医療安全支援センターにおける業務の評価及び質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201721006A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターにおける業務の評価及び質の向上に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 安司(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安樂 真樹(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
  • 後  信(九州大学病院医療安全管理部)
  • 小林 美雪(健康科学大学看護学部)
  • 杉山 恵理子(明治学院大学心理学部心理学科)
  • 田中 健次(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
  • 長川 真治(防衛医科大学校医学教育部防衛医学講座)
  • 長谷川 剛(自治医科大学、呼吸器外科)
  • 原田 賢治(東京農工大学保健管理センター)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座)
  • 水木麻衣子(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,275,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域包括ケアシステムの中で患者家族を誰がどこでどのように支えていくかという課題にむかって、医療安全支援センターの業務の標準化とその評価ならびに質の向上を図っていくために必要なことを明らかにすることが目的である。特に①医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討、と②地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討を行う。また、センターの業務の評価、質の向上に直結する課題解決として③センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価を行う
研究方法
①医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討
センターに寄せられる「医師の説明と患者家族の理解のズレ」に関わる相談事例を積極的に収集し、医療機関の現状や調整実態を踏まえて、患者家族に必要な支援を検討する。
②地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
医療の苦情相談を含む多様な相談を受けられる相談支援者育成のために必要な知識や技術を明らかにしつつ、地域医療構想や地域包括ケアにかかわる様々な相談支援機能との連携の可能性を探る。モデルセンターを中心に、地域の医療安全の課題や相談支援機能の連携や情報の共有、人材育成について知見をまとめていく。
③センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
一年目に作成した相談員の速成のための研修プログラムを実行し評価を行う。
結果と考察
①医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討と②地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
センターに寄せられる「医師の説明と患者家族の理解のズレ」に関わる相談事例を集めたところ、全国から約700の事例があつまった。その多くは「説明不足」や「コミュニケーション不足」が原因と考えられた。一方で、医療機関は説明資料を準備したり、患者家族の理解しやすい形で説明を行うなどの取り組みが整備しつつある。また、地域での相談機能の連携と人材育成の一環で事例検討会等を開いたところ、地域にどのような苦情相談があるかがわかっていない医療者たちが多くいることが分かった。「理解のズレ」を埋めるような第三者の機能がセンターに求められる。医療機関での説明実態から浮かび上がる患者家族に必要な支援を総合すると、今後、センターに求められる相談の類型は①苦情相談型の対応、②専門相談型の対応、③地域包括型の対応の3つと考える。さらにそれらの対応はそれぞれ患者家族、医療機関、第三者機関の三方向へのアプローチを求められる。地域包括ケアでの相談支援機能の連携を促進していくには、この3つの類型で三方向へのアプローチができるような相談員の育成が必要になると思われる。
③センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
センター業務に携わる職員を対象に業務に特化した研修を7ブロックで行いアンケート集計を行った。専門職ではない行政官が相談対応をすることが多く、参加者も半数以上が非医療職であった。業務に特化した速成の研修プログラムは好評であった。今後はプログラムの改良と研修に参加が難しい職員むけにEラーニング等の検討を行う必要がある
結論
地域包括ケアシステムの整備が求められる中で、支援センター等地域の相談窓口では、医療者と患者の「理解のズレ」に向き合う必要がある。相談窓口に求めらえるのは、苦情相談型の対応と専門型相談型の対応と地域包括型の対応の3類型が必要になる。そしてそれぞれ、患者家族、医療機関、第三者機関へむけたアプローチが求められる。その体制整備にあたり行政機構としての整備とエンパワメントとフィードバックが課題にあることがわかっている。また、相談対応できる人を地域に増やしていくことが重要になるが、その教育研修のポイントは3つの類型とそれぞれの3方向へのアプローチを可視化して伝えていくことである。

公開日・更新日

公開日
2018-08-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-08-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201721006B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全支援センターにおける業務の評価及び質の向上に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 安司(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安樂 真樹(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
  • 後  信(九州大学病院医療安全管理部)
  • 小林 美雪(健康科学大学看護学部)
  • 杉山 恵理子(明治学院大学心理学部心理学科)
  • 田中 健次(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
  • 長川 真治(防衛医科大学校医学教育部防衛医学講座)
  • 長谷川 剛(自治医科大学、呼吸器外科)
  • 原田 賢治(東京農工大学保健管理センター)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座)
  • 水木 麻衣子(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者家族の適切な受診行動や意思決定をどのように支えていくかという課題にむかって、センターの相談機能は医療機関への情報提供、患者住民の適切な受療行動を支える重要な機能となってくる。本研究では、医療安全支援センター(以下センター)における業務の評価及び質の向上のために、地域の相談支援機能の連携と人材育成について検討する。

研究方法
(1)医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討
1年目は美容医療の苦情相談事例を収集し、2年目は美容医療を含む医療行為等で医療安全や説明に関わる事例を収集し、課題を把握する。また、医療対話推進者、臓器移植コーディネーター、患者家族の支援団体等から説明不足という課題への対応についてヒアリングを行う。
(2)地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
モデルセンターと協働して、地域のステークホルダーと事例検討や相談機能の連携、人材育成についての検討を行う。
(3)センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
センターの機能を10のカテゴリーに分け、センターの基本方針に関する調査を実施。新しい研修については1年目でセンター相談員に対する研修の見直し「一律の提供が可能な研修」の再構成し、二年目に実施評価をする。
結果と考察
(1)医療機関での説明実態の把握と患者家族に必要な支援の検討
センターに寄せられる相談事例の多くは、説明不足、コミュニケーション不足という「患者と医療者の認識のズレ」が背景にある事例であった。一方、医療機関側は説明と同意の方法を工夫するなどの努力がみられた。しかし、双方の認識のズレを埋めていくには課題は多い。センター等の相談支援機能が説明不足を補う機能として期待されていることもわかった。
(2)地域包括ケアでの相談支援機能の連携と人材育成のあり方の検討
医療者は自分の所属機関以外の苦情はほとんど知らないなど、地域の医療安全の課題共有していくことが難しいことがわかった。まず地域の医療安全の課題の把握し、相談支援機能の連携方法や人材育成方法に工夫をしていく必要があることが分かった。
(3)センターの機能の明確化と相談員に対する研修の評価
センターの機能は多様化している一方で、体制整備の状況は機能を発展させている所と、資源に応じて限定体制をとっている所、十分な体制が構築できていない所と様々であった。新しい研修プログラムはセンター業務に特化した速成の新たな研修プログラムとなった。センター担当者に実施したところ、非常に好評であった。相談員の速成のための研修プログラムは、センターの機能標準化に必要なだけでなく、地域の他の相談員の教育教材にもなりうる。今後は誰もが受けられる研修にしていく必要がある。
結論
センターに求められる相談の類型は①苦情相談型の対応、②専門相談型の対応、③地域包括型の対応の3つと考える。さらにそれらの対応はそれぞれ患者家族、医療機関、第三者機関の三方向へのアプローチを求められる。地域包括ケアでの相談支援機能の連携を促進していくには、この3つの類型で三方向へのアプローチができるような相談員の育成が必要になる。本研究で得られた知見は、センターが直面する課題の解決にとどまらず、地域包括ケアでの相談支援機能の充実を図っていくうえでも役に立つ知見と考える。センターと同じような相談支援機能は、医療機関内外、地域に広く広がっている。相談内容に違いがあっても、専門家が配置されているところは多くはなく、基本的な対応は傾聴となっている。各地域での相談支援機能の連携と人材育成を工夫することで、地域の医療に対する安全感は高まってくると思われる。

公開日・更新日

公開日
2018-08-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201721006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
心理学、工学、医学教育、統計、看護、医療安全等の専門家がそれぞれの立場から、医療に関する苦情相談のしくみの検討や相談対応事例の分析を行った。制度化された医療安全支援センターの業務の中から、医療の質安全につながる情報連携のしくみや相談対応事例の一部を研究対象として科学的な検証をおこなった。
臨床的観点からの成果
①全国に約380カ所ある医療安全支援センターの相談業務において、相談類型とそのアプローチの方向性を明確にしたことは、各センターの相談対応の標準化のために意義があった。
②医療機関や地域の関連機関への相談事例のフィードバックについて、様々な取組が明らかになり、支援センターと医療機関や地域の関連機関の連携や人材育成が促進される。
③相談員育成のための速成の研修カリキュラムが完成し、それによって相談業務の効率化が図れる
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-08-18
更新日
2022-06-10

収支報告書

文献番号
201721006Z