文献情報
文献番号
201720003A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎の病態評価指標の開発と肝炎対策への応用に関する研究
課題番号
H29-肝政-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 是永 匡紹(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
- 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学・)
- 板倉 潤(武蔵野赤十字病院 消化器科)
- 大座 紀子(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
- 島上 哲朗(金沢大学附属病院 地域医療教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
30,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、事業と肝炎医療の向上を推進するための改善策を提示しにくい状況である。肝硬変への移行者の減少を政策目標に設定する場合、慢性肝疾患の病状変化を把握する指標が必要であるが、現在使用されている線維化判別式の妥当性評価や新規指標の探索が必要である。
本班では、以下の目的で研究を行う。①肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業実施、医療提供の程度と質を評価する指標を作成する。指標の妥当性、有用性を、自治体、拠点病院、厚生労働省、肝炎情報センターの4者で評価・検証し、総合的な肝炎政策の推進に向けた具体的な取り組みの提言を行う。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)を実施し、2011年国民調査と比較することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、肝炎施策の認知度の向上等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、疫学的病態推移(マルコフモデル)と比較することで有効性・妥当性を評価する。
本班では、以下の目的で研究を行う。①肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業実施、医療提供の程度と質を評価する指標を作成する。指標の妥当性、有用性を、自治体、拠点病院、厚生労働省、肝炎情報センターの4者で評価・検証し、総合的な肝炎政策の推進に向けた具体的な取り組みの提言を行う。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)を実施し、2011年国民調査と比較することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、肝炎施策の認知度の向上等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、疫学的病態推移(マルコフモデル)と比較することで有効性・妥当性を評価する。
研究方法
肝炎医療指標、各事業指標の作成にはデルファイ変法によるコンセンサス形成を用いる。
研究者所属施設においてウイルス肝炎患者コホートを設定する。
・コホート1:肝生検を2回以上実施されており、最終的に肝硬変(F4)と診断された患者
・コホート2:肝生検により肝硬変(F4)と診断された患者(後方視的観察群)
・コホート3:肝生検により高度線維化(F3)と診断された患者(前方視的観察群)
上記3コホートで、線維化マーカー(APRI、FIB-4等)の経時的推移を検討する。非肝硬変から肝硬変に至る年数、線維化Stageの進行速度、移行者年率などを推計する。抗ウイルス療法による肝硬変進展率の抑制効果も評価する。
肝炎検査受検状況実態を把握するため、住民基本台帳・選挙人名簿に基づく層化二段無作為抽出により選ばれた20-85歳の30,000人を対象として標本調査を行なう。
研究者所属施設においてウイルス肝炎患者コホートを設定する。
・コホート1:肝生検を2回以上実施されており、最終的に肝硬変(F4)と診断された患者
・コホート2:肝生検により肝硬変(F4)と診断された患者(後方視的観察群)
・コホート3:肝生検により高度線維化(F3)と診断された患者(前方視的観察群)
上記3コホートで、線維化マーカー(APRI、FIB-4等)の経時的推移を検討する。非肝硬変から肝硬変に至る年数、線維化Stageの進行速度、移行者年率などを推計する。抗ウイルス療法による肝硬変進展率の抑制効果も評価する。
肝炎検査受検状況実態を把握するため、住民基本台帳・選挙人名簿に基づく層化二段無作為抽出により選ばれた20-85歳の30,000人を対象として標本調査を行なう。
結果と考察
肝炎医療(32指標)、自治体事業(26指標)、拠点病院事業(21指標)を確定した。平成30年度の各実施体における指標運用方法を検討している。
2017年版受検率調査(国民調査)の回収数は30,000件のうち10,203件(回収率34.0%)であった。H23年調査よりやや高い回収率となった。受検率については、H23年調査と同様の対象年齢(20歳~79歳)とした場合、B型肝炎ウイルス検査認識受検率20.1%、C型肝炎ウイルス検査認識受検率18.6%となった。これは、H23年調査と比較して2.5ポイント、1ポイントの増加が認められた。一方、非認識受検を含めた受検率についても、B型肝炎ウイルス検査受検率71.0%、C型肝炎ウイルス検査受検率61.6%となり、それぞれH23年調査と比べ、12.6ポイント、13.6ポイントの増加がみられた。未受検率については、性別、年齢別、ブロック別にみるとB型肝炎ウイルス未受検率、C型肝炎ウイルス未受検率いずれも10ポイント以上の減少が認められ、平成23年度からの6年間に於いて、未受検者が減少し、検査が推進したことが明らかとなった。
ウイルス性肝炎の肝硬変への移行率について検討した。コホート①:2回肝生検を施行、1回目”慢性肝炎”、2回目”肝硬変”と診断した45症例を対象に診断間間隔を検討した。生検間隔中央値はF1-F4, 11.6年、F2-F4, 6.9年、F3-F4, 4.7年であった。コホート②:肝生検で肝硬変と診断された143症例を対象に、APRIおよびFIB-4を用いて、”significant fibrosis”判定から”cirrhosis”判定までの時期を後方視的に検討した。B型肝炎では平均APRI値は上昇傾向を認めなかったが、平均FIB-4は2.0から3.6に上昇した。C型肝炎では平均APRI値は0.6から2.3へ、平均FIB-4は1.9から6.6へと経時的に上昇した。平均APRI値が 1.0から2.0まで上昇する期間は12年であった。コホート③に関しては症例数が十分ではなく、引き続き検討する。平成30年度は全国拠点病院へ研究を展開し、より信頼性の高い結果を得る予定である
2017年版受検率調査(国民調査)の回収数は30,000件のうち10,203件(回収率34.0%)であった。H23年調査よりやや高い回収率となった。受検率については、H23年調査と同様の対象年齢(20歳~79歳)とした場合、B型肝炎ウイルス検査認識受検率20.1%、C型肝炎ウイルス検査認識受検率18.6%となった。これは、H23年調査と比較して2.5ポイント、1ポイントの増加が認められた。一方、非認識受検を含めた受検率についても、B型肝炎ウイルス検査受検率71.0%、C型肝炎ウイルス検査受検率61.6%となり、それぞれH23年調査と比べ、12.6ポイント、13.6ポイントの増加がみられた。未受検率については、性別、年齢別、ブロック別にみるとB型肝炎ウイルス未受検率、C型肝炎ウイルス未受検率いずれも10ポイント以上の減少が認められ、平成23年度からの6年間に於いて、未受検者が減少し、検査が推進したことが明らかとなった。
ウイルス性肝炎の肝硬変への移行率について検討した。コホート①:2回肝生検を施行、1回目”慢性肝炎”、2回目”肝硬変”と診断した45症例を対象に診断間間隔を検討した。生検間隔中央値はF1-F4, 11.6年、F2-F4, 6.9年、F3-F4, 4.7年であった。コホート②:肝生検で肝硬変と診断された143症例を対象に、APRIおよびFIB-4を用いて、”significant fibrosis”判定から”cirrhosis”判定までの時期を後方視的に検討した。B型肝炎では平均APRI値は上昇傾向を認めなかったが、平均FIB-4は2.0から3.6に上昇した。C型肝炎では平均APRI値は0.6から2.3へ、平均FIB-4は1.9から6.6へと経時的に上昇した。平均APRI値が 1.0から2.0まで上昇する期間は12年であった。コホート③に関しては症例数が十分ではなく、引き続き検討する。平成30年度は全国拠点病院へ研究を展開し、より信頼性の高い結果を得る予定である
結論
肝炎医療、自治体・拠点病院事業に関する指標を確定し、次年度の指標運用と評価により肝炎医療、事業の改善への提言が可能となった。
ウイルス肝炎検査受検に関する意識調査(2017年版国民調査)を実施し、受検率の動向と肝炎政策の認知度に関する基盤的データを得た。
C型肝炎においては、肝硬変移行率の評価にAPRI/FIB-4が有用であることが示唆された。
ウイルス肝炎検査受検に関する意識調査(2017年版国民調査)を実施し、受検率の動向と肝炎政策の認知度に関する基盤的データを得た。
C型肝炎においては、肝硬変移行率の評価にAPRI/FIB-4が有用であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2018-11-01
更新日
-