医師国家試験へのCBT導入に関する研究

文献情報

文献番号
201721050A
報告書区分
総括
研究課題名
医師国家試験へのCBT導入に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
高木 康(昭和大学医学部 医学教育学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
771,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.医師国家試験の現状と改善
我が国の医師国家試験は、冊子によるMCQ形式で500題により行われている。しかし、諸外国ではコンピュータを利用したCBT(Computer Based Testing)が利用されている。諸外国の医師国家試験に関する調査で、CBTを利用して主に知識を、そしてOSCEを併用することで技能や態度の評価を行っている。現行の医師国家試験は、質的改善も必要であり、CBTの採用・導入はその一助となる可能性が高い。
2.CBTとその改善方法
諸外国のCBTは画像を利用しているが、動画や音声の採用は諸事情で行われていない。しかし、我が国では動画や音声を利用したCBTを用いて、一部の技能評価を行っている医学部・医科大学もある。医師国家試験に、技能や態度評価が可能なOSCEの導入が必ずしも容易でない我が国においては、動画や音声などのマルチメディアを活用したCBTを導入することでこれらをカバーできる可能性もある。
本研究は、過去2年間の調査による諸外国のCBTの長所と短所を明らかとするともに、マルチメディアを活用するCBTの有用性を検討し、パイロット的な試験問題を作成して、実施の可能性などを検証することにある。
研究方法
1.CBTの長所と短所についての再整理
CBTの長所と短所について再度確認・整理する。特にCBTのMCQ出題における冊子形式にはない長所と短所について整理する。
2.コンピュータの特性を利用した出題とその有用性の検討
すでに動画と音声を組み込むことで、身体診察の技能的な側面からの出題と評価が可能なことが確認されているが、画像のページングシステムによる臨床現場に即した画像診断、正常部を含むCT/MRI画像から病変部を選抜し、疾病診断を行うCBTの可能性について検討する。
結果と考察
結果
1.CBTの長所と短所
①CBTの長所
・PCが準備できれば、随時に実施可能、地域を選ばない。
・短時間で採点が可能である。
・マルチメディア(動画、音声、画像のページングなど)を利用した出題が可能である。
・臨床推論問題など工夫によりtaxonomyの深い出題が可能である。
②CBTの短所
・適切な評価方法(IRTか絶対評価か)を選択する必要がある。
・絶対評価では問題の質を精査する必要がある。
・適切な事後評価が必要である(特に非公開の場合には)。
・IRT評価では項目パラメタ推定のために最低200人以上の試行試験が必要である。
2.マルチメディアを活用したCBT
・マルチメディアを活用したCBTを行うことでtaxonomyの深い問題を作成できる。
・動画での出題が効果的な領域は神経系疾患で、音声は循環器系、呼吸器系疾患である。
・羽ばたき振戦、Parkinson病など神経系疾患では患者の動作を動画で出題することでtaxonomyの深い出題が可能である。
・モロー反射など患者の異常動作は文章記載より動画で容易にその動作を理解できる。
・徒手筋力試験(MMT)では評価している筋肉とその筋力低下の有無の評価を実際の画像で出題できる。紙ベースの試験では評価結果だけを記載した設問が主である。
・カラードップラの画像を動画にすることでtaxonomyの深い出題が可能となる。
・患者の動画を見せることで意識レベル(JCS、GCS)を問う設問とすることができる。
・病的な心音や呼吸音を出題することで、学生の臨床実習で積極的に患者の心音や呼吸音を聴診するようになるなどの学習行動変容を期待できる。
・現在のCBTや医師国家試験はキーフィルムでの出題であるが、ページングにより多くの画像から病巣を発見して解答する出題も可能である。
・マルチメディア活用CBTは長文連問形式とすることで実臨床の診療の流れで設問でき、設問の難易度を変えることで、臨床実習前の試験、臨床実習後の試験、臨床研修修了後の試験、専門医試験とすることが可能である。
考察
マルチメディア(動画、音声、画像のページングなど)を活用したCBTはより深い知識を評価できるだけでなく、技能の一部を評価できる可能性があり、主診療科(内科、外科)の臨床実習後に実施することで、その後の診療参加型臨床実習での学習行動変容を期待できる。 
結論
我が国の医師国家試験は冊子による筆記試験が行われている。この様式では、深い知識を評価するのは必ずしも容易ではなく、補完する手段を考える必要がある。マルチメディアを活用したCBTはその1つの手段であり、適切なマルチメディアを活用することで知識ばかりでなく一部の技能をも評価可能である。本研究班員が作成したマルチメディ活用CBTを班員の大学での試行も計画したので、後日その結果を報告したい。

公開日・更新日

公開日
2019-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
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公開日・更新日

公開日
2019-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721050C

収支報告書

文献番号
201721050Z