薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究

文献情報

文献番号
201724003A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究
課題番号
H29-医薬-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
13,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国の一般住民における医薬品使用を含む薬物使用の最新状況を把握するとともに、経年的な変化をモニタリングすることである。得られた知見は、各種薬物乱用防止対策の立案・評価を講じる上での基礎資料として供する。1995年より隔年で実施されているわが国で唯一の薬物使用に関するモニタリング調査であり、今回で12回目の実施となった。
研究方法
対象は、15歳から64歳までの一般住民5,000名である。住民基本台帳を閲覧し、層化二段無作為抽出法(調査地点:250)によって対象者を選択した。事前にトレーニングを受けた調査員が、対象者宅を戸別訪問し、調査説明および調査用紙の配布・回収を行った。調査は、無記名自記式の質問票調査によって行われ、個人を特定する情報は収集していない。調査期間は2017年9~10月であった。調査実施にあたり、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
計2,905名から調査票を回収した(回収率58.1%)。このうち2899名(女性51.4%、平均年齢43.2歳)が有効回答であり、以下の知見を得た。
1. 薬物使用の生涯経験率は、大麻1.4%、有機溶剤1.1%、覚せい剤0.5%、コカイン0.3%、危険ドラッグ0.2%であった。
2. 大麻の生涯経験率が上昇し、大麻の生涯経験率はモニタリング期間中で最も高い値となった(2009年と同率)。推計使用人口は、約133万人であった。大麻使用に誘われる機会(関東地区で高い)が増加したとともに、大麻使用を容認する考えを持つ者も増加していた(10歳代~30歳代が高い)。
3. かつて生涯経験率が最も高かった有機溶剤は大幅に減少し、モニタリング期間中で最も低い値となった。推計使用人口は、約104万人であった。
4. 危険ドラッグの生涯経験率は、0.4%(2013年)、0.3%(2015年)、0.2%(2017年)と減少していた。推計使用人口は、約40万人(2013年)、約31万人(2015年)、約22万人(2017年)と減少した。危険ドラッグの有害性に対する周知率や、指定薬物制度に対する周知率は、2015年とほぼ横這いであった。
5. 覚せい剤の生涯経験率は、横這いで推移していた。推計使用人口は、約50万人であった。
6. 薬物使用経験を持たない者に「薬物使用しない理由」を尋ねたところ、「薬物に興味がないから:77.2%」という回答が最も多く、「身体や精神に悪影響があるから:65.7%」、「法律で禁止されているから:64.8%」と続いた。
7. 鎮痛薬の習慣的使用者(週3回以上)は2.8%に上昇し、モニタリング期間で最も高い値となった。特に女性で上昇傾向がみられた(男性2.0%、女性3.6%)。精神安定薬および睡眠薬の習慣的使用者は横這いで推移していた。
8. 過去30日間のBinge drinking(暴飲経験)は、全体の36.9%にみられ、女性(25.4%)に比べて男性(49.1%)で高かった。
9. 過去30日間の栄養ドリンク(エナジードリンク)摂取率は38.3%であった。摂取率は男性(43.9%)、30代(46.5%)で高かった。過去30日間のカフェイン製剤摂取率は14.6%であった。性別や年代間では大きな違いはみられなかった。
結論
一般住民を対象とした全国調査を通じて、薬物使用の最新動向を確認することができた。今回の調査では大麻使用の増加と有機溶剤使用の減少が目立った。大麻使用の生涯経験率や推計使用人口の増加に加え、大麻使用に誘われる経験を持つ人口も増加していた。法務省が発行する犯罪白書によれば、大麻取締法違反の検挙者数も増加している。これらの結果を踏まえると、これまで使用者が最も多かった有機溶剤に変わり、大麻が国内で最も乱用されている薬物になったといえる。この増加が一時的なものであるか、あるいは大麻を中心とする欧米型への構造的な変化といえるのかは、今後もモニタリングを継続しながら判断していく必要がある。10歳代から30歳代において大麻使用を容認する考えを持つ者が増加していることを踏まえると、若年層が受け止めやすいスタイルやメッセージで、大麻使用に関する予防啓発を進めていくことが必要と示唆される。一方、危険ドラッグについては、生涯経験率、推計使用人口の減少がみられていることから、「危険ドラッグ問題」は終息に向かっていると判断できる。覚せい剤については、特に変化がなく、モニタリングを継続していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201724003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
13,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 322,033円
人件費・謝金 24,000円
旅費 7,629円
その他 13,236,313円
間接経費 410,000円
合計 13,999,975円

備考

備考
超過交付となった金額(1000円)を返納したため。

公開日・更新日

公開日
2019-04-15
更新日
-