ゲイコミュニティにおけるコホートの構築とHIVおよび梅毒罹患率の推計に関する研究

文献情報

文献番号
201719021A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲイコミュニティにおけるコホートの構築とHIVおよび梅毒罹患率の推計に関する研究
課題番号
H27-エイズ-若手-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,094,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は大阪のMSM(Men who have sex with men)を対象に、血液検査と連動させた前向きコホートの構築と人年法を活用してHIV感染症および梅毒の罹患率を推計し、予防啓発の評価尺度を確立することである。先行研究によれば日本のHIV感染動向はMSMに限局的に拡大しており、特にゲイ向け商業施設利用者は性行動が活発であり、感染リスクの高い集団である。またMSMにおいて梅毒は感染が増加していることも報告されており、MSM対象の検査会での梅毒有病率はHIV感染よりも高い。MSMにおけるHIV感染や梅毒感染の状況を把握することは、今後の感染対策の方針の決定や予防啓発の評価尺度として極めて有効である。
大阪のゲイ向け商業施設を中心としたゲイコミュニティにおいて、血液検査と連動させた前向きコホート構築を目的に、本年度はコホート体制を継続し、拡大させることを目的とした。
研究方法
調査デザインは血液検査結果と連動させた前向き追跡研究とした。研究参加者の個人特定には指紋認証の技術を応用したシステムによってIDを発行し、氏名や住所などの個人情報の取得は必要ない。研究参加者は量的質問紙調査法を活用したベースライン調査とフォローアップ調査および血液検査を継続的に参加する仕組みとした。本研究は名古屋市立大学看護学部倫理委員会および大阪青山大学倫理委員会の承認を得ており、検査体制の整備はゲイ・バイセクシュアル男性当事者を中心としたNGO組織・MASH大阪や大阪市や大阪府内の自治体で構成される予防週間実行委員会などの行政と協働し、利用者が本研究参加による差別や偏見を受けないように配慮し、HIV陽性判明後の支援体制を整備して実施した。本年度は検査会を6回実施した。
結果と考察
検査会利用者は大阪府在住のゲイが多く、コミュニティセンターdista利用者とほぼ同じであった。新規に判明したHIV陽性割合は保健所での受検者に比べ高い割合であり、コミュニティセンターを活用した検査会が有効であったと考えられる検査会利用者は大阪府在住のゲイが多く、コミュニティセンターdista利用者とほぼ同じであった。新規に判明したHIV陽性割合は保健所での受検者に比べやや高い割合であり、コミュニティセンターを活用した検査会が有効であったと考えられる。
初年度はコホート体制や検査体制を整備し、2年度目、3年度目でコホート構築を目指した。登録者目標数300人、フォローアップ目標数100人としていたが、コホート登録者は3年間で237人となり、目標の79.0%の達成率(2017年11月時点)となった。
コホートの継続率は18.1%と低く、このうち追跡中の新たなHIV抗体抗原新規陽性者は0人、梅毒抗体抗原新規陽性者は1人であった。HIV感染罹患率は計算できなかったが、人年法により梅毒感染罹患率は2.20%/年(95%信頼区間:-2.06%~6.46%)であると推計した。
結論
これまでに指紋登録した237人中43人の追跡ができ、MSMを対象とした血液検査と連動させた前向きコホート体制は構築できたことは学術的意義が高いと考えられる。また本研究で実施した検査会は大阪市が事業化し、MASH大阪(コミュニティセンターdista)と協働で、次年度以降も継続された。
MSMにおいて早期発見・早期治療につながる効果的なHIV抗体検査会として、商業施設利用割合が指標の一つとなる可能性が示され学術的意義がある。またMSM集団にとって検査を身近なものにし、定期的な検査行動に寄与する可能性がある。本検査会は梅毒を含む検査会として、大阪府内自治体の参加も得られつつあり社会的な意義もある。
また本研究では血液検査と連動させた前向きコホートの可能性を示し、検査会としては感染リスクの高い層が示唆され施策に活用できる資料が得られた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
2018-07-11

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201719021B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲイコミュニティにおけるコホートの構築とHIVおよび梅毒罹患率の推計に関する研究
課題番号
H27-エイズ-若手-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は大阪のMSM(Men who have sex with men)を対象に、血液検査と連動させた前向きコホートの構築と人年法を活用してHIV感染症および梅毒の罹患率を推計し、予防啓発の評価尺度を確立することである。先行研究では日本のHIV感染動向はMSMに限局的に拡大しており、特にゲイ向け商業施設利用者は性行動が活発で、感染リスクの高い集団である。またMSMにおいて梅毒は感染が増加していることも報告されている。MSMにおけるHIV感染や梅毒感染の状況を把握することは、今後の感染対策の方針の決定や予防啓発の評価尺度として極めて有効である。MSM対象の血液検査と連動した前向きコホート形成は国内で初めてであり、将来的に今後新たに展開される予防介入試行の基盤となりうる。
研究方法
調査デザインは血液検査結果と連動させた前向き追跡研究とした。研究参加者の個人特定には指紋認証の技術を応用したシステムによってIDを発行し、氏名や住所などの個人情報の取得は必要ない。研究参加者は量的質問紙調査法を活用したベースライン調査とフォローアップ調査および血液検査を継続的に参加する仕組みとした。本研究は名古屋市立大学看護学部倫理委員会、大阪青山大学倫理委員会の承認を得ており、検査体制の整備はゲイ・バイセクシュアル男性当事者を中心としたNGO組織・MASH大阪や大阪市や大阪府内の自治体で構成される予防週間実行委員会などの行政と協働し、利用者が本研究参加による差別や偏見を受けないように配慮し、HIV陽性判明後の支援体制を整備して実施した。初年度には検査会を4回、2年度目には5回、最終年度は6回実施した。
結果と考察
検査会利用者は総数で432人となり、大阪府在住のゲイが多く、コミュニティセンターdista利用者とほぼ同じであった。新規に判明したHIV陽性割合は保健所での受検者に比べ高い割合であり、コミュニティセンターを活用した検査会が有効であったと考えられる検査会利用者は大阪府在住のゲイが多く、コミュニティセンターdista利用者とほぼ同じであった。新規に判明したHIV陽性割合は保健所での受検者に比べやや高い割合であり、コミュニティセンターを活用した検査会が有効であったと考えられる。
初年度はコホート体制や検査体制を整備し、2年度目、3年度目でコホート構築を目指した。登録者目標数300人、フォローアップ目標数100人としていたが、コホート登録者は3年間で237人となり、目標の79.0%の達成率(2017年11月時点)となった。
コホートの継続率は18.1%と低く、このうち追跡中の新たなHIV抗体抗原新規陽性者は0人、梅毒抗体抗原新規陽性者は1人であった。HIV感染罹患率は計算できなかったが、人年法により梅毒感染罹患率は2.20%/年(95%信頼区間:-2.06%~6.46%)であると推計した。
結論
これまでに指紋登録した237人中43人の追跡ができ、MSMを対象とした血液検査と連動させた前向きコホート体制は構築できたと考える。登録者は現在も増加しつつあるが再受検者が少ないことが課題である。本検査会は大阪市とMASH大阪(コミュニティセンターdista)が協働し、研究としてコホートの仕組みを伴った形で、次年度以降も継続される。今後もデータを蓄積していくことで意義のある研究成果が得られると考える。
MSMを対象とした血液検査と連動させた前向きコホートの構築は国内で初めてであり、罹患率の推計に十分な数まで規模を拡大することができれば、将来的に新たに展開される予防介入の効果評価を効率的にすすめていく上で重要な基盤となり学術的意義がある。また大阪地域でも継続することにより、HIVおよび梅毒における新規罹患率の推定精度が上がることが期待でき、MSMを対象とした予防啓発活動の評価指標の一つとなる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
2018-07-11

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
2018-07-11

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201719021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでに指紋登録した237人中43人の追跡ができ、MSMを対象とした血液検査と連動させた前向きコホート体制は構築できたことは学術的意義が高いと考えられる。また本研究で実施した検査会は大阪市が事業化し、MASH大阪(コミュニティセンターdista)と協働で、次年度以降も継続された。
臨床的観点からの成果
現時点ではHIV感染の推計は困難であったが、梅毒感染の罹患率推計は2.20%/年(95%信頼区間:-2.06%~6.46%)であった。コホート登録者における再受検率は低いが徐々に増加しており、今後も検査会を継続しデータを蓄積していくことができれば、予防啓発活動の浸透と成果を測る上で、有効な指標となりうると考える。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
本研究で実施した検査会は大阪市が事業化し、MASH大阪(コミュニティセンターdista)と協働で、次年度以降も継続された。この行政とNGOとの協働については第75回日本公衆衛生学会総会、シンポジウム36「エイズをめぐる公衆衛生とLGBT当事者団体との連携」、2016年、大阪で公開した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
金子典代,塩野徳史,内海眞,他
成人男性のHIV検査受検,知識,HIV関連情報入手状況,HIV陽性者の身近さの実態-2009年調査と2012年調査の比較-
日本エイズ学会誌 , 19 (1) , 16-23  (2016)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201719021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,022,000円
(2)補助金確定額
4,022,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 709,620円
人件費・謝金 241,150円
旅費 57,720円
その他 2,085,525円
間接経費 928,000円
合計 4,022,015円

備考

備考
支出には補助金の交付により生じた預金利息15円が含まれるため。

公開日・更新日

公開日
2019-02-21
更新日
-