国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究

文献情報

文献番号
201801007A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 副所長)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、先進諸国のみならず、新興国においても「ポスト人口転換」とも呼ばれる低出生・低死亡の継続や、国際人口移動の活発化など、国際的な人口動向が変化する一方、国内では継続的な低出生力や人口減少と人口の大都市集中、高齢期の長期化やこれに伴う生活・居住形態の多様化等、少子化・高齢化に関する新たな動きが顕在化してきている。本研究では、このような人口や世帯の新潮流について、国際的・地域的視野を踏まえながら的確に捉えるとともに、国立社会保障・人口問題研究所が行う人口・世帯の将来推計の精度改善及びその応用を目的とした人口学的研究を行うものである。
研究方法
研究は、大きく分けて以下の3項目の課題領域ごとに進められる。
1.国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析
2.地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究:
3.将来推計を活用した政策的シミュレーション
なお、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な連携を図って研究を進める。
結果と考察
本研究は、①国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析、②地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究、③将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究の3領域に分けて進める。2年度は、①として、現代日本における家族介護の実施経験率に関する中高年縦断調査を用いた分析、②として、安定人口模型の固有関数解析、③として、外国人介護労働者社会保険加入シナリオの追加検討と移民女性の定住化の影響を考慮した将来人口シミュレーションについて、研究代表者が中心となり研究協力者の協力を得ながら研究を進めたほか、各研究分担者においても研究が遂行された。
結論
世帯規模分布を記述する線型変化比モデルは、現時点では汎用的とは言えず、変化比が直線状に分布しない場合の対処法が、今後の適用可能性にとって鍵となる。
介護分野人材の移動性向は全産業従事者と比較しても低いが、介護分野人材の増加は都道府県を超えた移動により1~3割程度支えられており、その最たるものが東京都である。首都圏、特に東京都は、自身の介護人材を含めた介護システムの供給を強化する取り組みが求められる
岩手・宮城・福島の3 県における東日本大震災前後の日本人の人口移動傾向の変化について分析を行った。近年、県全体ではいずれも転出超過が拡大しており、その要因としていわゆる「震災特需」の反動に加え、東京圏一極集中化の影響が示唆された。
都道府県別にみた外国人の自然動態について、1990 年から2015 年の期間を対象に分析した結果、いずれの都道府県においても外国人の寄与は限定的であるものの、外国人の国籍構成と地域分布の特徴が、その自然動態の地域差に反映されていることが確認された。
「日本の地域別将来推計人口(平成30 年推計)」の推計結果と整合的な出生数の推計、ならびに同推計の生残率仮定値と整合的な将来の死亡数の推計を試みた。
データが安定的な全国の出生動向に基づく将来仮定値を都道府県の出生動向に適用する有効性が示された。子ども女性比・死亡・移動遡及法による出生数との違いは、母親世代の人口構造の影響の評価に活用できることが期待できる。
都道府県を標準とした市区町村別間接標準化出生率は、比較的少ない情報で妥当な市区町村指標を算出できる利点がある。都道府県別の将来年齢別出生率の仮定値があれば、それにもとづき将来の市区町村別出生率や出生数の推計に活用できる。また、配偶関係構造の違いによらない夫婦出生力指数の算出は、夫婦の意思決定に影響すると思われる市区町村の子育て環境の影響評価などに活用できることが期待できる。
無子女性の動向について、1960年代以降の出生コーホートで無子割合が大きく上昇していること、若年世代では未婚による無子女性が拡大していること、未婚無子は低収入・交際相手の不在の影響が大きいこと、そして有配偶無子は初婚年齢の高さと子どもへの親和性の低さと強く相関することが明らかになった。
1940年代後半から1950年代前半の出生コーホートが50台から60代にかけての11年間で家族介護を経験する確率は女性で40%前後、男性で30%程度と推定された。
 第二世代以降人口の将来シミュレーションの結果、移民女性の日本到着時の出生水準が将来に向けて上昇していったとしても、その後に同化過程を通じて出生力水準が日本人女性に収束してしまう場合、将来人口の成長率はそれほど大きいものとはならないことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-11-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201801007Z