文献情報
文献番号
201719006A
報告書区分
総括
研究課題名
外国人に対するHIV検査と医療サービスへのアクセス向上に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
北島 勉(杏林大学 総合政策学部)
研究分担者(所属機関)
- 沢田 貴志(神奈川勤労者医療生活協同組合 港町診療所)
- 宮首 弘子(杏林大学 外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,994,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
近年、我が国の外国人男性のHIV陽性報告数は増加傾向にあり、男性同性間の性的接触による感染が多数を占めつつある。また、日本語や英語で十分なコミュニケーションをとれない外国人の受診が遅れることも明らかになっている。そこで、本研究では、HIV検査受検促進や陽性者への医療関連サービスへのアクセスの改善をめざし、自治体との連携モデルを構築することを目的とする。
研究方法
本研究では、以下のような一連の調査・検討を行った。（1）在留外国人のHIV検査受検に結びつく効果的な介入方法を検討するために東京都内の日本語学校に在籍している留学生769人を対象に、HIVの知識やHIV検査や医療サービスに関する知識や利用状況などについて質問票による調査を平成29年9月から12月に実施した。（2）自治体におけるHIV検査時の説明資料の効果的な活用方法を検討するために、英語・中国語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語によるHIV検査受検支援ツール（以下、支援ツール）を保健所等のHIV検査を提供している施設10カ所で試用してもらった。（3）HIV及び結核の検査・治療に活用できる医療通訳を育成するための研修を行った。（4）海外のエイズ対策に関する情報収集と研究成果の発信を行った。
結果と考察
（1）については、回答者の83.9％がどこでHIV検査を無料・匿名で受診できるかを知らなかった。HIV検査や医療に関する母国語での情報提供、医療通訳の利用可能性、母国でのHIV検査受検経験がHIV検査の受検に結びつく可能性が示唆された。（2）については、各施設の担当者からのフィードバックをもとに支援ツールの文字の大きさや画面の切り替え、スマートフォンへの対応などの改良を行った。（3）については、座学の研修には39人の参加者があり、HIVと結核について理解を深めてもらうことができた。また、中国語、ベトナム語、フィリピン語、ネパール語の通訳者16人を対象としてロールプレイを用い、通訳の技能を測定するとともにその向上を図った。（4）については、第2回Asia-Pacific AIDS & Co-infections Conference（香港）に参加し、前年度通訳研修の成果について報告した。International AIDS Societyの学術大会（パリ）に参加し、移民に対するHIV対策について情報収集を行った。また、ベトナム国ホーチミン市内のNGO訪問し、HIV対策に関する情報収集を行うとともに、ネットワーク作りを行った。さらに、海外におけるPre-exposure Prophylaxisの費用対効果に関する文献レビューを行った。
結論
これまでほとんど状況が把握されてこなかった東京都内の日本語学校の留学生を対象とした調査を実施することができた。HIV検査や医療に関する母国語での情報提供、医療通訳の利用可能性、母国でのHIV検査受検経験がHIV検査の受検に結びつく可能性が示唆された。3年度目は、これらの結果をもとに、改良された支援ツールやこれまで養成してきた医療通訳者といった資源を活用し、在留外国人を対象としたHIV検査受検促進キャンペーン活動を実施し、その効果を検討して行きたい。キャンペーンを実施する際には、近隣諸国のHIV対策を行っているNGOや研究者のネットワークを通して、情報発信をする予定である。
公開日・更新日
公開日
2018-06-01
更新日
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