小児慢性特定疾病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究

文献情報

文献番号
201811093A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 医学部 小児科)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究センター 生命倫理研究室)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
  • 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科 看護学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
26,307,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 森 臨太郎(平成30年4月1日~平成30年11月25日)→ なし(平成30年11月26日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
児童福祉法改正法(平成26年法律第47号)及び「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成27年厚生労働省告示第431号)に示された小児慢性特定疾病対策を社会実現するため、その推進に寄与する資料およびその実践的基盤を提供することを目的とした。
研究方法
各分担研究者が以下の研究を実践した。
1)日本小児科学会及び分科会、関連学会等と連携した小児慢性疾患対策の検討
2)小児慢性特定疾病の状態の程度の検討-小児慢性特定疾病への国際生活機能分類の概念導入の試み-
3)神奈川県国民健康保険診療報酬明細書データの特徴に関する研究
4)神奈川県国民健康保険診療報酬明細書データを用いた小児慢性特定疾病の公費負担の実情に関する研究
5)医療経済評価の手法を用いた小児慢性疾病に関する研究
6)障害福祉等関連施策・制度の患者視点での整理に関する研究
7)小児慢性特定疾病に対するICD-10コード附番に関する検討
8)慢性疾病を有する子どものQOLおよび社会支援等に関する実態調査
9)小児慢性特定疾病情報センターポータルウェブサイトの利用状況と情報発信のあり方に関する検討
10)小児慢性特定疾病指定医の研修プログラム(e-learning)の構築及び運用の検討
11)患者家族等ならびに医療関係者への情報提供・情報共有についての検討
12)小児慢性特定疾患治療研究事業における登録データの精度向上に関する研究
結果と考察
小児慢性疾患対策の検討として、小児慢性特定疾病の要件を満たしていると考えられる疾病について、日本小児科学会をはじめとする小児期疾病に関連する学会等と連携し、対象追加要望を行うとともに、既存の制度における改善点も合わせて要望として提示した。本年度は既対象疾病の対象拡大を含む計7疾病の追加拡大が了承されるとともに、対象範囲を定めている厚生労働省告示における疾病の状態の程度の一部疾病に対する修正要望も了承された。また医学的見地から一部の既対象疾病についての区分名の修正と、一部疾患群に対する重症患者認定基準の修正に関する要望についても了承された。
慢性疾病を抱えて成長する児のアウトカム向上を適切に評価し支援するために、小児慢性特定疾病へ国際生活分類(ICF)の概念導入を試み、既存の制度の枠組みがICF項目と紐付けられるかの検討を行い、全対象疾病について対応付けが可能であることを示した。小児慢性特定疾病の受給状況および登録データの悉皆性を明らかにするために、国民健康保険診療報酬明細書データを利用し、小児慢性特定疾病の公費負担の実施状況について検討を行ったところ、小児慢性特定疾病の利用率が高い疾病の場合には、およそ5~6割程度の症例において、小児慢性特定疾病が利用されている可能性があることが示唆された。更に昨今の医療費の高騰を踏まえ、小児医療についても医療経済評価の概念を導入することができるかの試みを行い、限定的ながらも小児領域への医療経済的な評価への応用の可能性を示した。慢性疾病を抱える子どもたちの実情を把握するために、大規模な患者実態調査を行い、本年度は約6,600件の回答を得られた。平成26年度登録データについて、横断的・縦断的な集計・解析を行い、疾患群別、都道府県別、男女別、年齢別で集計した。
結論
制度見直しに際し適切な情報提供を行い、制度拡充に貢献することができた。慢性疾病を抱えた子どもたちの実情に沿った支援を目指した小児慢性特定疾病のあり方を検討するために、制度の方向性、実施状況、患者の実態調査等について、新たな知見を取り入れつつ検討を行い、国際生活機能分類や医療経済の概念の導入の可能性について示した。登録データは悉皆性に限界があるが、診療報酬請求明細書データを利用し、結果解釈には制限があるものの、わが国で初めて公費負担の実情について分析を行い、小児慢性特定疾病の受給状況の一端を示すことができた。
小児慢性特定疾病登録は、小児の慢性疾病患者の前向きコホートとしての役割を期待されている。登録データから重症患者等の治療状況や症状の現状が明らかとなり、小児期から成人期へ病態を持ち越す者への援助の重要性が見出されており、小児期から成人期への切れ目のない援助として小児慢性疾病対策と難病対策の連携が重要であることから、今後も慢性疾患に対する政策決定に資する資料の提供を続けてゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
2019-09-17

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201811093B
報告書区分
総合
研究課題名
小児慢性特定疾病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学 小児科学講座 )
  • 武井 修治(鹿児島大学 医学部)
  • 長 和俊(北海道大学病院 周産母子センター)
  • 七野 浩之(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 平野 大志(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
  • 荒川 浩一(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科学講座)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学 東医療センター)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 病院  臨床検査部)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小牧 宏文(国立精神神経医療研究センター病院)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 病院  総合診療部)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 新関 寛徳(国立成育医療研究センター 病院  感覚器・形態外科部)
  • 神崎 晋(鳥取大学 医学部)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター 病院  感覚器・形態外科部)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター 研究所 政策科学研究部)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究センター )
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所)
  • 堀米 仁志(筑波大学 医学医療系)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学 大学院医学研究科)
  • 與田 仁志(東邦大学 医学部)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童福祉法改正法(平成26年法律第47号)及び「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成27年厚生労働省告示第431号)に示された小児慢性特定疾病対策を社会実現するため、その推進に寄与する資料およびその実践的基盤を提供することを目的とした。
研究方法
①小児慢性特定疾病データ登録システムの開発及びデータベースの精度向上に関する検討
②小児慢性特定疾病登録データの利活用の方策の検討
③小児慢性特定疾病のコード化に関する検討
④小児医療支援等に関する地域格差や疾病格差、制度格差等に関する包括的検討
⑤小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する調査研究
⑥小児慢性特定疾病児童等の成人移行期支援に関する検討
⑦医療関係者ならびに患者家族等への情報提供・情報共有の在り方の検討
⑧小児慢性特定疾病指定医の研修プログラム(e-learning)の開発
⑨小児慢性特定疾病対策における相談支援事業のあり方に関する検討
⑩小児慢性特定疾病対策の適正な運用等に関する検討
結果と考察
これまで日本小児科学会及び分科会、関連学会等と密接に連携し、小児慢性疾病や指定難病の検討に際し、対象疾病としての要件を満たしていると考えられる疾病について、対象追加要望や既存の制度における改善要望を行い、検討に要する資料を提供し、新たな対象疾病拡大に貢献してきた。また平成27年1月より新たに小児慢性特定疾病対策として大きな制度改正が行われたが、本研究班では、平成26年までに小児慢性特定疾患治療研究事業において申請された年間約11万件分の医療意見書データを登録データベースとして登録・管理し、集計・解析等を行ってきた。この登録データベースに蓄積されたデータ(以下、小慢登録データ)の特性を明らかにするため、これまでに経済分析にて用いられている相対的格差指標であるTheil indexを用いた検討により、まず人口動態統計を用いた分析にて健康格差の指標として用いることが可能であることを示し、小慢登録データの検討にて実施主体間の登録格差はそれほど大きくないことも示した。さらに国民健康保険における診療報酬明細書データを利用した分析により、小児慢性特定疾病の公費負担の割合を推計し、利用率が高い疾病についてはおおよそ5~6割の症例が、小児慢性特定疾病を利用している可能性があることを示し、わが国で初めて公費負担の実情について報告を行った。小児期に疾病を罹患している者の相当数が成人期にも医療介入が必要と考えられているが、患者数の実態が把握されていないことから、本年度は成人患者および移行期支援対象患者の把握を行った。小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業に参加している医療機関のうち、小児期の診療を主に行っている5施設について調査を行った。その結果医療機関を受診した全患者のうち、20歳以上は約5%、15~19歳は約8%と推計され、合わせて全体の1割以上が移行期支援を必要とする可能性があることが分かった。医療技術の進步等により慢性疾病を抱えながら長期生存する児が増加しているが、本研究班ではわが国で初めて全国の94実施主体の協力を得て、小児慢性特定疾病を抱える子どもとその保護者に対してQOLおよび社会支援等に関する調査を行った。小慢登録データを利用した分析により、小児期から成人への移行に際し医療費支援が重要であることを難治性病態を持つ関節型JIAにおけるBio製剤の利用状況等により具体的に示し、政策決定における重要な資料として利用された。小児慢性特定疾病は多くの稀少疾病を含むこともあり、病名がコード化されていないことが多いため、DPC傷病名コーディングに精通した情報管理技能者の協力の下、対象疾病に対しICD-10コードの附番を行った。国民への幅広い情報提供を目的として平成27年1月1日の制度改正時よりポータルサイトを運用しているが、利用状況の分析から、年々一般国民の利用が増加しており、幅広く利用されていることを示した。
結論
本研究により、難病政策に資する成果を出すことができ、今後も関係学会等と協力しつつ、事業の公正かつ公平な運用のために必要となる課題について、引き続き取り組んで行きたい。

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201811093C

収支報告書

文献番号
201811093Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,199,000円
(2)補助金確定額
34,199,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 60,297円
人件費・謝金 10,555,922円
旅費 413,474円
その他 15,277,307円
間接経費 7,892,000円
合計 34,199,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
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