東アジア・ASEAN諸国におけるUHCに資する人口統計システムの整備・改善に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201805007A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア・ASEAN諸国におけるUHCに資する人口統計システムの整備・改善に関する総合的研究
課題番号
H30-地球規模-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 千年よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本・ASEAN保健相会合(2017年7月)の共同声明では、各国の住民登録や人口動態を含む基本的データシステムの構築に関する共同研究を促進することが宣言された。住民登録(もしくはcivil registration)に基づく動態統計、つまり出生・死亡・移動に関する登録・集計が不十分な状況では、十分な分析ができず政策評価にも支障を生じる。特に人口動態統計がないか、あっても届出率が低い状況では、妊産婦死亡率(3.1.1)、幼児死亡率(3.2.1)、新生児死亡率(3.2.2)、心血管疾患・がん・糖尿病・慢性呼吸器系疾患による死亡率(3.4.1)、自殺死亡率(3.4.2)、交通事故死亡率(3.6.1)青少年出生率(3.7.2)といった、多くのSDGs指標の算定が不可能もしくは標本調査による不正確な値となる。本研究では、東アジア・ASEAN諸国における人口動態統計制度およびその基礎となる住民登録制度の問題点と整備・改善の条件に関する国際比較分析を行う。
研究方法
平成30年度は東アジア・ASEAN国における住民登録・人口動態統計の現状と政策立案・評価のための利用状況、その特徴と問題点を明らかにした。韓国・台湾・シンガポール・マレーシア・インドネシア等についは統計制度の整備過程をレビューし、また健康保険のカバー率を検討した。アジア全域について人口動態統計と、特に死因別統計の状況を確認し、課題を確認した。人口指標の推計をセンサス等の静態統計に依存する場合の問題点を、インドネシアについて検討した。
結果と考察
台湾は20世紀初頭に欧米先進国を上回る人口統計システムを完成させた希有な例であり、植民地としては例外中の例外と言える。これは戸口制度と警察組織の接合が非常にうまく行ったためで、現地人を含む警察官が住民の日常生活全般に強力に介入したことにより可能だった。このような「警察国家」の確立は、強力な独裁政権下でもかなり難しいと思われる。
 朝鮮では保甲のような利用できる制度がなく、警察も住民の日常生活に介入できず、統計制度の発展は遅れた。韓国で1980年代後半に出生・死亡の届出率が向上したのは、地域別統計指標への関心の高まりに動機づけられたものと考えられる。したがって水増し報告のようなモラルハザードを回避しながら、正確な地域別指標の重要性と有用性を担当者と住民に納得させられれば、届出率の向上につながるだろう。
結論
ASEANにはシンガポールやマレーシアのように届出率が高い国もあるが、ベトナムの死亡届出率は90%未満と考えられ、インドネシアは重要な指標の算出を静態統計に頼っている状態である。また全ての死亡についてWHOが推奨する形式で死因が集計されている国は、アジアでは日本・韓国・ブルネイだけである。中国も正確な死因統計が得られるのは一部の地域だけで、SDGs達成の評価時に障害になる。インドネシアは合計出生率や平均寿命等の重要な人口指標の算定を人口静態統計に頼っている状態であり、晩婚化・未婚化や死亡率低下といった変化と共に誤差が大きくなることが懸念される。

公開日・更新日

公開日
2019-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201805007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,259,629円
人件費・謝金 12,400円
旅費 1,624,219円
その他 603,752円
間接経費 0円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-05-23
更新日
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