文献情報
文献番号
201723014A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の分析法に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究分担者(所属機関)
- 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
- 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
- 菊地 博之(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品中に残留する農薬等の分析法開発に資する以下の5課題について実施する。29年度は課題3を除く4課題について実施した。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査(28~29年度実施)
欧米等の残留農薬等の分析法開発の方針及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
極めて極性が高いため分析が困難なアミノグリコシド系抗生物質の畜水産物を対象とした、簡易・迅速、高精度かつ高感度な分析法を開発する。
課題3:試料調製方法の検討(28年度のみ実施)
試料量を減らす事により分析時間の短縮が期待できる事から、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにする事を目的とした。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施)
スクリーニング分析法のガイドラインを作成するため、海外のガイドラインについて調査するとともに、偽陰性・偽陽性が少ないスクリーニング分析法とするための要件について分析データを基に明らかにし、スクリーニング分析法の性能評価方法及び性能基準を確立する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
食品中の残留抗生物質の試験は、バイオアッセイ法からLC-MS/MS法等の機器分析への移行が進んでいるが、低コストで簡便であるなどの理由から、バイオアッセイ法が現在も汎用されている。そこで、バイオアッセイ法及びLC-MS/MS法の特性を踏まえ、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案する。
課題1:欧米等における残留農薬等の公定試験法の開発手法の調査(28~29年度実施)
欧米等の残留農薬等の分析法開発の方針及び評価基準等について調査し、技術的な観点から、日本の試験法開発への適用の必要性などについてまとめる。
課題2:食品中アミノグリコシド系抗生物質分析法の開発
極めて極性が高いため分析が困難なアミノグリコシド系抗生物質の畜水産物を対象とした、簡易・迅速、高精度かつ高感度な分析法を開発する。
課題3:試料調製方法の検討(28年度のみ実施)
試料量を減らす事により分析時間の短縮が期待できる事から、試料量と分析値のばらつきの関係を求め、精確な分析値を得るのに必要な最小試料量を明らかにする事を目的とした。
課題4:スクリーニング分析法のガイドライン策定のための基礎的検討(29~30年度実施)
スクリーニング分析法のガイドラインを作成するため、海外のガイドラインについて調査するとともに、偽陰性・偽陽性が少ないスクリーニング分析法とするための要件について分析データを基に明らかにし、スクリーニング分析法の性能評価方法及び性能基準を確立する。
課題5:抗生物質の系統的分析法に関する評価研究
食品中の残留抗生物質の試験は、バイオアッセイ法からLC-MS/MS法等の機器分析への移行が進んでいるが、低コストで簡便であるなどの理由から、バイオアッセイ法が現在も汎用されている。そこで、バイオアッセイ法及びLC-MS/MS法の特性を踏まえ、効率的かつ国際的な整合性を考慮した抗生物質の試験体系・試験法を提案する。
研究方法
課題1:欧米等の動物用医薬品及び畜産物の残留分析法開発に関するガイドライン等について調査し、分析法の開発方針及び評価基準についてまとめた。
課題2:牛の筋肉・肝臓・乳及び鶏卵を用いて、種々の抽出溶媒及び添加剤を用いた際の操作性及び回収率について検討した。
課題4:諸外国の残留農薬等のスクリーニング分析に関するガイドラインを調査した。また、130農薬を用いて迅速且つ簡便なスクリーニング分析法を検討した。
課題5:牛の筋肉・肝臓を用いて、30種の抗生物質を対象に基準値濃度で、バイオアッセイ法(簡易検査法)とLC-MS/MS法とを比較した。
課題2:牛の筋肉・肝臓・乳及び鶏卵を用いて、種々の抽出溶媒及び添加剤を用いた際の操作性及び回収率について検討した。
課題4:諸外国の残留農薬等のスクリーニング分析に関するガイドラインを調査した。また、130農薬を用いて迅速且つ簡便なスクリーニング分析法を検討した。
課題5:牛の筋肉・肝臓を用いて、30種の抗生物質を対象に基準値濃度で、バイオアッセイ法(簡易検査法)とLC-MS/MS法とを比較した。
結果と考察
課題1:試験法開発に関しては、動物用医薬品も農薬と同様な考え方を適用できると思われる。分析法の抽出効率は、真の残留濃度を測定するための最も重要な要素である事から、多くのガイドライン等において、抽出法(及び抽出効率)に関する指針が示されていた。分析法の評価基準については、各ガイドライン等の評価基準を整理し、昨年度の農薬での調査結果と合わせてまとめた。
課題2:水及びメタノール(1:1)混液を抽出溶媒に用い、タンパク質等を沈殿させるための添加剤としてギ酸アンモニウム及び塩酸を使用する事で、牛の筋肉・肝臓・乳及び鶏卵から、アミノグリコシド系抗生物質を効率的に抽出可能である事が推察された。
課題4:スクリーニング分析の目的は、基準値超過の可能性がない検体をふるい分ける事であるため、偽陽性が少なく、偽陰性のない「閾値」を設定する必要があると考えられた。また、シリカモノリススピンカラム及びLC-TOF-MSを用いた迅速且つ簡便なスクリーニング分析法を検討した。
課題5:バイオアッセイ法とLC-MS/MS法の結果を比較したところ、バイオアッセイ法においては、多くの抗生物質で偽陰性となる可能性が極めて高い事が示された。
課題2:水及びメタノール(1:1)混液を抽出溶媒に用い、タンパク質等を沈殿させるための添加剤としてギ酸アンモニウム及び塩酸を使用する事で、牛の筋肉・肝臓・乳及び鶏卵から、アミノグリコシド系抗生物質を効率的に抽出可能である事が推察された。
課題4:スクリーニング分析の目的は、基準値超過の可能性がない検体をふるい分ける事であるため、偽陽性が少なく、偽陰性のない「閾値」を設定する必要があると考えられた。また、シリカモノリススピンカラム及びLC-TOF-MSを用いた迅速且つ簡便なスクリーニング分析法を検討した。
課題5:バイオアッセイ法とLC-MS/MS法の結果を比較したところ、バイオアッセイ法においては、多くの抗生物質で偽陰性となる可能性が極めて高い事が示された。
結論
課題1:分析法の適切な抽出効率を確保するためには、バリデーションされた抽出法は変更せずに実施する事が求められる。抽出法を変更する場合には、抽出効率の慎重な評価が必要である。分析法の性能評価パラメータは、国・機関により概ね同じであったが、目標値は異なる場合があるため、国際的整合性を考慮して適切に設定する必要があると思われた。
課題2:抽出溶媒に水及びメタノール(1:1)混液を用い、添加剤としてギ酸アンモニウム及び塩酸を用いる事で、アミノグリコシド系抗生物質を畜産物から効率的に抽出可能である事が推察された。
課題4:スクリーニング分析法を確立するためには、適切な「閾値」を設定する方法やその評価方法を検討する必要がある。また、スクリーニング分析法の要件を検討するために、迅速かつ簡便なシリカモノリススピンカラム及びLC-TOF-MSを用いた新規スクリーニング分析法を確立した。
課題5:バイオアッセイ法では、多くの抗生物質で偽陰性と判定される可能性が極めて高い事から、スクリーニング検査として用いる場合には、検出感度等の確認を十分に行った上で、運用すべきであると考えられた。
課題2:抽出溶媒に水及びメタノール(1:1)混液を用い、添加剤としてギ酸アンモニウム及び塩酸を用いる事で、アミノグリコシド系抗生物質を畜産物から効率的に抽出可能である事が推察された。
課題4:スクリーニング分析法を確立するためには、適切な「閾値」を設定する方法やその評価方法を検討する必要がある。また、スクリーニング分析法の要件を検討するために、迅速かつ簡便なシリカモノリススピンカラム及びLC-TOF-MSを用いた新規スクリーニング分析法を確立した。
課題5:バイオアッセイ法では、多くの抗生物質で偽陰性と判定される可能性が極めて高い事から、スクリーニング検査として用いる場合には、検出感度等の確認を十分に行った上で、運用すべきであると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-24
更新日
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