文献情報
文献番号
201802008A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における望ましい医療・介護提供体制の在り方に関する保健医療データベースのリンケージを活用した課題の提示と実証実験
課題番号
H30-統計-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高久 玲音(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 道人(立教大学 経済学部)
- 若森 直樹(東京大学 大学院経済学研究科)
- 水野 篤(聖路加国際大学 急性期看護学)
- 大津 唯(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
- 佐方 信夫(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
- 菅原 慎矢(東京理科大学 経営学部ビジネスエコノミクス学科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
年間160万人が死亡する「多死社会」を迎えるわが国では、地域医療構想や地域包括ケアを柱とした医療と介護の提供体制の改革が推進されており、その実現に向けた実証的知見の蓄積は急務となっている。しかしながら、この分野に関する定量的な知見の蓄積は遅々として進んでいない。疫学分野、および経済学分野の研究を展望しても、質的な研究がとりわけ多い分野となっており、既存の統計をフル活用した定量的な研究はほとんどない。例えば、医療保険や介護保険の枠内で在宅看護や在宅医療を提供する診療所(在宅療養支援診療所)も増えているが、その地域的な分布や帰結(在宅医療の提供は自宅での死亡を増やすのか?)についても研究がなされていない。また「終の棲家」であるはずの介護施設でも終末期の患者を診取らず近隣の病院へ転院搬送する施設が少なくないことが知られている一方で、その実態や原因についてはほとんどわかっていない。
こうした不可欠な政策課題がなぜ研究者間で十分に解析されていないのかについては、かなりはっきりとした理由がある。最大の理由は、こうした分析主題が、医療と介護双方の質の高いデータなしには解析不能であることである。例えば、医療と介護の施設の地理的解析(地理的分布を用いた空間分析)を行うためには、「医療施設調査」と「介護サービス事業所・施設調査」を取得し、すべての医療機関と介護事業所・施設の立地および施設特性を把握する必要がある。しかし、こうした統計横断的な利活用は十分に進んでいない。
こうした不可欠な政策課題がなぜ研究者間で十分に解析されていないのかについては、かなりはっきりとした理由がある。最大の理由は、こうした分析主題が、医療と介護双方の質の高いデータなしには解析不能であることである。例えば、医療と介護の施設の地理的解析(地理的分布を用いた空間分析)を行うためには、「医療施設調査」と「介護サービス事業所・施設調査」を取得し、すべての医療機関と介護事業所・施設の立地および施設特性を把握する必要がある。しかし、こうした統計横断的な利活用は十分に進んでいない。
研究方法
そこで、本年度では研究初年度において取得した「医療施設調査」「患者調査」「介護サービス事業所・施設調査」「介護給付費等実態調査」「受療行動調査」「社会医療診療行為別統計・調査」などの官庁統計個票を相互に医療機関レベル、および介護施設レベルでの連結を行うとともに、それを用いた実証分析を各研究者が執り行う。特に以下の分析が行われた。①医療・介護施設統計のリンケージ状況(体系)の整理、②介護施設における看取りと病院搬送の現状、③在宅医療の普及とその効果に関する分析、④介護・医療施設における医療/介護保険の請求状況、⑤生活保護患者における医療・介護保険の利用、⑥介護認定情報を用いた認定プロセスと介護利用の解析、⑦医療設備の地域における利用状況の研究、⑧地域医療構想の達成状況に関する評価方法の検証。
結果と考察
まず、本年度はデータの取得に大幅に時間を要したため、分析結果についても確定的なものは得られていない段階である。ただし、途中段階の分析であっても、本年度の成果として①地域レベルの看取り場所の決定要因を探索する包括的なデータセットを作成したこと、②介護給付費実態調査の利用促進が行われたこと、③患者調査と受領行動調査のリンケージを通して満足度の調査について大規模なデータセットが作成されたことなどがあげられる。次年度はさらに介護給付費実態調査を用いた分析(分析②、③)を進めるとともに、個人単位でのリンケージを進める必要があることも示唆された。特に介護給付費実態調査と人口動態調査の死亡票はリンケージが可能であることから、現在分析テーマとして挙がっていないさまざまなテーマが解析可能になることが期待される。また、本研究班では病院行動に関する詳細な知見がえられた(分析⑦)。MRIの撮影に関しては今後NDBなどの統計表を利用して、同一の疾患に対する利用方法の相違などを解析する必要があるが、方法論として十分に学術誌の水準に堪えうるものが本年度既に検討されている。
結論
本研究班の初年度の分析結果により、第一にリンケージ・データの政策課題への応用可能性について一定の示唆が得られたと考えられる。次年度では、学会発表等を活用し、異なる研究者からの意見も収集するとともに、様々な発表機会を設けデータの有用性について広くアピールしていく必要もあるだろう。
公開日・更新日
公開日
2019-12-12
更新日
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