MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201719007A
報告書区分
総括
研究課題名
MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入方法の開発に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩橋 恒太(特定非営利活動法人akta)
  • 健山 正男(国立大学法人 琉球大学大学院医学系研究科 感染病態制御学講座分子病態感染症学分野)
  • 和田 秀穂(川崎医科大学 血液内科学)
  • 塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
17,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下3点である。
1.医療機関とMSMをサポートするNPO aktaが連携した検査システム「HIVcheck.jp」を活用し、ハイリスクMSM層の検査受検推進を図る。また本検査手法を用いて、受検者のHIV感染ステータスと行動データをリンクさせた血清行動疫学調査を実施し、ハイリスク群の明確化をはかる。
2.地方都市で、地域性に配慮した形で公的機関以外の医療機関等を活用したHIV検査の提供体制を整備し、対面型の接触を避けるMSMへの検査促進を行う。
3.当事者NGOが協働し、従来の予防介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握と有効な介入方法の検討を行う。
研究方法
本研究では、都市部では「HIVcheck.jp」を活用した検査機会の拡大、本検査により明らかになる受検者の感染ステータスと質問紙調査による行動データをリンクさせた血清行動疫学調査を実施する。また、地方都市では、急性感染期の症状を見逃さず適切に検査が提供できるよう医療職種への啓蒙と、コミュニティに向けて急性感染期に関する情報発信を同時に行う。また中四国地域で、医療機関等を活用した検査提供体制の整備を図り検査機会を拡大する。またNGOが協働し、従来の予防介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握と有効な介入方法の検討を行う。具体的には、研究1.自己検査キットによる検査機会の拡大と血清行動疫学調査の実施、研究2.地方における新たな検査機会の開発‐医療者からの検査推奨によるMSMの検査受検環境改善、研究3. 地方における新たな検査機会の開発‐クリニック・診療所における検査機会の拡大、研究4. 地方都市での陽性者の検査・予防サービスの接点に関する調査、研究5.よりハイリスクなMSM層の解明と有効な介入方法の検討の分担研究により遂行する。
結果と考察
研究1では、検査結果通知と受診へのつなぎのWEBシステムの構築を行った。コミュニティセンターaktaでの検査キットの配布を2018年2月26日より開始し97名の受け取りがあった。検査結果と行動調査をリンクさせる血清疫学行動調査を実施しており、98%の対象者からの同意を得ている。また本プログラムが首都圏MSMへの検査行動に影響を与えうるかの評価のための質問紙調査を男性と性交渉経験のある885件の有効回答を得た。HIVcheckの認知は41.4%、今後利用したいと回答したものは72.0%であった。
研究2では、医療者からの検査勧奨を促進するため、急性感染期を疑う症状をまとめた医療者向けパンフレットを1000部作製し沖縄県内の医療機関に配布した。2018年3月にMSM向けの検査をコミュニティセンターmabuiにおいて実施し、HIVと梅毒の検査を提供した。MSM対象のアプリを活用した広報を行い22名の利用があった。
研究3. 中四国地域のMSMへの検査勧奨のため、岡山県ではMSM向けクリニック検査を行政とクリニックとNGOが協働して実施した。2018年の夏のキャンペーンでは31名の利用があり、1名のHIV陽性と4名の梅毒陽性が判明した。また、冬のキャンペーンでは、25名の利用があり、梅毒は4名の陽性が判明した。2019年度からの中四国地域での検査の拡大展開のため、香川県や愛媛県と協議を進め協力クリニックを選定が行われた。研究4. 本年度は、調査実施方法の検討、質問紙の作成を行った。研究5.全国のCBOと調査方法、質問項目を検討し、よりハイリスクな層を明確化するために、従来の項目に加えインターネット利用に関する項目、TasP、PrEPに関する知識について尋ねる質問項目も加え、新たな質問紙を作成した。中四国、仙台、横浜のゲイ向け商業施設70店舗の協力を得て、総計1,290部の質問紙を配布し、984部回収した(回収率76.3%)。
結論
わが国では未達成である「90%の陽性者が自身の感染ステータスを把握する状況」の到達のためには、MSMへの更なる検査拡充が必須である。首都圏での「HIVcheck.jp」のとりくみがMSMコミュニティにて浸透しうるかを検証する試みについては、行政や医療機関にも幅広く成果を公表し、今後の検査のあり方への検討へつないでいく。
地方都市での検査促進の取り組みについても、いずれもNGOと行政と医療との協働による取り組みとなっており、成果を近隣に波及させる取り組みも行っている。NGO、行政、医療の連携による民間クリニックを活用したMSMへのHIV検査の事業化に成功したモデル事例を周辺県にも拡大させていく。従来の商業施設ベース型の介入が届きにくかったハイリスクMSMの実態把握調査により、よりハイリスクな層へのアウトリーチ、新たな感染を抑制する試みへとつなげていく。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,987,000円
(2)補助金確定額
20,015,152円
差引額 [(1)-(2)]
-28,152円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,737,257円
人件費・謝金 2,183,906円
旅費 3,620,540円
その他 8,866,449円
間接経費 2,607,000円
合計 20,015,152円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-21
更新日
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