文献情報
文献番号
201721052A
報告書区分
総括
研究課題名
ニーズに基づいた専門医の養成に係る研究
課題番号
H29-医療-指定-012
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター(地域医療政策部門))
研究分担者(所属機関)
- 今中 雄一(京都大学大学院医学研究科 医療経済学分野)
- 小林 廉毅(東京大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
- 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生教室)
- 松本 正俊(広島大学医学部 地域医療システム学講座)
- 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新たな専門医の在り方について検討が進む中、各専門医が各地域にどの程度必要かについてのグランドデザインについてはこれまで十分な検討がなされていない状況にある。このため、新たな専門医の仕組みの構築と並行し、将来の人口動態の変化、疾病構造の変化、交通アクセス等を考慮し、診療科ごとのニーズを基に、専門医の地域的な偏在を解消する在り方について検討することが求められている。
本研究の目的は、専門医の必要数の将来推計に向けた試算及び今後の課題の整理、諸外国における専門医の養成数の考え方の調査、現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医数の将来推計の3課題について検討を行うことにある。
本研究の目的は、専門医の必要数の将来推計に向けた試算及び今後の課題の整理、諸外国における専門医の養成数の考え方の調査、現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医数の将来推計の3課題について検討を行うことにある。
研究方法
専門医の必要数の将来推計にあたっては、内科+総合診療、外科、小児科、脳神経外科、眼科の5領域に関し、いくつかの仮定をおいた上で将来推計を行うこととした。第1段階としては、専門医の必要数に関連が深い疾患・手技の対応表試案をたたき台として作成、性・年齢階級別の患者数・数と年齢階級別将来人口推計と順次掛け合わせることで、将来の専門医の必要数の変化率を推計した。次に、現状の診療科間の偏在の程度が、労働時間の長短によって現れていると仮定し、労働時間の診療科間の差を平準化するための係数を作成、これを現在の各領域の専門医数、第1段階で求めた将来ニーズの変化率、労働時間の平準化のための調整係数を乗じることで将来の専門医の必要数の試算を行った。また、眼科、脳神経外科の2つの領域を例に、データソースの違いが推計に与える影響についても試算を行った。
諸外国における専門医の養成定数の考え方については、アメリカ、フランスについて、専門医養成の考え方、定員の設定方法等に関し、文献調査や関連機関のホームページの検索、関係者に対するメールを用いた問合せなどを通じた調査研究を実施した。アメリカについては、専門研修プログラム認定機構であるACGMEについてメールなどによる資料収集と、関係者からのヒアリングを実施した。フランスについては、保健省・全国医療従事者管理局(ONDPS)を訪問し、関係者からヒアリングと資料収集を実施した。
現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医数の将来推計に関しては、2010年から2014年までの医師・歯科医師・薬剤師調査のデータを用いて、基本18領域の診療科の専門医の将来推計を行った。なお、精神科、臨床検査科の専門医の推計に当たっては、主たる診療科が精神科、臨床検査科とされている医師を専門医とみなした。マルコフ・モデルを用いて2038年までの各専門医数を推計するとともに、全体の専門医数、男女別の専門医数、労働力による重み付けを考慮した専門医数を推計した。
諸外国における専門医の養成定数の考え方については、アメリカ、フランスについて、専門医養成の考え方、定員の設定方法等に関し、文献調査や関連機関のホームページの検索、関係者に対するメールを用いた問合せなどを通じた調査研究を実施した。アメリカについては、専門研修プログラム認定機構であるACGMEについてメールなどによる資料収集と、関係者からのヒアリングを実施した。フランスについては、保健省・全国医療従事者管理局(ONDPS)を訪問し、関係者からヒアリングと資料収集を実施した。
現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医数の将来推計に関しては、2010年から2014年までの医師・歯科医師・薬剤師調査のデータを用いて、基本18領域の診療科の専門医の将来推計を行った。なお、精神科、臨床検査科の専門医の推計に当たっては、主たる診療科が精神科、臨床検査科とされている医師を専門医とみなした。マルコフ・モデルを用いて2038年までの各専門医数を推計するとともに、全体の専門医数、男女別の専門医数、労働力による重み付けを考慮した専門医数を推計した。
結果と考察
ニーズに基づいた専門医の必要数の将来推計に関しては、平成28年度の研究班において提唱した方法を踏襲しつつ、一部領域についての将来ニーズの推計を行うとともに、診療領域のニーズを反映すると考える疾患・手技の組み合わせを変更した場合や、患者数・手技数のデータソースを変更した場合の影響についても試算を行った。その結果、昨年度提唱した方法は、専門医のニーズを反映する領域と疾患・手技の対応表についての関係者間の合意形成や、データの精度についての課題はあるものの、方法論としては概ね妥当であると考えられた。ただし、推計は、推計結果そのものが将来の行動に影響を与えてゆくものである点も踏まえると、定期的な見直しを行うこと、また、推計方法についても、さまざまな方法について常に考えておく必要があることも明らかになった。
諸外国における専門医の養成定数の考え方については、アメリカの専門研修は、研修期間に経験できる症例数や手技、研修指導体制などによって診療科ごとの専門研修医師数が規定されること、フランスの専門医については、全国選抜試験(ECN)の存在が大きいこと、またECNにおける地域毎の専門科研修医定員枠の決定過程が明らかになった。
現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医の将来推計を行ったところ、ほぼすべての診療科で専門医数は増加していくこと、近年の女性医師の増加を反映して、男性医師の割合の高い診療科では男性が減少し、女性の割合が高くなり、現に女性割合が高い診療科は、さらに女性の割合が増加することが明らかになった。
諸外国における専門医の養成定数の考え方については、アメリカの専門研修は、研修期間に経験できる症例数や手技、研修指導体制などによって診療科ごとの専門研修医師数が規定されること、フランスの専門医については、全国選抜試験(ECN)の存在が大きいこと、またECNにおける地域毎の専門科研修医定員枠の決定過程が明らかになった。
現状の医師のキャリア選択が変わらなかった場合の基本領域の専門医の将来推計を行ったところ、ほぼすべての診療科で専門医数は増加していくこと、近年の女性医師の増加を反映して、男性医師の割合の高い診療科では男性が減少し、女性の割合が高くなり、現に女性割合が高い診療科は、さらに女性の割合が増加することが明らかになった。
結論
今回の研究結果は、今後の専門医制度について検討を進める上で有益な資料となりうるものと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2019-05-23
更新日
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