受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201809001A
報告書区分
総括
研究課題名
受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
中村 正和(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大和浩(産業医科大学 産業生態科学研究所健康開発科学研究室)
  • 河井 一明(産業医科大学 産業生態科学研究所職業性腫瘍学)
  • 五十嵐 中(東京大学 大学院薬学系研究科医薬政策学)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人 大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター、がん対策情報センター 国立研究開発法人国立がん研究センター)
  • 原田 正平(聖徳大学 児童学部児童学科)
  • 岡本 光樹(岡本総合法律事務所)
  • 大森 久光(熊本大学、大学院生命科学研究部医療技術科学講座)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センター がん統計・総合解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,300,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 欅田尚樹 国立保健医療科学院・生活環境研究部( 平成30年4月1日~30年12月31日)→ 産業医科大学・産業保健学部(平成31年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、たばこ規制枠組み条約(FCTC)に照らして特に取組みが遅れている受動喫煙防止、広告・販売促進・後援の禁止、健康警告表示の3政策に重点をおき、政策化に役立つエビデンスの構築と実効性のある政策の提言を目的としている。
研究方法
受動喫煙防止については、最新データを用いた受動喫煙による超過医療費の推計、屋外喫煙場所の事例収集とPM2.5濃度のモニタリングによる受動喫煙防止の効果評価、条例制定の動きの広がりを踏まえて、法令及び条例の施行上の課題について検討を行った。そのほか、受動喫煙の他者危害性の理解につながる曝露指標の検討、たばこ産業等による受動喫煙防止対策への政策干渉の分析について検討した。健康警告表示については、国内における現状課題と今後の改定をとりまとめ、財務省宛の要望書素案を作成した。広告等の規制については、たばこ産業による喫煙防止や分煙の広告等に対する意識調査の分析を行った。
そのほか、包括的なたばこ対策の効果評価にむけた国際保健機関(WHO)の研究グループ等との共同研究、喫煙者を対象としたRCT研究によるCOPDスクリーニングの有効性評価、加熱式たばこ使用者へのインターネット調査による使用実態の把握、喫煙者を対象としたたばこ規制等に関するインターネット調査、加熱式たばこの使用実態や健康影響の文献レビューとたばこ規制への影響の検討を行った。
結果と考察
たばこ規制の強化を図る上で重要な基礎データとなる喫煙に関連するコストについて、能動喫煙に関しては因果関係が示唆されているが十分でないと評価された疾患も加えた分析を行った結果、2015年の超過コストは2兆500億円、そのうち、超過医療費は能動喫煙1兆3,594億円、受動喫煙3,295億円であった。改正健康増進法により第一種施設に設置が認められた「特定屋外喫煙場所」と特定施設以外で想定されている「屋外喫煙場所」について、効果のある技術的対策や運用上の工夫を検討した。法令及び条例の施行後の実効性を担保するために、罰則等の執行体制、助成金・補助金のあり方についても検討した。
財務省財政制度審議会の健康警告表示の改定案の政策インパクトが小さいことが、本研究班の意識調査や警告表示の内容別のインパクト調査で明らかになったことを受けて、FCTC第11条に基づいた課題整理と画像の導入を含む改定案をとりまとめ、日本公衆衛生学会等の関連学会と協働して財務省に要望書を提出した。
たばこ対策が喫煙者の認識や行動に与えるインパクトを評価するため、2014年度に実施した調査を2018年度に同様の方法で実施し、たばこ対策の進展度を評価した。その結果、たばこの健康影響に関する認識やたばこ規制の取り組みから受けているインパクトは数%の改善にとどまり、法規制の面での取り組みの遅れが改めて確認された。
肺機能検査や質問票によるCOPDの簡易スクリーニングがCOPDの認知度や禁煙率に及ぼす効果を調べるについては、RCT研究の結果、介入6ヵ月後の調査では禁煙成功やCOPDの認知の増加につながらなかったが、回収率が40%~50%と低く、1年後の回収率を高めたデータで最終検討を行う。
加熱式たばこ使用者に対するインターネット調査の結果、加熱式たばこ使用のきっかけは、加熱式たばこ使用者からの勧めや試し吸いなどであり、紙巻たばこのニオイなどの問題が軽減したことで今まで吸えなかったところでもたばこを吸える機会ができたこと、喫煙による健康リスクが軽減したと考え、禁煙の意欲が低下している実態が明らかになった。また、加熱式たばこの流行に伴う禁煙治療への影響を調べるため、禁煙試行者が用いた禁煙方法を2016年と2018年で比較した。その結果、すでに2018年において加熱式たばこの利用が禁煙外来での禁煙治療や薬局・薬店でのニコチン製剤の利用を上回り、今後モニタリング継続の必要性が示された。
日本においてFCTCの政策パッケージが履行された場合の喫煙率および疾病負荷の軽減効果の暫定推定の結果、短期的にも喫煙率の低減効果が期待でき、長期的には大きな疾病負荷低減効果があることが示された。
結論
超高齢化社会の到来にむけて、生活習慣病や介護の原因に深く関係する喫煙ならびに受動喫煙の低減を図ることの社会的意義は大きい。2018年7月に受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が成立した。法改正の実現にあたり、受動喫煙に関する超過医療費の推計結果をはじめ、これまで本研究班で創出した受動喫煙による他者危害性の検討結果や飲食店の禁煙化に伴う経済影響などのエビデンスとその公表が法改正の実現に一定の貢献をしたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-08-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201809001B
報告書区分
総合
研究課題名
受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
中村 正和(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室)
  • 河井 一明(産業医科大学産業生態科学研究所職業性腫瘍学)
  • 五十嵐 中(東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人 大阪府立病院機構大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学産業保健学部)
  • 平野 公康(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターたばこ政策支援部)
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)
  • 原田 正平(聖徳大学児童学部児童学科)
  • 岡本 光樹(岡本総合法律事務所)
  • 大森 久光(熊本大学大学院生命科学研究部医療技術科学講座)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国民の健康を守る観点からわが国が批准しているWHOのたばこ規制枠組条約(FCTC)の履行状況の検証、喫煙の健康被害の法的・倫理的側面からの検討、たばこ規制の行動経済・医療経済学的評価、健康格差是正の観点からのたばこ規制の効果の実証的検証を行い、今後のたばこ規制を行う上での政策課題と対策を総合的に検討し、政策提言を行うことにある。
研究方法
受動喫煙防止については、2016年度後半から法的規制の強化の動きが活発になったことを受け、これを重点課題と位置づけ、政策の実現に役立つエビデンスの構築を行った。具体的には受動喫煙による超過医療費の推計、禁煙化の飲食店の営業収入に及ぼす影響の検討、屋外喫煙所の設置要件の検討と受動喫煙防止効果の評価、「子どもを受動喫煙から守る条例」の素案作成、受動喫煙防止規制の施行上の課題の検討であった。健康警告表示については、文字や画像による5種類の異なる警告表示のインパクトを調査し、現状課題と今後の改定をとりまとめ、要望書素案を作成した。
加熱式たばこ等の実態把握のために、公的調査における質問項目の検討と提案のほか、加熱式たばこ使用者への定性・定量調査を実施した。本研究班での調査研究データと国内外のエビデンスをもとに、加熱式たばこの使用実態、健康影響、たばこ対策への影響、今後の規制のあり方を検討した。
そのほか、受動喫煙の他者危害性の理解につながる曝露指標の検討、たばこ産業等による受動喫煙防止対策への政策干渉の分析、包括的なたばこ対策の効果評価にむけたWHOの研究グループ等との共同研究、健康日本21(第二次)における成人喫煙率の目標値を達成するための政策ミックスの検討、RCT研究によるCOPDスクリーニングの禁煙効果評価、受動喫煙の他者危害性、広告規制等に関する意識調査、喫煙者を対象としたたばこ規制等に関するインパクト調査を実施した。
結果と考察
2018年7月の受動喫煙対策を強化する改正健康増進法の成立の実現にあたり、受動喫煙に関する超過医療費の推計結果をはじめ、これまで本研究班で創出した受動喫煙による他者危害性の検討結果や飲食店の禁煙化に伴う経済影響などのエビデンスとその公表、関連学会と協働した政策提言が法改正の実現に一定の貢献をしたと考えられる。東京都においては、2017年10月の子どもを受動喫煙から守るための条例の制定に続き、改正健康増進法の法案を参考に罰則付きの条例が2018年6月に制定された。前者の条例は本研究班が2016年度の研究成果として提案した条例案を参考に制定された。他の地方自治体についても条例制定の動きが広がっていることを受けて、施行上の課題として、罰則等の執行体制、助成金・補助金のあり方について検討した。
財務省財政制度審議会の健康警告表示の改定案(2018年12月最終報告)のインパクトが小さいことが、本研究班が実施した意識調査や警告内容別のインパクト調査で明らかになった。このことを受けて、FCTC第11条に基づいた課題の整理と画像付きの表示の導入を含む改定案の内容を検討し、日本公衆衛生学会等の関連学会と協働して2019年3月財務省に要望書を提出した。要望事項は、画像を含んだ注意文言表示の導入のほか、リスクが低いとの誤解を生じさせる文言の禁止、ニコチン,タール量の表示の中止または主流煙捕集方法のHCI法への変更であった。
加熱式たばこの使用実態の把握のために、質問票の改定を提案した結果、2018年からの国民健康・栄養調査と第3期特定健診・特定保健指導の保健指導用の質問票に採用された。加熱式たばこの検討結果を日本公衆衛生学会と協働してとりまとめ、日本公衆衛生雑誌に2018年4月に投稿した。
第3期特定健診・特定保健指導における禁煙支援の義務化と受動喫煙の健康影響の情報提供に関する政策提言案を作成し、関連学会と協働して厚生労働省に対して要望書を提出した(2016年8月、12月)。禁煙支援の義務化は実現しなかったが、受動喫煙の健康影響に関する情報提供が努力義務となった。
政策の導入に伴う健康面や経済面への効果や影響を定量的に評価できるモデルの構築と改良を行った。本モデルを用いて、第2次健康日本21における成人喫煙率の数値目標の達成に必要な対策内容の検討、最新データを用いた喫煙と受動喫煙が社会に与えるコストの推計、包括的なたばこ対策を実施した場合の効果評価を実施し、政策提言等に用いた。
結論
過去3年間におけるたばこ規制の最大の政策実現は、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が2018年7月に成立したことである。この法改正の実現にあたり、受動喫煙に関する超過医療費の推計結果をはじめ、これまで本研究班で創出したエビデンスとその公表、関連学会と協働した政策提言が法改正の実現に一定の貢献をしたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201809001C

収支報告書

文献番号
201809001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,480,000円
(2)補助金確定額
15,473,000円
差引額 [(1)-(2)]
7,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,203,636円
人件費・謝金 5,429,579円
旅費 2,056,305円
その他 4,604,282円
間接経費 1,180,000円
合計 15,473,802円

備考

備考
自己資金802円

公開日・更新日

公開日
2020-02-05
更新日
-