HIV感染症の合併症に関する研究

文献情報

文献番号
201719005A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の合併症に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村浩太郎(自治医科大学 外科学講座 形成外科学部門)
  • 南本 亮吾(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 放射線核医学科)
  • 中野 隆史(群馬大学 重粒子線医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
35,293,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病/HIV感染者は、感染から30年という長い経過をもつという特徴がある。過去にd-drugを服用した時期もあり、リポジストロフィで苦しむ患者も多い一方、今後agingに伴うエイズに関連しない悪性腫瘍や認知症などの発症が、HIV感染症の経過の長さゆえ、他のHIV感染者に比べ多くなる可能性も危惧される。本研究では、血友病/HIV感染者のこれら問題点を解決する目的で、リポジストロフィに対する治療法の検討(分担1)と悪性腫瘍(分担2)及び認知症(分担3)のスクリーニングを行う。また、血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌は、進行が速く、通常の肝臓癌の治療だけでは、予後の悪い患者が散見されている。このため、分担4として、重粒子線による肝細胞癌治療の安全性及び有効性の確認を前向き観察研究として実施する。
研究方法
分担1:リポジストロフィに対する治療法の検討では、BMI>20の患者においては、大腿部、腰背部、腹部より、脂肪吸引法により皮下脂肪を採取し、顔面の脂肪萎縮部位に注入移植術を行う。BMI<20の患者においては、脂肪採取に危険が伴うため、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane&reg;)注入術を行う。採取した脂肪組織の一部を研究目的に使用する。治療成績は、術前と術後で、写真、ビデオ、CT(もしくはMRI)を用いた3次元画像解析により、12か月後に最終評価する。必要に応じて、組織生検を行う。
分担2:agingに伴う悪性腫瘍の早期発見に関する研究では、早期発見に適したスクリーニング法を開発する目的で、FDG-PETと部位特異的な検査を組み合わせた検査を実施する。対象患者数は、当院に主として通院している血友病患者約50名とする。
分担3:agingに伴う認知症の罹患率に関する研究では、認知症スクリーニング目的で、FDG-PETを実施する。この部分は、分担2と共通部分である。対象患者数も同じである。本研究では、認知症としてHANDに限定せずagingに関連するアルツハイマー型認知症などもカバーする。また、血管障害をカバーするために一部の症例においてはMRIも実施する。
分担4:血友病/HIV/HCV重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験では、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて、1日1回炭素イオン線照射を行う。
結果と考察
分担1:HIV関連脂肪萎縮症の顔面脂肪萎縮に対し、4例において脂肪移植術、2例においてヒアルロン酸骨膜注入術を施行し、12か月後の長期追跡を行った。CTスキャンおよびMRIによる解析では、脂肪の平均生着率は41.7%で、ヒアルロン酸はそのままの状態で残存していたのは15.2%であったが、線維などの自己組織への置換を介してその体積は注入体積の100%近く維持されていた。採取した脂肪の遺伝子解析では脂肪分化抑制と慢性炎症が、細胞分析では脂肪幹細胞の減少やM1マクロファージの増加、M2マクロファージの減少が示唆された。
分担2:2017年度末時点で69例まで調査を行った。受診年齢層は40歳代をピークとしており、PETがん検診を受診するピーク層よりも若年が対象である。 1巡目のスクリーニングで、現在までのところ甲状腺癌3例、膵臓神経内分泌腫瘍1例が見つかっている。この結果は、予想をはるかに上回る有病率の高さである。
分担3:分担2と同じ患者69例で、PETの集積低下が見られたのは35例に達した。神経心理検査で、ANIおよびMNDと診断されたのは44%であった。これは、血友病以外のJ-HAND研究での25.3%よりも高い数字で会った。ただし、PETと神経心理検査の結果とは一致していなかった。2例に、アルツハイマー疑いが見られた。精神科による診断では、1例はアルツハイマー病の診断、1例は診断には至らず今後もフォローする必要がある。
分担4:今年度は「血友病/HIV/HCV共感染の肝細胞癌に対する重粒子線治療の有効性・安全性試験」のプロトコールを作成し、院内の倫理審査委員会にて承認を受けた。2例の相談を受け医学的検討を行ったが、適格条件を満たさなかったため組み入れは行わなかった。
結論
リポジストロフィの術後経過を綿密に観察できた。また、癌認知症スクリーニングで、癌が4例、アルツハイマーが1例発見されたが、予想より高率であった。重粒子線治療は今年度適応症例がなかったが、、今後全国規模でのアナウンスを行い、症例を確保していきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-05-28
更新日
2018-05-31

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201719005Z