文献情報
文献番号
201723003A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の確立と香料の安全性評価への応用に関する研究
課題番号
H27-食品-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 小川久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成28年度に引き続きgpt deltaラットを用いた短期遺伝毒性・発がん性包括的試験により、香気成分elemicin及び食品香料furfuryl acetateの一般毒性、遺伝毒性及び発がん性について包括的評価を実施した。また、様々な香料物質の基本骨格であるフランはラット肝発がん性を有することが知られており、フラン環を有するフラン誘導体に同様の肝発がん性が懸念されるため、遺伝毒性及び発がん性に関する包括的評価を実施した。
研究方法
Elemicinの評価では、既に実施した13週間経口曝露gpt deltaラット肝組織を用いて、in vitroおよびin vivoの遺伝毒性を検索した。Furfuryl acetateの評価では、6週齢の雄性F344系gpt deltaラットにfurfuryl acetateを0、60又は180 mg/kgの濃度で13週間強制経口投与した。フラン環を有するものの側鎖構造の異なる2-pentylfuran、3-(2-furyl)acrolein、2-furyl methyl ketoneおよびehyl 3-(2-furyl)propanoateの遺伝毒性及び発がん性をgpt deltaラットを用いた肝中期遺伝毒性・発がん性試験法(GPGモデル)を用いて評価した。
結果と考察
Elemicinの遺伝毒性評価では、LC-MS/MSによる網羅的DNA損傷解析により、elemicin 400 mg/kg群の肝DNAにおいて対照群に存在しない5つのスポットを検出した。MSスペクトラム解析の結果、それらはelemicinとdG、dA又はdCとの付加体であることが示された。in vivo変異原性の検索では、gpt変異体頻度(MFs)は100 mg/kg群から上昇傾向が認められ、400 mg/kg群において有意な高値を示した。以上から、elemicinはラット肝臓において特異的DNA付加体形成を起点とした突然変異誘発性を有することが明らかになった。Furfuryl acetateを13週間強制経口投与したF344系gpt deltaラットにおいて、血清生化学検査及び病理組織学的検索の結果、肝毒性を示唆する変化は認められなかった。また、gpt assay及びSpi- assayの結果,furfuryl acetate投与群におけるMFsの変化は何れの用量においても認められなかった。さらに、肝前がん病変マーカーであるGST-P陽性細胞巣の定量的解析の結果、その数及び面積に統計学的に有意な変化は見られなかったことから、furfuryl acetateのラット肝臓における毒性、遺伝毒性及び発がん性はないものと考えられた。細胞増殖活性の指標であるPCNA陽性細胞率は陽性対照であるestragole投与群では有意な高値を示したのに対し、いずれのフラン誘導体投与群においても統計学的に有意な変化は認められなかった。2-pentylfuranならびに2-furyl methyl ketoneの発がんプロモーションにおける細胞増殖活性の寄与は否定的であり、今後さらなる検討が必要であると考えられた。
結論
化学物質の一般毒性、遺伝毒性、発がん性の包括的評価が可能な本験法は、香料を含む食品添加物の迅速な安全性評価に有用な試験法と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-06-12
更新日
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