薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究

文献情報

文献番号
201724010A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究
課題番号
H28-医薬-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は、地域包括ケアシステムによる医療・介護の総合的な展開において質が高く良質な医療提供体制を構築することを、政策として推進しているが、この枠組みでがん医療を提供していくには、病院だけでなく、外来・在宅医療をつなぐ薬局において、高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師による高度な薬学的ニーズへの対応を図る機能(いわゆる高度薬学管理機能)が発揮されることが不可欠である。この高度薬学管理機能は平成27年10月23日に厚生労働省から公表された「患者のための薬局ビジョン」においても患者等のニーズに応じて強化・充実すべき機能として明記されている。 本研究は、平成27年度の厚生労働科学研究「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究」(主任研究者:安原眞人)において作成されたPBPMのガイドラインをもとに、PBPMをがん外来化学療法に適用するための標準手順を確立し、その効果を検証するとともに、普及のための人材養成を目指すものである。
研究方法
日本医療薬学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会の協力を得て組織した研究班により、PBPMに基づく経口抗がん薬治療管理の効果を実証する調査の研究プロトコールに従い、ティーエスワンもしくはゼローダを処方された患者を対象に研究登録を行った。経口抗がん薬の院外処方箋を発行された登録患者の来局時から次回受診日までの間に、薬局薬剤師が患者宅に電話しプロトコールで定めたチェック項目について確認した結果をトレーシングレポートとして病院にフィードバックした。研究期間中に回収されたトレーシングレポートを介入内容により分類し、患者のがん治療に及ぼす影響を評価した。調査研究に関わった患者、医師、薬剤師に無記名アンケートを実施し、薬剤師の電話によるフォローアップについての評価を尋ねた。連携を担う病院・薬局薬剤師の相互理解を図る目的で前年度に製作・配布したDVDについて、全国の薬剤師会・病院薬剤師会を対象にアンケート調査を行った。
結果と考察
平成30年2月21日までに129名の患者が登録された。登録患者に対し、薬局薬剤師により428件のトレーシングレポートが作成され、テレフォンフォローアップを契機とする緊急入院1件、予定外受診4名5件、抗がん薬の休薬9件、テレフォンフォローアップに基づく処方変更が23件あった。これらは、副作用の重篤化を回避し患者の安全に直接寄与したものと考えられる。患者、医師、薬剤師のアンケート結果の解析からも、医療機関と薬局が連携したプロトコールに基づく経口抗がん薬治療管理は、副作用の早期発見、患者の安全・安心、医師の負担軽減などに役立つことが示された。また、連携を担う薬剤師の教育資材として作製・配布したDVDについて、各都道府県の薬剤師会・病院薬剤師会にアンケートを実施した結果、DVDの利用に肯定的な回答が得られた。さらに、平成30年2月11日に公開シンポジウムを開催し、研究班で策定したPBPMに基づく医療機関と薬局の連携による外来がん化学療法の標準手順を公開し、研究成果を報告した。
結論
プロトコールに基づくかかりつけ薬剤師・薬局と病院の連携は、副作用の早期発見、患者の安全・安心、医師の負担軽減などに役立つことが示され、今後のがん医療の質の改善に寄与するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201724010B
報告書区分
総合
研究課題名
薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究
課題番号
H28-医薬-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬分業が普及し、がん外来化学療法における抗がん薬や支持療法薬が院外処方となり、薬局で服薬指導を行う場合が多くなっているが、治療医療機関と薬局の連携についてはまだ十分とはいえない。近年、提唱されている「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)は、医療機関と薬局の連携にも効果的な枠組みである。本研究では、PBPMをがん外来化学療法に適用するための標準手順を確立し、その効果を検証するとともに、普及のための人材養成を目指した。
研究方法
医療機関と薬局が連携した経口抗がん薬治療管理を実施するために、病院と薬局それぞれにテレフォンフォローアップの手順書、副作用確認の手引き書、トレーシングレポート書式、患者情報提供用紙、お薬サポート予約票などを作成し、標準手順を整備した。S-1とゼローダの2品目を対象にプロトコールに基づく経口抗がん薬治療管理の効果を実証する調査の研究計画を作成し、倫理委員会の承認後、平成30年2月21日までに129例の患者が登録された。登録患者に対するテレフォンフォローアップによるトレーシングレポートの解析と、患者・医師・薬剤師に対するアンケート結果から、PBPMによる薬局と医療機関の連携の有効性を評価した。また、医療機関と薬局の薬剤師の相互理解を深め、相互の連携を担う薬剤師の養成に向けて、病院におけるがん患者の診断・医療・指導業務と薬局における業務課題を解説した2枚のDVDを作成した。平成29年3月に全国47都道府県の薬剤師会及び病院薬剤師会にDVDを配布し、約5か月後にアンケート調査を実施した。
結果と考察
PBPMによる経口抗がん薬治療管理の効果を実証する調査研究では129名の患者が登録され、薬局から428件のトレーシングレポートが報告された。テレフォンフォローアップを契機とする緊急入院が1件、予定外受診が4名5件、抗がん薬の休薬が9名あった。テレフォンフォローアップに基づく医師への処方提案が49件あり、23件(47%)が処方に反映されることとなった。テレフォンフォローアップによる緊急入院、予定外受診、抗がん薬の休薬、処方変更の計38件は、副作用の重篤化を回避し患者の安全に直接寄与したものと考えられる。患者・医師・薬剤師のアンケートでは、プロトコールに基づき医療機関と薬局が連携した経口抗がん薬治療管理が患者の安心感や医師の負担軽減に役立つことが明らかとなった。PBPMによる経口抗がん薬治療管理を担う薬剤師の教育用資材としてDVDを作製し、各都道府県の薬剤師会・病院薬剤師会に配布後のアンケート結果では、DVDの薬剤師研修への利用に肯定的な回答が得られた。
結論
本研究は、医療機関と薬局との薬薬連携を目的としたものであるが、その背景には、薬局と医療機関の間で相互理解が十分とはいえない現状がある。本研究で製作した医療機関と薬局の業務の課題を解説したDVDに対して、全国の薬剤師会等で肯定的な意見が多かったことから、相互理解を深めるために本DVDの活用が期待される。本研究で整備した経口抗がん薬治療管理のプロトコールは、がん患者の診療を行う医療機関の近隣の薬局のみならず、地域で様々な医療機関からの処方箋を受けている薬局でもPBPMとして活用可能なものである。プロトコールにより、対応すべき事項、判断のための考え方などが共有されることで、患者のために対応すべき業務の標準化や効率的な服薬指導等にもつながる。PBPMを活用し、プロトコールに基づくかかりつけ薬剤師・薬局と医療機関との連携を行うことにより、副作用の早期発見、患者の安心・安全、医師の負担軽減など、がん医療の質の改善に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201724010C

収支報告書

文献番号
201724010Z