国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究

文献情報

文献番号
201723005A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究
課題番号
H27-食品-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(岩手大学 農学部共同獣医学科 )
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 司(公益財団法人日本乳業技術協会)
  • 平井 昭彦(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動   研究代表者  寺嶋 淳   国立医薬品食品衛生研究所( 平成29年4月1日~29年9月30日)  → 岩手大学(平成29年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、乳等省令における試験法に関連する情報収集と改正が必要と考えられる試験法について検討し、最適な試験法の策定の可能性も含めて、将来的な展望を示すことを目的とする。特に、海外の乳及び乳製品に関する試験法を規定する成分規格に関する情報を収集し、乳等省令と比較することで国際的にも対応可能な試験法の確立を目指す。
研究方法
1. EU及び米国における乳及び乳製品の試験法と乳等省令による試験法の比較
 乳等省令の別表二 乳等一般の成分規格及び製造の方法の基準のうち、(七)乳等の成分規格の試験法で定められる乳及び乳製品の試験法に該当する、EU及び米国の最新の試験法について文献調査・整理を行い、取りまとめた。
乳及び乳製品を含む食品の成分規格と試験法について、EUではCOMMISSION REGULATION (EC) No 273/2008 of 5 March 2008 laying down detailed rules for the application of Council Regulation (EC) No 1255/1999 as regards methods for the analysis and quality evaluation of milk and milk productsが定められており、試験法はISO試験法を使用している。また、米国ではCode of Federal Regulation(CFR;連邦行政規則集)CFR TITLE 21 Food and Drugs CHAPTER I FOOD AND DRUG ADMINISTRATION, DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES SUBCHAPTER B—FOOD FOR HUMAN CONSUMPTIONを定めており、乳及び乳製品については、131. MILK AND CREAM、133. CHEESES AND RELATED CHEESE PRODUCTS、135. FROZEN DESSERTSに記載されている。また、CFRでは、試験法として、Official Methods of Analysis of AOAC International(AOAC)が定める試験法(AOAC法)を利用することが記載されている。

2. 乳等省令で規定される細菌数の直接個体鏡検法(ブリード法)の代替染色法の検討
 今年度は、ブロードハーストパーレイ染色液(B2)、その改良染色液であるBPV染色液(B1, ベッセル【獣医環境衛生研究所】)およびブロードハースト・パーレイ改良染色液(公益社団法人 北海道酪農検定検査協会生乳検査部)のニューマン染色液(N,関東化学)との同等性を検証するために、4施設によるコラボレイティブスタディを行った。2017年に関東地方の生乳販売農業協同組合連合会生乳検査所で検査した後に冷蔵で当センターに輸送された生乳2検体を供試した。
結果と考察
1. 海外における乳及び乳製品の試験法と乳等省令による試験法の比較
 今年度調査した乳等省令の試験項目に対応するISO試験法とAOAC法は、表 3 1のとおりである。なお、平成28年度に比較を行った試験法については、網掛けとし、掲載を割愛している。本年度に実施した項目の詳細については分担研究の報告を参照のこと。

2. 乳等省令で規定される細菌数の直接個体鏡検法(ブリード法)の代替染色法の検討
ブリード法鏡検時の各種染色液の染色像では、Nは初心者でも安定した染色が可能であり、鏡検時に判別しやすい印象であった。B1、B3は背景がピンク色、細菌および体細胞は青色に染色され、色が異なり判別しやすく、また色彩も判別しやすい印象であった。B2はB1と同じように背景と対象物の色が異なり判別しやすい一方、背景が濃く染まる場合があり、濃い部分では測定がしづらく、判別しにくい印象であった。
コラボレイティブスタディにより、B1、B2、B3いずれの染色液においても、求められる細菌数および体細胞数は試料1、2ともいずれも標本のばらつきの範囲内に含まれ、染色液Nによって得られる数値と同等であると考えられた。
結論
本年度実施したアイスクリーム類の乳脂肪分、濃縮乳・無糖練乳の乳固形分、濃縮乳・無糖練乳の乳脂肪分、加糖練乳の乳固形分、加糖練乳の乳脂肪分の試験法における測定結果のわずかな違いは、乳等省令における試験法の精度や測定原理の違いによるものであることが明らかとなった。今後は、国際的な整合性を持ち現行法の長所も取り込みうる試験法の検討が必要であろう。

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201723005B
報告書区分
総合
研究課題名
国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の試験法の研究
課題番号
H27-食品-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(岩手大学 農学部共同獣医学科 )
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 司(公益財団法人日本乳業技術協会)
  • 平井 昭彦(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動   研究代表者  寺嶋 淳   国立医薬品食品衛生研究所( 平成29年4月1日~29年9月30日)  → 岩手大学(平成29年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、乳等省令における試験法に関連する情報収集と修正が必要と考えられる試験法について検討し、最適な試験法の策定の可能性も含めて、将来的な展望を示すことを目的とする。特に、海外の乳及び乳製品に関する試験法を規定する成分規格に関する情報を収集し、乳等省令と比較することで国際的にも対応可能な試験法の確立を目指す。
研究方法
1. 海外における乳及び乳製品の成分規格及び試験法
 乳等省令で定められる乳及び乳製品の成分規格に関して、米国、EU、オーストラリア及びニュージーランドにおける乳及び乳製品の定義(範囲)、成分規格、試験項目等について情報収集を行った。
2. 乳等省令で規定される乳及び乳製品の試験法に関するアンケート調査
 国際酪農連盟日本国内委員会の理化学分析専門部会員12名及び微生物・衛生専門部会委員16名を対象として、乳等省令 別表二(七)乳等の成分規格の試験法について項目毎に自由記入形式により実施した。
3. 試験法の比較
 牛乳、クリームにおける乳脂肪分、脱脂粉乳における水分、アイスクリーム類の乳脂肪分、濃縮乳・無糖練乳の乳固形分、濃縮乳・無糖練乳の乳脂肪分、加糖練乳の乳固形分、加糖練乳の乳脂肪分について、米国及びEUにおける乳及び乳製品の試験法について情報を整理し、比較を行った。
4. 乳児用調整粉乳、液状ミルク及びLL(long-life)ミルクの規格基準
 米国、EU、オーストラリア/ニュージーランドにおける乳児用調整粉乳、液状ミルク及びLLミルクに関する規格基準について、情報収集を行った。
5.ブリード法に係る代替染色液の検討
生乳2検体を供試し染色液には、ニューマン染色液(N,関東化学)、BPV染色液(ベッセル【獣医環境衛生研究所】)、ブロードハーストパーレイ染色液(武藤化学)、ブロードハースト・パーレイ改良染色液(公益社団法人 北海道酪農検定検査協会生乳検査部)を使用した。
結果と考察
米国、EU、オーストラリア及びニュージーランドにおける乳及び乳製品の成分規格で規定される試験法と乳等省令における試験法のうち、牛乳、クリーム及び脱脂粉乳について、米国(OMA法)及びEU(ISO法)における試験法と対応する現行試験法が明らかになったことから、これらの検体を当該試験法に供試した。
アイスクリーム類は、乳脂肪分の試験法をOMA法と比較し、測定値はOMA法と比べて乳等省令法が低く、室間再現相対標準偏差は乳等省令法が大きかった。濃縮乳・無糖練乳の全固形分は、乳等省令法、ISO法、OMA法の990.19(AOAC990.19)及び990.20(AOAC990.20)の4法を比較し、測定値はAOAC990.19及びAOAC990.20がほぼ同じ値で高く、次いでISO法、乳等省令法という順であった。室間再現相対標準偏差は、大きい順にISO法、乳等省令法とAOAC990.19、AOAC990.20となった。濃縮乳・無糖練乳の乳脂肪分の測定値はISO法、OMA法に比べて乳等省令法が低く、室間再現相対標準偏差はISO法、OMA法に比べて乳等省令法が大きかった。加糖練乳の全固形分はISO法と比較し、測定値はISO法に比べて乳等省令法が高く、室間再現相対標準偏差は乳等省令法が大きかった。加糖練乳の乳脂肪分の測定値はISO法、OMA法に比べて乳等省令法が低く、室間再現相対標準偏差は大きい順に乳等省令、ISO法、OMA法であった。
乳等省令で指定される染色液であるニューマン染色液の代替染色液として、ブロードハーストパーレイ染色液の市販品であるBPV染色液およびブロードハースト・パーレイ改良染色液についても併せてニューマン染色液との同等性を検証し、ニューマン染色液の代替え染色液として使用可能と示唆された。
結論
アンケート結果を参考に選定した代表的な品目の試験法について、海外の試験法との比較により、乳等省令法の精度や測定原理の違い等による測定結果の違いが確認され、改正について検討が必要な器具や操作法が明らかになった。
本研究では、乳等省令の成分規格に対応する海外の成分規格の試験法を整理し、該当する試験法を対象として比較試験を実施したが、対応する成分規格がない品目も多く存在したことから、これらの品目の試験法の国際整合や乳等省令の成分規格と国際的な成分規格の整合性など、今後、成分規格と規格試験法を考えていく上での課題も明らかとなった。
乳等省令で指定される染色液であるニューマン染色液の代替染色液として、ブロードハーストパーレイ染色液を検討した。ブロードハーストパーレイ染色液の市販品であるBPV染色液およびブロードハースト・パーレイ改良染色液についても併せてニューマン染色液との同等性を検証し、ニューマン染色液の代替え染色液として使用可能と示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201723005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アンケート結果を参考に選定した代表的な品目の試験法について、海外の試験法との比較により、乳等省令法の精度や測定原理の違い等による測定結果の違いが確認され、改正について検討が必要な器具や操作法が明らかになった。乳等省令の成分規格に対応する海外の成分規格の試験法と乳等省令の比較試験では、対応する成分規格がない品目も多く存在したことから、これらの品目の試験法の国際整合や乳等省令の成分規格と国際的な成分規格の整合性など、今後、成分規格と規格試験法を考えていく上での課題も明らかとなった。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
米国、EU、オーストラリア/ニュージーランドにおける乳児用調整粉乳、液状ミルク及びLL(long-life)ミルクの規格基準が調査報告により明らかとなった。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-09-14
更新日
2022-06-10

収支報告書

文献番号
201723005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,396,000円
(2)補助金確定額
14,396,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,209,937円
人件費・謝金 0円
旅費 1,978,036円
その他 3,208,027円
間接経費 0円
合計 14,396,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-