地域における循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進のための研究

文献情報

文献番号
201809027A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進のための研究
課題番号
H30-循環器等-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 一則(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 能血管内科)
  • 泉 知里(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部)
  • 西 信雄(薬基盤・健康・栄養研究所・国際栄養情報センター)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院・生活科学研究科 食・健康科学講座 公衆栄養学)
  • 山岸 良匡(筑波大学・医学医療系 社会健康医学)
  • 尾形 宗士郎(藤田医科大学・医療科学部看護学科)
  • 小久保 喜弘(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 中尾 葉子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会に向けた医療を考えるとき、脳卒中と心臓病対策は緊急に取り組まなければならない最も重要な課題である。そこで、本研究では、脳卒中と心臓病のリスク評価や保健指導に十分な実績のある研究者でチームを作り、循環器疾患のリスク・病態を最新のエビデンスやコホートデータを用いて評価し、科学的な知見に基づいて循環器疾患が重症化しやすい高い未受診者・ 受診中断者について、関係機関からの適切な受診勧奨を行うことによって治療に結びつけるとともに、循環器疾患で通院する患者のうち重症化するリスクの高い者に対して主治医の判断により保健指導対象者を選定し、心不全、脳卒中への移行を防止することを目的とするプログラムを作成する。
研究方法
(1)コホートデータを用いた心不全および脳卒中の発症及び重症化リスクの検証
コホートデータとして、吹田研究およびCirculatory Risk in Communities Study (CIRCS研究)を用いる。吹田研究は、無作為抽出した30~79歳男女7814名の一般住民をコホートとして1989年~1996年にベースライン調査より現在まで20年以上追跡している。CIRCS研究は、40-74歳男女を第3コホートとして1985-1994年にベースライン調査を実施し、以後2013年末まで(平均21.8年)追跡している。心不全と脳卒中の発症および重症化リスク軽減の観点から、予防介入が可能であることを考慮しながら検討する。
(2)心不全および脳卒中の重症化リスクと予防介入方法のエビデンステーブルの作成
心不全と脳卒中の発症および重症化リスクと予防介入方法に関する過去に報告された論文を網羅的に検索し、科学的に吟味をおこなう。エビデンステーブルを作成する。
(3)心不全および脳卒中のハイリスク選定と評価指標の作成
 心不全及び脳卒中のハイリスク者の選定と健康状態の評価、運動・栄養に関するストラクチャー指標、アウトプット指標やサロゲートマーカー、アウトカム指標を作成する。
健診対象者に対して、作成したガイドラインに基づきスクリーニングと保健指導のプログラムを作成し、その実効性を検討する。
結果と考察
(1)コホートデータを用いた心不全および脳卒中の発症及び重症化リスクの検証:
CIRCS研究において日本人地域一般住民約5000人を対象に、NT-proBNP値の分布と、他の循環器リスク因子や心不全症状との関連を分析した。NT-proBNP高値群(400 pg/dl以上)の占める割合は全体の約2%であった。NT-proBNPは、年齢、血圧、心不全や心疾患の治療、心房細動や心電図異常、心不全の臨床症状と正の相関、また脂質指標と負の相関を示した。
さらに、吹田研究から、2,774名のBNPを測定した。BNP100pg/mL<、または心不全治療中の場合、心不全罹患として観察打ち切りとした。16,856人年追跡期間中に270名の潜在性心不全が観察された。至適血圧<120/80 mmHg を基準にした場合、高血圧140/90 mmHg<での潜在性心不全リスの罹患ハザード比は1.94(1.30-2.91)であった。
(2)心不全および脳卒中の重症化リスクと予防介入方法のエビデンステーブルの作成:
心不全および脳卒中の重症化予防に資する生活習慣改善項目を、先行研究の文献レビューにより検討した。現在の特定保健指導対象者である40-74歳を含む成人を対象とし、心不全あるいは循環器病がアウトカムで、ガイドラインで推奨された生活習慣改善項目を検討した先行論文をレビューした。地域における循環器病疾患発症及び重症化予防に対する取り組みは、健康人には運動習慣と飽和脂肪酸摂取量減少を中心とした食習慣改善により循環器病リスク因子減少を目指し、循環器病ハイリスク者及び循環器病有病者には対象者の個別性を考慮した生活指導を継続して実施していくことが重要と示唆された。
(3)心不全および脳卒中のハイリスク選定と評価指標の作成:
心不全ステージ分類におけるステージAからステージCが本指標の対象患者である。スクリーニング選択基準は、現行の特定健康診査で評価可能な項目(診察項目、血圧、コレステロール値、血糖値、喫煙の有無等)を用いて、3段階に層別化した。標準的な健診・保健指導プログラムの項目に加え、多量飲酒と予防接種の有無の評価を加えた。
結論
心不全と脳卒中の発症と重症化リスクを軽減させるスクリーニング項目と判定基準を提示し、その介入プログラムを作成することは、社会の重要な役割を担うこととなる高齢者の健康寿命延長および早期介入による循環器疾患の予防により、保健事業を運営する保険者および事業主・自治体などの予算(財政)の最適化に資すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201809027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,029,518円
人件費・謝金 1,987,788円
旅費 1,381,650円
その他 1,296,056円
間接経費 2,307,000円
合計 10,002,012円

備考

備考
2,012円の不足については自己資金にて精算致しました。

公開日・更新日

公開日
2020-02-12
更新日
-