慢性腎臓病CKDの診療体制構築と普及・啓発による医療の向上

文献情報

文献番号
201812008A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病CKDの診療体制構築と普及・啓発による医療の向上
課題番号
H30-免疫-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 浩一(学校法人 埼玉医科大学 医学部)
  • 守山 敏樹(国立大学法人 大阪大学 医学部 )
  • 南学 正臣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
  • 山縣 邦弘(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
  • 要 伸也(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部)
  • 伊藤 孝史(国立大学法人 島根大学 医学部)
  • 旭 浩一(学校法人 岩手医科大学 医学部)
  • 安田 宜成(国立大学法人 名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 向山 政志(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 内田 治仁(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 服部 元史(学校法人 東京女子医科大学 医学部)
  • 若井 建志(国立大学法人 名古屋大学 大学院医学系研究科 )
  • 内田 明子(社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院 看護部)
  • 北村 健一郎(国立大学法人山梨大学 総合研究部)
  • 福井 亮(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,818,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成29年より厚生労働省「腎疾患対策検討会」が開催され、平成30年には報告書が作成された。本検討会では、CKD対策における、①普及啓発、②地域における医療提供体制の整備、③診療水準の向上、④人材育成、⑤研究開発の推進の5本柱について、過去10年間の取り組み評価、課題抽出がなされ、これに基づき、今後の取り組みについての方向性が示さた。本研究では、腎疾患対策検討会での検討に基づき、全国各地の腎疾患対策を評価・分析し、PDCAサイクルを回し、継続的に腎疾患対策を実施する体制を構築することを目的とする。
研究方法
以下の分科会・WGを構築して実施する。 
1)診療連携体制構築WG: かかりつけ医、腎臓専門医等の連携推進によるCKD重症化予防の徹底・行政や関連学会、関係団体等とのさらなる連携のための好事例の横展開を図る。
2)普及・啓発資材開発WG:市民レベルでのCKDの普及・啓発を全国展開するために必要な共通した資材(小冊子、パンフレット等の紙媒体、ビデオ等)内容の開発を行う。NPO法人日本腎臓病協会とも連携し、患者会とも意見交換を行う。
3)他職種連携・チーム医療促進WG:医師、看護師、保健師、栄養士、薬剤師、あるいは腎臓病療養指導士による連携体制構築を支援する。好事例を抽出し、全国展開を促進する。関連職種からの研究協力者を得て、WGを構築する。食事・生活習慣改善、血圧管理、蛋白尿減少等による介入がCKD対策(予防・進展阻止、合併症予防)に必要であり、多職種による包括的介入が有功であることが確立されている。
4)トランジションWG: 小児期発症CKD患者の成人医療への移行(Transition)に関する実態把握及び、円滑な移行を支援策を構築する。小児腎臓病学会と連携し、研究協力者を得る。
5)進捗管理WG:全国の診療連携体制構築、普及・啓発の進捗を定点的に評価し、均霑化を促進する。ガイドライン、紹介基準の普及状況も評価する。特定健診受診者の受診勧奨、受診実施率の評価も行う。取り組む各事業についてKPIを設定してその進捗を定期的に評価する。KPIについても検討する。
6)研究開発・国際比較WG:CKD及びCKD診療体制の国際比較、ESRD・腎代替療法(RRT)の実態の国際比較、CKDの成因の相違・特徴、海外のCKD診療体制の調査を行う。ESRD,RRT(移植を含む)の海外動向についても調査する。海外のCKD対策成功事例の調査も行う。
結果と考察
1)診療連携体制構築:かかりつけ医、腎臓専門医、保健師、療養指導士、行政等の連携推進によるCKD重症化予防体積構築の為に、全国ですでに構築されている好事例の抽出を行った。大都市、地方都市、医療資源の乏しい郡部等、地域の医療資源に適応したいくつかのパターンの抽出を行った。
2)普及・啓発資材開発:CKDの認知度は必ずしも高くないことが判明した。他職種連携・チーム医療促進:腎臓専門医数は増加しつつあるが、地域によっては十分な数が確保できていないことが判明した。
3)人材育成:専門医数の増加を加速する必要があるが、全国医学部に腎臓内科があるわけではなく、短時日での実現は難しい。現在、看護師、栄養士、薬剤師を対象に腎臓病療養指導士を育成している。療養指導士を全国に配置することでCKD診療の均霑化を図ることが可能と考える。
4)トランジション(移行医療):良質な腎臓病診療を展開するためには、小児期から成人、老年期に至るまで、シームレスな取り組みが必要である。
5)進捗管理:進捗管理ための評価項目を設定し、初年度の準備・進捗状況を評価した。またより長期のCKD診療実態の推移を評価するため、全国のかかりつけ医および腎臓専門医を対象とするアンケート調査の準備を開始した。
6)研究開発・国際比較:CKDの医療は、国ごとに大きな違いがある。日本の腎臓病診療は世界のトップクラスであるが、今後も本邦の医療が他国に比べ優位性と未解決課題の解析を続ける必要がある。
結論
腎疾患対策検討会報告書で設定された全体目標を達成するためには、1)全国のCKD対策の司令塔の確立、役割の明確化、2)各地における診療連携体制の構築、3)好事例の共有、横展開、4)普及啓発共通資材の作成、5)紹介基準の普及、6)人材育成(療法指導士を含む)、が重要である。適切な進捗管理を行いながら、PDCAサイクルを回し、加速する必要がある。腎臓学会、腎臓病協会等と連携してオールジャパン体制で取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201812008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)診療連携体制構築2)普及・啓発資材開発3)人材育成4)トランジション(移行医療)5)進捗管理6)研究開発・国際比較の6つのWGでNPO法人日本腎臓病協会と連携し好事例及び課題抽出を行った。診療連携体制の実態調査、診療ガイドラインが推奨する標準治療の普及状況についてアンケート調査を実施し問題点を抽出した。COVID19感染が拡大する中で利用可能な啓発資材、教育システムの開発を行った。移行期医療支援ツール「おしっこ(尿)と腎臓の不思議」公開した。
臨床的観点からの成果
NPO法人日本腎臓病協会(JKA)は全国を12ブロックに分割、各県担当者を任命して連携体制の核としている。行政担当者、多職種の参加者を得て、合同ブロック会議を行った。好事例の共有、意見交換を行い課題が明らかとなった。CKD啓発動画、ポスターなどを作成し、腎臓病協会のHP上に公開、ダウンロード可能とした。2022年度までに6回の腎臓病療養指導士認定講習会を行い、合計2,404名の腎臓病療養指導士が誕生した。移行期医療支援ツール「おしっこ(尿)と腎臓の不思議」を2021年に公開した。
ガイドライン等の開発
厚生労働省腎疾患対策検討会報告書(2018年7月)、エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018、患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2018、腎領域における慢性疾患に関する臨床評価ガイドライン、エビデンスに基づく急速進行性腎炎症候群RPGN診療ガイドライン2020、腎臓病診療における新型コロナウイルス感染症対応ガイド(2020年)等へ研究内容が反映された。
その他行政的観点からの成果
平成30年7月厚生労働省から「腎疾患検討会報告書」が発出され、今後のCKD対策の目標が設定された。本研究の成果は報告書に記されたアクションプランの策定に直接つ ながるものである。進捗管理の方法も考案されており、PDCAサイクルを継続的に回して、本邦の腎臓病診療の質向上、医療への貢献を果たすべく、引き続きR1~3年度課題にて研究を継続した。
その他のインパクト
全国腎臓病患者連絡協議会(全腎協)との意見交換会、生涯教育講演会、新聞等での啓発、そのほか毎年の世界腎臓デーにあわせ、各地で普及・啓発活動を行っている。懸垂幕、各種ポスター等の啓発資材を作成し、地方自治体の庁舎等に掲示を行っている。また2020年度は啓発動画を作成し都内タクシー、駅構内、ほか公共施設での放映を行った。腎臓学会及び日本腎臓病協会を通じて啓発資材の利用を呼び掛けるとともに、腎臓病協会のHP上に公開した。さらに2021年度はYouTubeに啓発動画を公開し、広告としても掲載した。

発表件数

原著論文(和文)
51件
原著論文(英文等)
263件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
111件
学会発表(国際学会等)
48件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
9件
腎疾患検討会報告書への反映1件、ガイドラインへ等の反映8件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
ホームページ1件、YouTube広告掲載4件、TVコマーシャル1件、その他講演・ポスター・懸垂幕・動画・講演などの啓発活動多数1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
2023-10-18

収支報告書

文献番号
201812008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,500,000円
(2)補助金確定額
7,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,384,506円
人件費・謝金 277,494円
旅費 2,068,332円
その他 1,075,929円
間接経費 682,000円
合計 7,488,261円

備考

備考
返還有り、自己資金有り、その他利息有り

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
-