軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
201811054A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-044
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部 )
  • 天野 宏一(埼玉医科大学 医学部 )
  • 末松 栄一(国立病院機構九州医療医療センター )
  • 村上 孝作(京都大学医学部附属病院 )
  • 東 直人(兵庫医科大学 医学部 )
  • 田中 良哉  (産業医科大学 医学部 )
  • 峯下 昌道  (聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 船内 正憲(近畿大学 医学部)
  • 武井 正美  (日本大学 医学部 )
  • 川畑 仁人   (聖マリアンナ医科大学 医学部 )
  • 遊道 和雄 (聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科 )
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科 )
  • 清水 潤(聖マリアンナ医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再発性多発軟骨炎(RP)をはじめとする軟骨炎症性疾患はその希少性ゆえに本邦においても疫学的な臨床情報は不十分であり、診断治療の指針も確立されていない。RPでは呼吸器、心血管系、中枢神経系の臓器病変を持つ患者は予後不良であり診断、治療法の標準化とその広報が急がれる。本研究は疫学調査や厚生労働省の個人票データなどによる患者臨床情報を用いて該当3疾患における診断・治療のガイドライン作成を第一の目的とする。
研究方法
2009年に全国主要病院へのアンケートを用いて239人のRP患者を疫学調査した。初診時および最終受診時に、臨床症状と検査所見に基づいて個々の患者の臓器病変の臨床情報を得た。これらを用いてRP患者の臨床症状および検査所見の有無について、それぞれダミー変数1および0を割り当てたのち、スチューデントのt検定を用いてサブグループ解析を行った。
結果と考察
これまでの解析を通じて我々はRPの各合併症間に一定の相関があることに気づき、相関検討を実施した。その結果RPは「耳介軟骨を中心とした患者群」と「気道軟骨を中心とする患者群」に二分されることが明らかになった。そこで、本邦RP患者を耳軟骨炎群と気道軟骨炎群と、さらに両者の合併群の三群に分け、群間検討をすることで患者重症度に寄与する因子を選別した。
 i) 単独「耳介軟骨炎群」と単独「気道軟骨炎群」
RPは多彩な症状の組み合わせを示すため、通常の分類にはなじまない疾患であると考えられていた。そこで多数例での症例の蓄積をもとにRPの亜分類の可能性を検討した。即ち、239名の患者のうち、単独耳介軟骨炎群には118名(49.4%)、単独気道軟骨炎群には47名(19.7%)が含まれた。興味深いことに、4名を除いて残りの70名(29.3%)は耳軟骨炎と気道軟骨炎を合併しており、この群を「合併群」として3群比較を実施した。
現在の年齢、発症年齢、男女比に3群間に有意差を認めなかったが、合併群の罹病期間(平均5.7年)が単独耳介軟骨炎群(平均4.1年)に比較し有意に長期であった。同様の罹病期間の長い傾向は合併群と単独気道軟骨炎群(平均4.8年)の間でも認めた。
 ii) -1. 単独「耳介軟骨炎群」と単独「気道軟骨炎群」との比較
耳介軟骨炎群にて、有意に結膜炎、関節炎、中枢神経障害の合併が多かった。活動性の耳介軟骨炎群では中枢神経障害の合併が多く、解剖学的に近接した部位への炎症病変の波及が考えられた。
気道軟骨炎群では有意に鞍鼻の合併が多く、気道病変の進行を示す頻度や生物学的製剤の使用頻度が高かった。
 ii) -2. 単独「耳介軟骨炎群」と「合併群」との比較
耳介軟骨炎群にて有意に結膜炎と中枢神経障害をきたす症例が多かった。
合併群においては鞍鼻や心血管合併症をきたす症例が多いほかに、進行性病態、MMP3高値、生物学的製剤の使用を示す頻度が高く、さらには罹病期間が長いという特徴がみられた。
 iii) 血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)の測定
研究ii)の結果にて、合併群にて単独耳介軟骨炎群に比較して有意にMMP3高値を示す患者が多いということが判明した為、新規に22名の患者をリクルートしてその血清を用いて検討した。結果は耳介軟骨炎群および気道軟骨炎群に比較して、有意に合併症群のMMP3濃度が高値であった。
ⅳ)これまでにRPの活動性の評価にRPDAIを用いる事を提唱した。今回予備的な検討として、少数例であるが進行性病変を持つ活動性患者の経過でRPDAIを計算した。そこではRPDAIが活動性の評価に用いる事の妥当性が示され、今後多数例でRPDAIの有用性を評価する必要性が示された。
結論
① 単独耳介軟骨炎群には約5割、単独気道軟骨炎群には約2割の患者が含まれる
② 残りの3割は気道軟骨炎と耳介軟骨炎の両方を合併している。
③ 耳介群には中枢神経障害や心血管合併症が多く、一旦臓器障害を合併すると重症化あるいは致死的である。
④ 気道軟骨炎群には全般に予後不良例が多い。
⑤ 発症後の時間の経過により、耳軟骨炎群と気道軟骨炎群のそれぞれ単独症状群が合併群へと移行して行き、その為さらに重症化することが明らかになった。これらの結果をもとに重症度分類の見直しや治療ガイドラインの策定に役立てる。

公開日・更新日

公開日
2019-09-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811054Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 938,165円
人件費・謝金 906,520円
旅費 178,696円
その他 976,619円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
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