WHOの自殺予防戦略に基づくがん患者自殺予防プログラムの開発

文献情報

文献番号
201808031A
報告書区分
総括
研究課題名
WHOの自殺予防戦略に基づくがん患者自殺予防プログラムの開発
課題番号
H30-がん対策-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 豊(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 健康支援研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 明智龍男(名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 一家綱邦(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 生命倫理・医事法研究部)
  • 内富庸介(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 支持療法開発部門)
  • 藤森麻衣子(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター健康支援研究部心理学研究室)
  • 井上佳祐(横浜市立大学 大学院医学研究科 精神医学部門)
  • 島津太一(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部予防評価研究室)
  • 三枝祐輔(横浜市立大学 大学院医学研究科 臨床統計学)
  • 三角俊裕(横浜市立大学 市民総合医療センター 臨床統計学)
  • 河西千秋(札幌医科大学 医学部 神経精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,790,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本は先進7か国の中で最も自殺死亡率が高く、自殺は最大の社会損失の一つである。自殺の動機にがんの占める割合は高い。がん患者の自殺リスクは一般人口の約2倍(Misono et al., 2008)であり、わが国ではがん診断後1年以内の自殺リスクが24倍(Yamauchi et al., 2014)と顕著に高いが、拠点病院等であっても相談体制が十分ではないという状況にある。第3期がん対策推進基本計画では、「国は、拠点病院等におけるがん患者の自殺の実態調査を行った上で、効果的な介入のあり方について検討する。また、がん患者の自殺を防止するためには、がん相談支援センターを中心とした自殺防止のためのセーフティーネットが必要であり、専門的・精神心理的ケアにつなぐための体制の構築やその周知を行う」ことが記された。
自殺予防介入は、全体的、選択的、個別的予防介入という理論的枠組みで整理される(WHO, 2014)。全体的戦略は、援助へのアクセスを増やす等、物理的環境を改善することで、健康を最大限に保持しながら自殺の危険を最小限にするもので、全人口に届くように計画される。選択的戦略は、人口動態学的特徴に基づき、人口集団のうちの脆弱性の高い集団をターゲットとする。個別的戦略は、自殺の可能性を示す早期サインを表出する危険性の高い個人をターゲットとする。これらWHOの自殺予防戦略を念頭に、本研究では自殺予防対策立案に資する2つの研究開発を行う。
研究方法
研究①では、メンタルヘルスケアへのアクセスを促すポスターと小配布物を病院内に掲示・設置することにより、精神科受診もしくは緩和ケアを受けたうつ病・適応障害・不安障害の診断がついた患者数をがん患者数で除した割合が増加するか否かを検討する。
研究②では、多職種チームによるがん患者のメンタルへルス支援と自殺予防を目的としたがん患者メンタルへルス支援プログラムを開発し、その有効性を検証する。
結果と考察
研究①では、公募により拠点病院4施設が集まった。精神科受療を勧めるポスター・カードについては、「がんには、こころのケアを。」というメッセージが伝わりやすい3種類のポスター(罹患者数の多い、胃がん、大腸がん、肺がん)が完成した。対照期間に比して、アクセス勧奨期間の精神科受診・緩和ケア受療したうつ病・適応障害・不安障害患者数が増えることを検討するパイロット調査を3~5月にかけて実施した。本試験のデザインについては、生物統計家との相談を経て、Stepped Wedge Cluster Randomized Trialを採用することにした。
研究②では、複数のがん診療連携拠点病院において、診断告知後1年以内の進行がん患者を対象に心理社会的特徴を詳細に調査するとともに、ケース・マネジメント介入を実施し、がん相談支援センターを介在させた患者とのコンタクトと介入実施可能性について詳しい調査を行うことにした。本研究で実施する介入プログラムは、患者にとって侵襲性が極めて低いと考えられる心理社会的支援プログラムを導入することとした。
結論
研究①では、「がん患者に対するメンタルヘルスケアへのアクセス勧奨法の開発」を進めるため、初年度は1)研究参加施設の募集、2)精神的に不調ながん患者に対して、精神科受療を勧めるポスター・カードの作成、3)パイロット調査の実施、4)本試験のデザイン検討を行った。
研究②では、「診断告知後一年以内のがん患者に対するメンタルへルス不調予防と心理的危機介入のための複合的ケース・マネジメント介入プログラム」を策定し、その実施可能性を検討する目的で、「診断告知後一年以内のがん患者に対するメンタルへルス不調予防と心理的危機介入のための複合的ケース・マネジメント介入プログラム:フィージビリティ研究」の研究計画書を策定した。

公開日・更新日

公開日
2020-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,726,000円
(2)補助金確定額
12,726,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,890,561円
人件費・謝金 1,969,045円
旅費 1,531,925円
その他 4,398,576円
間接経費 2,936,000円
合計 12,726,107円

備考

備考
3月実績分から健康保険料が改定となり、支出予定でおりました人件費(給与)額が107円増えることとなりました。その107円を自己負担としたため、収入と支出の合計に差額があります。

公開日・更新日

公開日
2020-03-18
更新日
-