度の検討で、移植後生存率、HLA不適合の生存率に及ぼす影響は、骨髄移植と末梢血で同等であることを、症例数を増やし再確認した。この情報は移植医が造血細胞ソースに対するpreferenceを見直すのに役立つと考えられる。また、慢性GVHDに対する対応策を示し、治療へのアクセスを具体化することで、合併症を懸念することでの幹細胞ソースの選択の偏りを改善することが期待される。一方で、末梢血と骨髄ドナーの身体的負担の比較、そして末梢血採取の安全情報の収集とその適切な情報提供体制に構築は、末梢血提供を希望するドナーの増加に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201813003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,748,000円
(2)補助金確定額
6,748,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,805,122円
人件費・謝金 0円
旅費 3,118,531円
その他 267,709円
間接経費 1,557,000円
合計 6,748,362円

備考

備考
物品を購入した際、362円不足したため自己資金で補った

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
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