がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201808028A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究
課題番号
H30-がん対策-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院 消化器内科)
  • 佐川 元保(学校法人東北医科薬科大学 医学部光学診療部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部産婦人科)
  • 松田 一夫(公益財団法人福井県健康管理協会)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
  • 笠原 善郎(恩賜財団福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 加藤 勝章(公益財団法人宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 小川 俊夫(学校法人国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 喜多村 祐里(津田 祐里)(大阪大学大学院医学系研究科 社会医学講座)
  • 吉見 逸郎(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターたばこ政策支援部)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
  • 町井 涼子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職域におけるがん検診(職域検診)は、保険者や事業主により福利厚生の一環として提供されていたが、検査方法や対象年齢が市町村におけるがん検診(住民検診)とは異なり、科学的根拠に基づかないことに加え、精密検査の実態把握や精度管理が組織的に行われてこなかった。住民検診は、死亡率減少効果のある科学的根拠に基づいており、精度管理の仕組みがすでに整備されているが、職域検診についてはこのいずれも欠いていることから、効果的ながん検診が提供されているとはいえない状況にある。
本研究では、住民検診においては精度管理水準のさらなる改善のために現在の手法の改善策を開発し、職域検診においては現在、ほとんど行われていないがん検診のデータ把握とそれに基づく精度管理手法を開発することに加え、将来的には住民及び職域検診の全体に対する精度管理法を確立するための検討を行うことを目的とする。
研究方法
〇職域検診のデータ収集及び解析
全国健康保険協会(協会けんぽ)より、検診データ及びレセプトデータの利用について研究協力を得ており、これよりがん診断前に受診したと考えられる医療コードを抽出することで要精検率、精密検査受診率などを特定する手法を開発する。
健康保険組合のがん検診についてはこれまで現状把握されていないことから、研究協力保険者及び事業主より、個別のヒアリングを行う。

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
先行研究班で作成された精度管理指標(チェックリスト及びプロセス指標基準値)を基に、全国の精度管理水準を把握し、改善度を測る。改善が遅れている分野については、その原因と対策を検討し、改善を支援するためのツール等を開発する。現状で精度管理水準が低い個別検診においては、複数の都道府県と連携し、生活習慣病検診等管理指導協議会主導による精度管理手法を開発する。
結果と考察
〇職域検診のデータ収集及び解析
1.レセプトを用いたがん患者特定手法の検討
レセプトデータを用いたがん患者の抽出法の可能性が示された。現時点では、市区町村による要精検者の追跡が精度管理を行う上で必要であるが、精度の高いがん診断の抽出法が確立すれば、職域検診および住民検診における新たな精度管理手法となる可能性がある。
2.職域におけるがん検診の実態把握
職域におけるがん検診は、実施主体の考え方や組織構成およびシステムによりさまざまな形態で行われている。また、がん検診として実施している意識が薄い場合も散見される。そのため、単一の調査票による横断調査では、回答の信ぴょう性が担保されず、実態を反映しない結果となる可能性が高い。個別ヒアリングにより問題点が明確となってきたことから、今後は検診実施機関や健診代行業者などを対象としてヒアリングを行い、実態に即した把握を行う。

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
1. 精度管理手法の開発
本年度はがんの推計罹患率と目指すべき感度・特異度からプロセス指標基準値を推計する新たな手法を検討し、新基準値案をまとめた。この手法では精検受診率が100%であることが前提であり、精検受診率が低い自治体は、発見率や陽性反応適中度の基準値を満たせない可能性がある。あくまで適切な精度管理下で検診を行った場合に達成可能な指標を示したことがこの手法の特徴である。今後さらに意見を加え、新基準値の改定を目指す。
2.精度管理データの解析および問題点の抽出
がん検診の実施体制については、自治体や検診機関が最低限整備すべき体制として「事業評価のためのチェックリスト」が公表されており、これに基づいて全国調査を実施し、現在の検診体制の実態と課題を把握した。調査対象は全都道府県および全市区町村で、回答率はほぼ100%だった。調査結果で分った主な課題として、個別検診の体制整備が著しく遅れている、県・市区町村ともに事業評価のフィードバックが出来ていない、などが挙げられる。これらの項目については今後自治体の優良事例を収集するとともに、体制整備上のバリアと解決策を検討していく。
結論
職域検診において、レセプトデータを用いてがん患者が適切に特定できる可能性が示されており、今後妥当性を検討した上で実用化を目指す。職域検診の実態把握については、検診実施主体の多様性に対応すべく、個別ヒアリングをもとにした汎用性のある調査票を検討する。
住民検診においては、プロセス指標の新基準値を改訂し、チェックリストの実施率の低い自治体のボトムアップおよび個別検診での実施率の向上を行うことで、さらなる精度管理水準の向上を目指す。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,998,000円
(2)補助金確定額
10,090,000円
差引額 [(1)-(2)]
908,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 776,755円
人件費・謝金 1,361,298円
旅費 3,116,999円
その他 2,297,628円
間接経費 2,538,000円
合計 10,090,680円

備考

備考
未使用分を返納する際、1000円未満を繰り上げたため、680円の差が生じた。

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
-