文献情報
文献番号
201725021A
報告書区分
総括
研究課題名
ラット前がん病変の生物学的特徴に基づいた新たな肝発がんバイオマーカーの探索
課題番号
H27-化学-若手-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,393,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質の迅速なリスク評価を実現するうえで、動物個体を用いたハザード評価の迅速化・効率化は大変重要である。胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P) 陽性細胞巣の定量的解析は、ラットにおける化学物質の肝発がん性予測に非常に有効な手段である。我々はこれまでに、diethylnitrosamine(DEN)誘発GST-P陽性細胞巣はDEN休薬後に増加するのに対して、furan誘発のGST-P陽性細胞巣はfuran休薬後に減少し、それは大型のGST-P陽性細胞巣の減少が大きく寄与していることを見出した。本研究では、発がん性評価のために用いるGST-P陽性細胞巣定量化解析の精緻化を目的として、動態の異なるGST-P陽性細胞巣を峻別するためのバイオマーカーを探索する。
研究方法
6週齢の雄性F344ラットにDENを10 ppmの濃度で13週間飲水投与またはfuranを8 mg/kg体重/日の用量で1日1回、週5日間の頻度で13週間強制経口投与した。投与終了後、肝臓を摘出し、それぞれのGST-P陽性細胞巣ならびにGST-P陰性領域をレーザーマイクロダイセクション法により採取した。採取したサンプルからtotal RNAを抽出し、RNA増幅を行った後に網羅的遺伝子発現解析を実施した。また、DENまたはfuranと異なる肝発がん物質におけるGST-P陽性細胞巣の休薬後の動態を検討する目的で、雄性F344ラットに2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinoline(IQ)を13週間投与した後に7週間休薬させ、IQ誘発GST-P陽性細胞巣の定量的解析を実施した。
結果と考察
網羅的遺伝子発現解析の精査を行った結果、DEN誘発GST-P陽性細胞巣のみで発現上昇した遺伝子として11遺伝子が、furan誘発GST-P陽性細胞巣のみで発現上昇した遺伝子として57遺伝子が抽出された。また、DEN誘発GST-P陽性細胞巣のみで発現低下した遺伝子として20遺伝子が、furan誘発GST-P陽性細胞巣のみで発現低下した遺伝子として98遺伝子が抽出され、これら分子の中にGST-P陽性細胞巣の異なる動態を規定している分子が含まれている可能性が考えられた。IQ誘発GST-P陽性細胞巣の休薬後動態を検討した結果、休薬後の減少は認められなかったことから休薬後に減少するGST-P陽性細胞巣はfuran誘発GST-P陽性細胞巣の特徴である可能性が考えられた。
結論
動態の異なるGST-P陽性細胞巣の峻別による発がん性評価の精緻化を目的に、DEN誘発GST-P陽性細胞巣とfuran誘発のGST-P陽性細胞巣の網羅的遺伝子発現解析を精査した。その結果、それぞれのGST-P陽性細胞巣で特異的に発現変動した遺伝子群が認められ、これらの中にGST-P陽性細胞巣の異なる動態を規定している分子が含まれている可能性が考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-06-04
更新日
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