医療情報の適切な評価・提供及び公表等の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201721042A
報告書区分
総括
研究課題名
医療情報の適切な評価・提供及び公表等の推進に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 猪飼 宏(山口大学医学部附属病院)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 嶋田 元(聖路加国際大学 情報システムセンター)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,374,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
[医療の質の評価]医療の質の測定・公表に関して、平成28年度研究班(研究代表者:福井次矢)により、全国の病院で用いることを意図した共通QIセット(23種類、36指標)が提案された。本研究では、提案された共通QIセットを臨床現場で用いて、その測定可能性や有用性などについて、アンケート調査を行い、今後の医療の質の評価・公表等に関する制度的対応について検討する。
[医療機能情報提供制度]医療機能情報提供制度は、住民・患者が医療機関を適切に選択できるよう支援することを目的として平成19年度に導入されたが、制度創設以来、大きな見直しは行われてこなかった。本研究では、医療機能情報提供制度の内容や有用性、改善の余地、さらには病院ごとのQIを組み込む込むことの有用性などについて、アンケート調査を行い、加えて海外でのQIの公表状況を調べ、今後のわが国における医療情報の提供のあり方について検討する。
研究方法
[医療の質の評価]厚生労働省の平成29年度医療の質の評価・公表等推進事業に参加した日本病院会および全日本病院協会の病院において、上記共通QIセットを測定してもらい、それらが自院の質改善に役立つか否か、共通QIセット算出の容易性、日本の全病院で測定すべきと考える指標、測定が容易で自院の質を改善する指標、測定が容易で全病院で測定すべきと考える指標、自院の質の改善に役立ち全病院で測定すべきと考える指標などについて、アンケート調査を行った。
[医療機能情報提供制度]インターネット上の調査パネルを用い、医療情報機能提供制度の認知度や利用度に関するアンケート調査を行い、その内容や有用性、改善の余地、さらにはQIを組み込む込むことの有用性などについて検討した。海外でのQIの公表状況については、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランスを対象に、インターネットを用いて調査した。
結果と考察
[医療の質の評価]2病院団体の136病院中77病院からアンケートへの回答を得た。結果は、自院の質改善につながる指標として転倒転落や褥瘡発生率や患者満足度など、算出の容易性については職員インフルエンザ、転倒転落、患者満足度、インシデント・アクシデントレポート、褥瘡発生など、全病院で測定すべき指標として患者満足度、転倒転落、褥瘡発生率、測定が容易で自院の質を改善する指標(DPCのデータを用いる指標以外)として満足度や転倒転落、インシデント・アクシデントレポート、褥瘡発生率、職員満足度、測定が容易で全病院で測定すべきと考える指標(DPCを用いる指標以外)としては転倒転落、患者満足度、褥瘡発生率、インシデント・アクシデントレポートなどが挙げられた。
[医療機能情報提供制度]2,875人から回答を得た。医療機関を選ぶ際の情報源は知人や家族からの情報(59%)が最も多く、医療機関選択時に重視する情報は病院へのアクセス(87%)が最も多かった。医療機関検索サイト(医療情報ネット)を知っていたのはわずか11%にとどまったものの、実際に利用したことがあるのは62%(全体の6.8%)、医療情報ネットが役立ったと回答したのは91%(全体の10%)に達した。各医療機関のQIを追加することついては、89%が非常に役立つと思う、または役立つと思うと回答した。
海外でのQIの公表状況に関して、アメリカでは全病院の83%にあたる4624病院が58指標を、オーストラリアでは全病院の77%にあたる1019病院が7指標を、イギリスではNHS(National Health Service)傘下にある全病院の3248病院が1925指標を、フランスでは、高等保健庁が全国の2,710病院全てにおける51指標を、それぞれホームページに公開している。上記4か国では、医療機能やQIの公開とともに、これらを評価し認証する制度も行われている。
結論
[医療の質の評価]共通QIセットの多くの指標が医療の質の改善に役に立つこと、いくつかの指標については測定をより容易にする必要のあることなどがわかった。今後は、共通QIセットの新設・改変・廃棄、定義のメンテナンス、マスタ整備など、継続的に対応する必要がある。先進諸国で行われているような医療の質の評価・公表の標準化が求められ、医療の質の評価・公表を担当する独立した組織あるいは部署の設置が望ましい。
[医療機能情報提供制度]医療機関検索サイト(医療情報ネット)の認知度は、現状では11%と低いものの、国民にとって医療機関を選ぶ際の重要な情報源であり、より積極的な周知活動が必要である。個別の医療機関のQI掲載については望ましいとの意見が圧倒的であり、そうすることで当サイトの利用度・有用度が高まる可能性が高い。各医療機関のQI指標の公開にあたっては、諸外国での先例を参考にして、国民に有用な制度の確立を目指すべきであろう。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 平成29年度の研究班によって、全国の病院で測定することを意図して提言された共通QIセット(23種類、36指標)の多くの指標が医療の質の改善に役に立つこと、いくつかの指標については測定をより容易にする必要のあることなどがわかった。
医療機関検索サイト(医療情報ネット)の認知度は、現状では11%と低いが、利用した人々にとって有用度は高かった。QI掲載については望ましいとの意見が圧倒的であった。
臨床的観点からの成果
 共通QIセットの多くの指標が、医療の質を向上させるために有用であったとの意見が多いことは、今後、QIを用いた医療の質評価・公表を全国の病院に普及させるうえで、肯定的・促進的に作用するものと思われる。
 医療機関検索サイト(医療情報ネット)については、その内容にはあまり問題がなく、最大の課題が低い認知度(わずか11%)であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発や審議会等での発表は行わなかった。
その他行政的観点からの成果
医療の質を高めるため、共通QIセットをわが国の全病院に導入することが望ましい。そのためには、共通QIセットの改訂、定義のメンテナンスなどを継続的に行う必要があり、先進諸国のような医療の質の評価・公表の標準化が求められ、医療の質の評価・公表を担当する独立した組織あるいは部署の設置が望まれる。
医療機関検索サイト(医療情報ネット)の認知度が11%と低いものの、国民にとって医療機関を選ぶ際の重要な情報源であり、今後は積極的な周知活動が必要である。また、個別の医療機関のQIの掲載が望ましい。
その他のインパクト
マスコミへの発信や公開シンポジウムなどの開催は行わなかった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201721042Z