文献情報
文献番号
201724022A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの品質確保のための国家検定に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 篤(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究分担者(所属機関)
- 倉根 一郎(国立感染症研究所 所長)
- 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 阿戸 学(国立感染症研究所 感染制御部)
- 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
- 柊元 巌(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 森 茂太郎(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 落合 雅樹(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
特別に注意を要する医薬品としてワクチン等の生物学的製剤には国家検定が設けられている。この制度は我が国だけが実施しているものではなく、国際的にも各国の規制当局が行うべきものとされている。しかし、実施内容は様々である。そこで、1.国家検定制度に係る国際的動向を収集して世界から隔たることが無いようにしつつ、国家検定の基本的要件である2.製造・試験記録等要約書(SLP)審査を未導入の製剤に導入すること及び、新しい方式として3.製品のリスク評価に基づく国家検定の最適化の検討を行い、更に4.精度向上を目指した個別の検定試験方法の改良、開発を目指した。
研究方法
1.国際的動向を捉えるべく国際会議に積極的に参加し、WHO関係者にも訪日してもらい国際シンポジウムを開催した。2.血漿分画製剤メーカーとワーキンググループを作り、メーカー共通のSLP基本様式案を検討した。非予防的細菌製剤及び抗毒素製剤についてもメーカーと協議を行い、導入の実現性を検討した。3.昨年度、諸外国の品質リスク評価方法を参考に日本版評価項目を設定し、製剤担当室の協力を得てSLP審査を実施している製品の品質リスク評価を実施した。しかし、評価者によって重要度の考え方に差が大きく現れ、製品間比較を困難にしていたので、その時の反省を基に今年度は、担当者に標準の考え方を周知し、製品間の品質リスクの評価を実施した。4.国家検定の個別の試験項目として不活化狂犬病ワクチン、不活化ポリオワクチン等の検討を行った。
結果と考察
WHOはロットリリース手順の国際化、証明制度の共通化を推進している。そこで、国際的潮流を把握するために、1.WHO関係者を招聘して国際シンポジウムを開催し、WHOの方針の確認、日本の現状と取り組みを紹介し、双方の理解を深めることができた。また、2.国家検定の基本的要件であるSLP審査をワクチン以外の生物学的製剤に導入するため、血液製剤については血液製剤に特有の連産状況を把握し、メーカー共通の枠組みとなるSLP基本様式案を作成した。非予防的細菌製剤及び抗毒素製剤についてはメーカー側もワクチンのSLP作成の経験があり、導入についての障害が大きくないことが判り、順次SLP審査の導入に向けて準備を進めることになった。我が国は検定基準に定められたすべての試験をすべてのロットに対して実施している。今や国家検定の試験合格率は99%を超えており、過去の国家試験実績等に応じて試験項目の削減を行っている。しかし、試験項目の削減には自ずと限界がある。そこで、3.新たなシステムの導入見据えて、製品毎の品質リスク評価を一定期間ごとに行い、リスクが低いと認められた製品に対しては、試験頻度を減らす方式、あるいは試験項目の一部を免除する方式を導入し、メーカーの品質向上努力を国家検定に反映させることが可能なシステムの構築を検討した。ワクチンの製品毎の品質リスクを製剤担当室にアンケート形式で調査した結果、製品の品質リスクは一様ではなく、リスクの低いものから高いものまであることが客観的に明らかになった。この結果、一律に国家検定を行うよりも、リスクに応じて試験頻度や試験項目を設定するシステムの導入は妥当性があると考えられた。国家検定に用いている試験の精度向上を目指して4.実験動物を用いる不活化狂犬病ワクチンの力価試験への人道的エンドポイントの導入及び不活化試験のin vitro代替試験法の簡便化、不活化ポリオワクチンの力価試験では抗原含量試験の確立等の成果が得られた。
結論
1.WHOはロットリリース手順の国際化、証明制度の共通化がワクチンの価格の抑制と品質確保並びに迅速供給に重要と考えて推進している。ワクチンの品質管理に関するWHO等世界の動きを捉え、我が国の国家検定制度の国際的視点による見直しが必要である。
2.ワクチン以外の生物学的製剤の国家検定にSLP審査を導入することを検討した。血液製剤については血漿分画製剤メーカーと協力体制を築き共通の枠組みとなるSLP基本様式案を作成し、非予防的細菌製剤及び抗毒素製剤については製剤メーカーと感染研の協議を開始し、SLP審査導入に向けて一定の道筋をつけた。
3.ワクチンに対する品質リスク評価を試行し、ワクチン製品のタイプと総合的リスクスコアの間に品質等のリスクを反映したと考えられる一定の関連性が認められた。ワクチンの品質リスクは一様ではなく、リスクの低いものから高いものまであることが客観的に明らかになった。一律に国家検定を行うのでなく、製品のリスクに応じて試験頻度や試験項目を設定する考え方は妥当であると考えられた。
4.実験動物を使用する国家検定試験を中心に試験法の改良、代替試験の開発と評価を行った。その結果、不活化狂犬病ワクチンの力価試験への人道的エンドポイントの導入等の成果が得られた。
2.ワクチン以外の生物学的製剤の国家検定にSLP審査を導入することを検討した。血液製剤については血漿分画製剤メーカーと協力体制を築き共通の枠組みとなるSLP基本様式案を作成し、非予防的細菌製剤及び抗毒素製剤については製剤メーカーと感染研の協議を開始し、SLP審査導入に向けて一定の道筋をつけた。
3.ワクチンに対する品質リスク評価を試行し、ワクチン製品のタイプと総合的リスクスコアの間に品質等のリスクを反映したと考えられる一定の関連性が認められた。ワクチンの品質リスクは一様ではなく、リスクの低いものから高いものまであることが客観的に明らかになった。一律に国家検定を行うのでなく、製品のリスクに応じて試験頻度や試験項目を設定する考え方は妥当であると考えられた。
4.実験動物を使用する国家検定試験を中心に試験法の改良、代替試験の開発と評価を行った。その結果、不活化狂犬病ワクチンの力価試験への人道的エンドポイントの導入等の成果が得られた。
公開日・更新日
公開日
2018-06-21
更新日
-