強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインに関する研究

文献情報

文献番号
201811055A
報告書区分
総括
研究課題名
強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインに関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-045
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
尹 浩信(熊本大学 大学院生命科学研究部 皮膚病態治療再建学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 浅野 善英(東京大学 医学部附属病院 皮膚科)
  • 石川 治(群馬大学 大学院医学研究科 皮膚科学)
  • 岡 晃(東海大学 総合医学研究所)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学 リウマチ科 膠原病リウマチ痛風センター)
  • 熊ノ郷 淳(大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器免疫内科学)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野)
  • 後藤 大輔(筑波大学 医学医療系 内科)
  • 神人 正寿(和歌山県立医科大学 医学部 皮膚科)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部 免疫・リウマチ内科学)
  • 竹原 和彦(金沢大学 医薬保健研究域医学系 皮膚分子病態学)
  • 長谷川 稔(福井大学 医学部感覚運動医学講座 皮膚科学)
  • 波多野 将(東京大学 大学院医学系研究科 重症心不全治療開発講座)
  • 藤本 学(大阪大学 大学院医学系研究科 皮膚科学)
  • 牧野 貴充(熊本大学 医学部附属病院 皮膚科・形成再建科)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学 医学部 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 藤本 学 筑波大学医学医療系皮膚科(平成30年4月1日~平成31年1月31日)→大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学(平成31年2月1日~平成31年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
2004年に厚生労働省強皮症調査研究班により「強皮症における診断基準・重症度分類・治療指針」が作成され、2007年に改訂された。2010年にはEBMに基づいた「全身性強皮症診療ガイドライン」が公表された。欧米の全身性強皮症の診断基準の改定および治療の変化に対応するため、我々は「全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン」を完成させ、2016年に発表した。我々の策定した全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの妥当性を評価し、これらの診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの次回改訂にむけて検討を行う。
研究方法
各疾患、各臓器毎に分担研究者・研究協力者の中からエキスパートを選出し、担当を決定した。班会議、メール会議を頻回に行い、今年度は次年度に引き続き全身性強皮症診断基準の妥当性に関する検討を行った。早期分類基準についてはレイノー現象を有し、皮膚硬化を伴わない症例のうち、①手指腫脹、②爪郭部毛細血管変化、③抗核抗体、④SSc関連自己抗体のいずれかを有する21例を抽出し、2013年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ会議SSc分類基準で9点以上のSSc確診例を除外した12例を対象とし評価を行った。また、全身性強皮症の各臓器毎に重症度分類の妥当性・有用性に関する検討を行った。さらに限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬のアンケート調査の結果をもとに症例数、診断基準、重症度分類に関する検証を行った。また、硬化性萎縮性苔癬については診断基準・重症度分類とその治療法について後ろ向き調査研究を行った。
結果と考察
全身性強皮症の診断基準に関しては臓器毎、各疾患毎に感度・特異度について検証を行った。これまで用いられてきた診断基準によって全身性強皮症と診断された患者について各班員の所属する大学病院を受診した外来患者について2016年に我々が策定した診断基準に当てはめることにより感度を検討した。また、全身性強皮症と他の膠原病において新しい診断基準によって全身性強皮症を正確に判定できるか定量的に検証した。早期分類基準については手指の診察、ダーモスコピーによる爪郭部毛細血管観察、抗核抗体およびSSc関連自己抗体(抗topoisomerase I抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体、抗U1RNP抗体)の測定を実施した。
限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の症例数、診断基準、重症度分類は、各施設からの回答に基づき各疾患毎の患者数と施設数をまとめ、診断基準を満たしているか、さらには重症に分類される症例の割合を検証した。また、各疾患毎の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの認知度について分析を行った。硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類、治療法に関する後ろ向き調査は病理学的検査の上で硬化性萎縮性苔癬と診断された14症例について診断基準・重症度分類をあてはめ、解析を行った。今回の検討において我々の策定した2016年診断基準と2013年ACR/EULAR分類基準が2010年厚生労働省SSc診断基準よりも高い感度を示した。
2010年厚生労働省診断基準に対する改訂で、我々が新たに加えた「爪郭部毛細血管異常」の項目が、診断基準の特異度を維持しつつも感度を上げるという目的に有用に働いたことが確認できた。早期の症例についても皮膚硬化を伴わない症例について検証を行い、我々の策定した基準がSScに進展する早期例を把握できる可能性があることを確認した。硬化性萎縮性苔癬の診断基準について病理学的所見においては、挙げられた所見をすべて満たさない症例も存在し、特に表皮萎縮に関しては半数以下の病変でしか確認できなかった。重症度分類では本解析では男性の陰茎病変に限られており、機能障害解除目的の手術を施行した例とも一致していた。一方、高齢者では有棘細胞癌の合併のために手術を要する症例を多く認めているにも関わらず、悪性腫瘍合併は重症度分類には反映されていなかった。

結論
我々が2016年に策定した全身性強皮症の診断基準は、2010年厚生労働省SSc診断基準よりも各臓器ともに感度・特異度ともに優れていた。重症度分類についても各臓器ともに予後予測の指標として有用であると考えられた。早期例・軽症例については症例数が少なく検証が不十分であるが、早期治療が全身性強皮症の治療経過を大幅に改善することからも検証を続け、早期例・軽症例の感度・特異度を高める必要がある。
限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬のアンケート調査を通じて診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの次の改訂点が示唆されたことから同様のアンケート調査を今後も実施していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,360,000円
(2)補助金確定額
9,360,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,124,207円
人件費・謝金 2,625,709円
旅費 914,100円
その他 1,537,668円
間接経費 2,160,000円
合計 9,361,684円

備考

備考
1,684円は自己資金を使用した。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-