地域における医薬品試験等のネットワーク化に関する研究

文献情報

文献番号
199800658A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における医薬品試験等のネットワーク化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 無味雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本剛(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所)
  • 中田琴子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 鹿庭なほ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 島村保洋(東京都立衛生研究所)
  • 中野道晴(北海道立衛生研究所)
  • 沢辺善之(大阪府立公衆衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬事に関する事項に関し、国(厚生省及び国研等)と地域(県庁及び地衛研等)、地域と地域の間に双方向性情報交換ネットワーク(「衛研薬事」)を構築するための研究を行い、また構築した「衛研薬事」を有効に運用するための研究を行い、これにより医薬品の品質に関する監視活動等をより有機的、迅速、高効率、かつ地域差なく行い、国民が等しく不正不良(偽劣)医薬品の害を被ることを防止し、国民の福祉をより向上させることを目的に研究を行う。
現在、偽劣医薬品の排除を目的としたネットワークは、国及び地域、地域と地域の間に存在せず、医薬品の品質に関する情報伝達は、通例、厚生省(医薬安全局監視指導課)→各県庁→地方衛研等、地方衛研等→県庁→医薬安全局監視指導課→他の県庁→他の地方衛研等の道筋で行われている。 しかし、「衛研薬事」は、これらを同一面において、情報交換を行うことができ、このネットワークに加入する機関と参加者が偽劣医薬品等に関する情報に関し、同質の情報を同時刻に共有することがで、かつ発信者に対し、より詳細な情報や質問を求めることが簡単に行え、かつ迅速な資料提供の要請も可能である。 このことは偽劣医薬品等の害をより防止できることを意味する。
また後発品が多い医薬品における品質格差の問題、偽劣医薬品の流通の問題などは、それが発覚した地域に限る問題ではなく、全国的に、迅速に対応すべき問題である。 しかしながら、医薬安全局監視指導課が、発生した問題に対応できる情報(例えば、販売先、品質規格、標準スペクトル、標準品、問題発生地域において把握された情報等)を持っていても、各地域のそれを必要とする部署への、それら情報の迅速な提供は近年発生した事例からも極めて困難であることが理解できる。 また、ある地域が、極めて重要な情報を持っていたとしても、それを国や他地域が、迅速に知る方法は少ない。 そこ「衛研薬事」の構築を行うことができれば、国又は地域の行政官や一研究者が得た偽劣医薬品等に関する情報及び資料等を、他の機関に属する研究者が共有することが可能になり、地域と国が偽劣医薬品等に対して地域差なく、無駄なく、正確に、かつ迅速に行動することが可能になる。 また各機関が試験技術等に関する情報や医薬品監視のための多くの知見及び経験を共有することが可能になり、地域及び国の検査技術も向上し、また地域で発生した問題の速やかな解決に役立ことは明らかである。
研究方法
初期の研究においては、 「衛研薬事」を検定検査研究機関(国研、地衛研、薬事指導所等)の間で立ち上げ、立ち上げた「衛研薬事」を試験的に運用し、ネットワークを実運用に適するように整備するための研究を行うこととした。 そして「衛研薬事」が整備された時点で県庁薬務課及び保健所等の参加を認めることとして研究を開始した。
石橋は、衛研等九十余機関に対し、「衛研薬事」に関するアンケート調査を行い、各機関のホームページ、薬事部門の有無、「衛研薬事」への参加の有無及びメールアドレス等について調査し、その結果を解析評価してネットワーク構築の基礎資料とすることとした。 中田は、「衛研薬事」に最適なサーバーマシン(ソフト含む)の構築、運用及び管理に関する研究、ホームページの立ち上げ、メーリングリストの整備及び利用環境等について研究を行うこととした。
中野は、「衛研薬事」の構築と運用に関する研究を行い、参加者間の情報発信を円滑かつ活発なものとするため「ネットワーク利活用のための規定(案)」を作成整備し、またメール使用上の留意点に対処する方法等をマニュアル化して「衛研薬事」に掲示し、会員間の通信における問題点の発生を防止する方法を提示することとした。
谷本らは、立ち上げられた「衛研薬事」ネットワークを運用し、それに提供すべき情報及びその有用性に関する研究を行い、また必要なデータベースを構築することとした。
鹿庭は、「衛研薬事」に「正確で精度のよい溶出試験データを得るには」を掲載し、ネットワーク参加者の反応を評価することにより、記事掲載の簡便性の評価及び薬事ネットワークの有用性の評価を行うこととした。 
沢辺は、薬事法違反事例の検出に関するネットワークの有用性の研究を行い、また「衛研薬事」において掲載する情報のデータシートについて検討整備を行うこととした。
島村らは、医薬品の違反事例のデータベース化とその内容を検索するシステムをCommon Gateway Interfaceプログラムを使用して構築するための検討を行うこととした。
各研究者が、上記の研究を行い検定検査研究機関(国研、地衛研、薬事指導所等)の間で、本研究の終了後に「衛研薬事」を運用するし、かつ有効な利用が可能な体制に整備することを目的として初年度の研究を行うこととした。
結果と考察
石橋及び中田は、国立衛研をキーステーションとし、国研(国)と各地方衛研(地域)、また地域と地域との間に医薬品の試験検査情報等に関するネットワークを構築ための研究を行い、北海道立衛生研究所等の 39 の登録機関、また 153 名の登録者を得て研究用「衛研薬事」を構築し、運用を開始した。 
中野、谷本、鹿庭、沢辺、島村らは、ネットワークの運用及び利用等に関する研究、例えば、「ネットワーク利活用のための規定(案)」や「メール使用上の留意点に対処する方法案」をマニュアル化するための研究、記事掲載の簡便性の評価及び薬事ネットワークの有用性の評価、分析法に関する情報及び標準物資に関する情報、薬事法違反事例の検出、データシートの整備、デーベベースの整備、検索するシステムの構築等に関する研究を行い、それぞれ分担研究者は、「衛研薬事」を運用し、活用するために必要な有用な結果を得た。 これらの結果は、直ちにネットワークの改善と運用のために用いた。 現在、「衛研薬事」は、データベースが十分でない状態にあるが、平成11年度により充実を行い、利用価値をより高める努力を行うことが必要である。
なお、薬事部分をもつているがネットワークが未整備で、現在はネットワークに参加できない 21 機関からは、ネットワークに関する整備が整いしだいに「衛研薬事」へ参加するとの回答を得ている。 したがって、本研究が終了する平成12年度末までには、ほとんどの地衛研や薬事指導所等をネット化できるものと考察できる。
結論
国研(国)と地衛研(地域)、地域と地域の間に双方向性情報交換ネットワークを構築するための研究を行い、研究用ネットワーク、「衛研薬事」を構築した。 今後は、機関間や会員間で「衛研薬事」を効率よく、かつ活発に運用し、これらの機関(薬品部門)を一体化し、医薬品の品質監視をより有機的、迅速、効率よく、かつ地域差なく行い、これにより国民が等しく偽劣医薬品の害を被ることを防止し、国民の福祉をより向上させる。 また機関間及び会員間において、日常的な情報交換を行う習慣とそれを行うことの意義を徹底させ、かつ相互の信頼関係を確率し、偽劣医薬品の排除を目的としたネットワークを構築することは、国民の安全確保に資することと考える。

公開日・更新日

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