ソーシャルマーケティング手法を用いた心停止下臓器提供や小児の臓器提供を含む臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201813002A
報告書区分
総括
研究課題名
ソーシャルマーケティング手法を用いた心停止下臓器提供や小児の臓器提供を含む臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方の確立に関する研究
課題番号
H28-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
江口 有一郎(国立大学法人佐賀大学 医学部 附属病院 肝疾患センター)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 光太郎(北九州市立八幡病院 救命救急センター)
  • 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
  • 中尾 一彦(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科・消化器内科)
  • 江口 晋(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科・移植・消化器外科学)
  • 平井 啓(国立大学法人 大阪大学 人間科学研究科)
  • 竹田 昭子(公益社団法人長崎県健康事業団 総務課)
  • 大宮 かおり(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク教育研修部)
  • 北村 聖(国際医療福祉大学 医学部)
  • 田崎 修(国立大学法人長崎大学 長崎大学病院救命救急センター)
  • 伊藤 孝司(国立大学法人京都大学 医学部附属病院 肝胆膵移植外科)
  • 岩根 紳治(国立大学法人佐賀大学 医学部附属病院 肝疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,536,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
選択肢提示を行う医師やコーディネーター(Co)の心理的負担を減らし、効果的な選択肢提示を行うための方法を見出し、マニュアル・説明ツールの開発や選択肢提示の理想的な対応に関する提言と展開を行う。さらに臓器提供施設の経済的負担も含め、意思表示および臓器提供数増加のための手法解明を目的とした。
研究方法
(方法1)柱1「小児脳死症例のオプション提示の現場での課題・問題点の抽出」(市川)では、小児脳死下臓器移植の課題を明らかにするため、分担研究者の施設と一般社団法人小児救急医学会を対象とした意識調査を行い、被虐待児の除外における臨床現場での問題点についても検討を加えた。さらに小児救急センターを受診した保護者、開業小児科のスタッフへの意識調査を実施した。柱2「急性期病院における終末期医療(人生の最終段階における医療)の一要素としての臓器提供の選択肢呈示に関する研究」(名取)では、意思確認はだれが担うべきか、国内外の調査を行った。柱3「臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方に関する研究」(江口(有))、「選択肢提示に関する行動科学的検証」(平井)では、医師の臓器提供の選択肢提示行動における制御要因を理解・把握するため、選択肢提示を積極的に行っている医師とそうでない医師を対象に半構造化面接を行った。
(方法2)柱4「レセプトから見た臓器提供にかかわるコスト調査」(中尾)、「症例で評価した臓器提供にかかわる医療コストに関する研究」(竹田)では、実際の症例の脳死判定から摘出までの必要費用を保険診療として計上すると仮定し、請求額を試算した。柱5「臓器提供医療機関における選択肢提示に関わる研究」(江口(晋))では、臓器提供選択肢呈示における現状を調査し、改善点を抽出した。柱6「臓器提供が可能な医療機関及び医師が抱える選択肢提示における課題の特定・解明」(北村・竹田)では、施設・医師が抱える課題、Coの効果的な活動等を明らかにするために、対面式の半構造化面接を実施した。
(方法3)自動車運転免許証裏面の意思表示欄の認知と記入状況および意思表示を促進するメッセージの開発を目的として、アンケートを実施した。
結果と考察
(結果1)柱1(市川)小児救急医療関係者で小児でも脳死を死と認める割合は過半数であった。た22.9%の保護者が小児の脳死下臓器移植に賛成を示したが、わが子の提供希望は0.7%に留まった。
柱2(名取)臓器提供の意思確認を家族に行うのは院内Coではなく、医師であることがわかった。
柱3(江口(有))「家族の現状認識の理解を促進した上で、複数の終末期医療に関するオプションを提示し、その1つとして臓器提供に関する選択肢を含めるというコミュニケーション」を目的とした説明ツールを完成させた。現在、全国10施設で活用され、2例で臓器提供が行われた。
(結果2)柱4(中尾)脳死判定後臓器提供を行った脳死下7例、心停止下4例について解析を行い、レセプト上では、JOTからの脳死臓器提供管理料により充足されていることを明らかにした。(竹田)また、電子カルテから算出した施設標準的な医療費(A)は1,132,950 円で、JOT からの供管理料と比較すると322,950 円過剰であった。
柱5(江口(晋))長崎県では、提供・施設Co、臓器移植ネットワーク、県が参加するカンファレンスを定期的に開催し、2014年度からは三次救急施設、行政、メディア、ネットワークがチームとして活動している。施設レベルではドナー主治医診療科、移植医、関連各科、事務が連携し、ワーキンググループを立ち上げた。
柱6(北村・竹田)県Coの活動が臓器提供数に関与していることを受け、県Coの具体的活動内容の明示化および標準化、人材育成と業務習得機会の設定、コミュニケーション能力の向上、活動規定の制定と評価体制の構築、メンター制度の導入、雇用形態・待遇の統一の体制を構築することが必要であると考えられた。
(結果3)(平井)臓器提供の意思表示を促進するため「ピア効果+互恵性」の4つ観点からメッセージを開発した。「互恵性メッセージ」は「今すぐ記入する」を増加させ、Lossフレームが「記入しない」を減少させた。

結論
選択肢提示の障害として、選択肢提示を行う医師個人における心理的負担と、医師が所属する臓器提供が可能な施設における制度・体制的課題、双方が絡み合っていることが判明し、主治医の選択肢提示に伴う心理的負担の軽減に寄与すると考えられる説明ツールを完成させ、複数の地域での活用が開始された。また意思表示の推進のための方法が行動経済学的な手法を用いて明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201813002B
報告書区分
総合
研究課題名
ソーシャルマーケティング手法を用いた心停止下臓器提供や小児の臓器提供を含む臓器提供の選択肢提示を行う際の理想的な対応のあり方の確立に関する研究
課題番号
H28-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
江口 有一郎(国立大学法人佐賀大学 医学部 附属病院 肝疾患センター)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 光太郎(北九州市立八幡病院 救命救急センター)
  • 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
  • 中尾 一彦(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科・消化器内科)
  • 江口 晋(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科・移植・消化器外科学)
  • 平井 啓(国立大学法人 大阪大学 人間科学研究科)
  • 竹田 昭子(公益社団法人長崎県健康事業団 総務課)
  • 大宮 かおり(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク教育研修部)
  • 北村 聖(国際医療福祉大学 医学部)
  • 田崎 修(国立大学法人長崎大学 長崎大学病院救命救急センター)
  • 伊藤 孝司(国立大学法人京都大学 医学部附属病院 肝胆膵移植外科)
  • 田中 英夫(愛知県立がんセンター がん免疫・予防医学)
  • 岩根 紳治(国立大学法人佐賀大学 医学部 附属病院 肝疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
選択肢提示を行う医師やコーディネーター(Co)の心理的負担を減らし、効果的な選択肢提示を行うための方法を見出し、マニュアル・説明ツールの開発や選択肢提示の理想的な対応に関する提言と展開を行う。さらに臓器提供施設の経済的負担も含め、意思表示および臓器提供数増加のための手法解明を目的とした。
研究方法
日本臓器移植ネットワーク(JOT)のデータを臓器提供者数の増加につながる視点で詳細に解析する。また臓器移植機関に所属するCo、医師、患者を対象に選択し提示の前後における認識や当時の状況について半構造化面接による質的分析を行う。さらにソーシャルマーケティング手法により選択肢提示を行う医師、臓器移植医療機関、家族をセグメンテーション化し、各々へのアプローチを確立し効果的な選択肢提示をおこなう方法を見出し、マニュアル・説明ツールの開発を行う。(初年度)選択肢提示の理想的な対応の在り方をパイロット的に運用し(2年目)全国展開を行う(3年目)。
結果と考察
柱1(市川)小児救急医療関係者で小児でも脳死を死と認める割合は過半数であった。た22.9%の保護者が小児の脳死下臓器移植に賛成を示したが、わが子の提供希望は0.7%に留まった。
柱2(名取)臓器提供の意思確認を家族に行うのは院内Coではなく、医師であることがわかった。
柱3(江口(有))「家族の現状認識の理解を促進した上で、複数の終末期医療に関するオプションを提示し、その1つとして臓器提供に関する選択肢を含めるというコミュニケーション」を目的とした説明ツールを完成させた。現在、全国10施設で活用され、2例で臓器提供が行われた。
柱4(中尾)脳死判定後臓器提供を行った脳死下7例、心停止下4例について解析を行い、レセプト上では、JOTからの脳死臓器提供管理料により充足されていることを明らかにした。(竹田)また、電子カルテから算出した施設標準的な医療費(A)は1,132,950 円で、JOT からの供管理料と比較すると322,950 円過剰であった。
柱5(江口(晋))長崎県では、提供・施設Co、臓器移植ネットワーク、県が参加するカンファレンスを定期的に開催し、2014年度からは三次救急施設、行政、メディア、ネットワークがチームとして活動している。施設レベルではドナー主治医診療科、移植医、関連各科、事務が連携し、ワーキンググループを立ち上げた。
柱6(北村・竹田)県Coの活動が臓器提供数に関与していることを受け、県Coの具体的活動内容の明示化および標準化、人材育成と業務習得機会の設定、コミュニケーション能力の向上、活動規定の制定と評価体制の構築、メンター制度の導入、雇用形態・待遇の統一の体制を構築することが必要であると考えられた。
(平井)臓器提供の意思表示を促進するため「ピア効果+互恵性」の4つ観点からメッセージを開発した。「互恵性メッセージ」は「今すぐ記入する」を増加させ、Lossフレームが「記入しない」を減少させた。
結論
本研究の主軸であったソーシャルマーケティング手法および行動経済学を応用したリーフレットの開発を行い、実臨床での運用が開始された。また、意思表示に関しての現状と意思表示を促すメッセージのあり方について我が国では初めて解明することができた。今後は本研究班で開発した手法やリーフレットを全国の都道府県コーディネーターの研修会や各地のシミュレーションなどで全国的な活用を継続的に進めていく。

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201813002C

収支報告書

文献番号
201813002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,896,000円
(2)補助金確定額
5,896,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 615,685円
人件費・謝金 186,250円
旅費 1,287,607円
その他 2,447,452円
間接経費 1,360,000円
合計 5,896,994円

備考

備考
端数は自己負担金

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-