診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究

文献情報

文献番号
201721032A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-019
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院 創造理工学部経営システム工学科)
  • 水流 聡子(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院 法務研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 東 尚弘(国立がん研究センターがん対策情報センター がん登録センター)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
  • 石崎 達郎(東京都健康長寿医療センター)
  • 隈丸 加奈子(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量し、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、患者と医療者の意思決定を支援する文書」(Minds 2014)である。最良の臨床的エビデンスに基づき、患者の視点を反映した診療ガイドラインの作成・活用は、医療の質や安全の向上、社会的信頼の基盤となる重要な政策的課題と言える。診療ガイドラインは主に「介入の臨床的有効性」を示すエビデンスを重視していたが、近年、それに加えて「益と害のバランス」「患者の希望」「コストと資源」が注目されている。本課題は、これらの多面的検討、特に費用対効果の望ましい反映の在り方、診療ガイドラインの適正利用の在り方を示すことを目的とする。
研究方法
本課題は、学際的な研究組織により診療ガイドラインの作成から普及に至る課題を包括的に取り上げ、それらの成果を総合して、医療者への信頼の基盤となり、適切で維持可能な医療の在り方を示せる診療ガイドラインの全体像を提示するものである。その検討の過程やその成果は班会議を公開することで開かれた社会的議論に発展させていく。基本的には全課題について代表研究者と分担研究者が協働して取り組む。
結果と考察
2年度は初年度に引き続き、医療機能評価機構Mindsと協力して診療ガイドラインの作成法として世界的に確立しつつあるGRADEシステムの国内での導入の促進とその課題・対応策の協議を進めた。レセプトを用いた多病状態の検討、医療裁判における診療ガイドラインの位置づけ、エビデンス診療ギャップについては、健保レセプトデータベースを用いて、医薬品適正使用の領域ではERCP後のたんぱく分解酵素阻害薬の処方、非薬物療法領域では橈骨遠位端骨折におけるリハビリテーション実施、DPCデータを用いた肺がん術前後のリハビリテーション実施状況とその合併症予防効果の検証、厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)データベースを用いて院内で分離される薬剤耐性菌の動向と診療ガイドラインを踏まえた考察を行った。さらに診療ガイドラインを用いた心臓リハビリテーションと院内助産の診療の質指標の開発、レセプトデータベースを用いた心臓リハビリテーションの実施状況を英文論文として報告した。代表・中山と分担・水流が中心に立ち上げた日本臨床知識学会では学術総会第1回に続き第2回でもシンポジウム「ガイドラインと実臨床のギャップ: 実践科学〈implementation science〉としての臨床知識学を考える」(2018年1月27日)を企画した。2018年2月20日には公開班会議の開催し、班員に限らず本課題に関心を持つ方々との意見交換を行なった。新たに発足した日本医学会連合診療ガイドライン委員会に代表者・中山が委員として参加し、本研究班の成果を踏まえて、各委員へ診療ガイドラインの国内外の動向と課題・展望の共有を行った。日本臨床知識学会では学術総会第1回に続き第2回でもシンポジウム「ガイドラインと実臨床のギャップ: 実践科学〈implementation science〉としての臨床知識学を考える」(2018年1月27日)を実施した。2018年2月20日には公開班会議の開催し、班員に限らず本課題に関心を持つ方々との意見交換を行った。
結論
本課題は学際的な研究組織により診療ガイドラインの作成から普及に至る複数の課題を包括的に取り上げ、それらの成果を総合して、医療者への信頼の基盤となり、適切で維持可能な医療の在り方を示せる診療ガイドラインの全体像を提示することを目指すものである。本班の関係者は多様な診療ガイドライン作成に方法論の専門家として関与しているとともに、日本医療機能評価機構Mindsガイドラインセンターの運営にも関与している。本課題で取り組んでいる全体課題・分担課題の遂行により、EBMの推進、医療の質・安全性の向上、社会的信頼の基盤整備等、重要な政策的課題への対応策が明らかとなり、社会的な波及効果のある成果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201721032B
報告書区分
総合
研究課題名
診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究
課題番号
H28-医療-指定-019
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院 創造理工学部経営システム工学科)
  • 水流 聡子(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院 法務研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 東 尚弘(国立がん研究センターがん対策情報センター がん登録センター2040287024)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
  • 石崎 達郎(東京都健康長寿医療センター2030740451)
  • 隈丸 加奈子(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量し、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、患者と医療者の意思決定を支援する文書」(Minds 2014)である。最良の臨床的エビデンスに基づき、患者の視点を反映した診療ガイドラインの作成・活用は、医療の質や安全の向上、社会的信頼の基盤となる重要な政策的課題と言える。診療ガイドラインは主に「介入の臨床的有効性」を示すエビデンスを重視していたが、近年、それに加えて「益と害のバランス」「患者の希望」「コストと資源」が注目されている。本課題は、これらの多面的検討、特に費用対効果の望ましい反映の在り方、診療ガイドラインの適正利用の在り方を示すことを目的とする。
研究方法
本課題は、学際的な研究組織により診療ガイドラインの作成から普及に至る課題を包括的に取り上げ、それらの成果を総合して、医療者への信頼の基盤となり、適切で維持可能な医療の在り方を示せる診療ガイドラインの全体像を提示するものである。その検討の過程やその成果は班会議を公開することで開かれた社会的議論に発展させていく。基本的には全課題について代表研究者と分担研究者が協働して取り組む。
結果と考察
2年間の研究期間で診療ガイドライン、エビデンスに基づく医療、系統的レビューに関して国際誌に複数の英文論文を出版し、またシェアード・デシジョンメイキングに関する国内初の書籍を刊行した。診療ガイドラインを基点とした臨床研究の推進、系統的レビュー、患者の視点の反映、限られた資源の効率的な利用、診療現場における質向上の取り組み、過剰医療・過小医療の社会的議論の喚起など、わが国の医療が取り組むべき多くの課題につながる研究成果が得られた。診療ガイドラインによる患者と医療者の適切な意思決定促進に向けた意見交換の場として、SDM(shared decision making)フォーラム(2016年8月25日)、国際薬剤疫学・アウトカム学会日本部会でシンポジウム「医療経済評価の政策への応用-専門家と患者・一般人との情報格差の解消と相互理解」(2016年8月31日)、日本医療機能評価機構Mindsと連携して「医療技術評価と診療ガイドラインの連携に関するワークショップ」(2016年12月18日)、患者状態適応型パス(PCAPS)による医療機関の診療情報の集約と、ガイドライン作成主体へのフィードバック「診療ガイドライン改善プロセスモデル」の実現に向けた意見交換の場として、第18回日本医療マネジメント学会(博多)でシンポジウム:「臨床の複雑性に挑む」(2016年4月23日)、代表・中山と分担研究者・水流が新たに日本臨床知識学会を立ち上げ、第1回学術総会で「『根拠に基づく診療ガイドライン』と『臨床知識の構造化』を実施(2017年1月29日)。また2017年1月7日には公開班会議を開催し、班員に限らず本課題に関心を持つ方々との意見交換を行った。日本臨床知識学会では学術総会第1回に続き第2回でもシンポジウム「ガイドラインと実臨床のギャップ: 実践科学〈implementation science〉としての臨床知識学を考える」(2018年1月27日)を実施した。2018年2月20日には公開班会議の開催し、班員に限らず本課題に関心を持つ方々との意見交換を行った。
結論
本課題は学際的な研究組織により診療ガイドラインの作成から普及に至る複数の課題を包括的に取り上げ、それらの成果を総合して、医療者への信頼の基盤となり、適切で維持可能な医療の在り方を示せる診療ガイドラインの全体像を提示することを目指した。本班の関係者は多様な診療ガイドライン作成に方法論の専門家として関与しているとともに、日本医療機能評価機構Mindsガイドラインセンターの運営にも関与している。本課題の成果によりEBMの推進、医療の質・安全性の向上、社会的信頼の基盤整備等、重要な政策的課題への対応策が明らかとなり、社会的な波及効果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721032C

収支報告書

文献番号
201721032Z