新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201718014A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化に関する研究
課題番号
H29-新興行政-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構本部総合研究センター)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 田辺 正樹(三重大学医学部附属病院)
  • 奥村  貴史(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
  • 中島 一敏(大東文化大学スポーツ健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 これまでの研究によって開発された初期の疑い症例情報を集約するシステムについて実際の発生シミュレーション演習を通じて継続的に評価し実用レベルのシステムにすること。パンデミックの進展に伴って変化して行く疫学状況を経時的に評価していくために、既存の感染症法よる入院サーベイランスによって重症度が評価できるかどうかについての検討を行うとともに、NCDAを使用して、リアルタイムで新型インフルエンザの重症度とインパクトを評価出来るサーベイランスシステムを樹立することを目的としている。
 我が国ではパンデミックに備えて、抗インフルエンザウイルス薬やプレパンデミックワクチンが備蓄されているが、周辺の状況は常に変化しており、これらは上述のサーベイランスや重症度評価体制とも大きく関わってくるため、プレパンデミックワクチンや抗ウイルス薬の備蓄の再評価は極めて重要なものである。本研究班では、状況の変化に合わせて、経時的にこれらの備蓄状況を再評価し、また今後の評価の枠組みを考えていくためにも、世界のパンデミックリスクアセスメントの状況を調査すると伴に、我が国での評価体制の整理のために必要な資料の作成を目指す。
研究方法
 初期症例情報集約発生時シミュレーションの方法を検討し、遠隔会議システムを用いた発生時シミュレーション方法を計画したのち、シミュレーションを行い、課題を整理した。
 現行の感染症法に基づくインフルエンザ入院サーベイランスシステムについて米国CDCのサーベイランスシステム評価のガイドラインに従って評価を行った。
 NCDAのデータベース構造を解析評価するとともに、詳細な臨床経過の記述のために、電子カルテに入力されるデータとNCDA内のデータを比較検討し、抽出可能なデータ項目を検討ののち設定した。
 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について、オセルタミビルの倍量・倍期間投与の有効性についてのLiterature reviewを行い、そのエビデンスレベルを検討した。また、現在の抗ウイルス薬の備蓄を検討するため、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)および販売量データを用いて、季節性インフルエンザにおける抗インフルエンザウイルス薬の使用量調査を行なった。
 プレパンデミックワクチンの備蓄のためのリスクアセスメント方法の検討のため、WHOのTIPRA及びCDCのIRATに関する文献的考察、また、米国CDCにおいてIRATの手法について議論を行った。
結果と考察
 パンデミック発生早期の症例情報の収集システムは、厚生労働省対策推進本部、地方自治体、保健所の業務環境を再現した国内患者発生シミュレーションを実施し、提案手法による症例・検体情報の収集と共有が実用的であるかの検証と今後の改善に向けた課題の整理を行った。
 インフルエンザ入院サーベイランスの報告率は非常に高く、CompletenessおよびData qualityも満足できるレベルであるが、代表性についての評価は困難であり、医療機関への負荷の評価については、医療負荷の指標となる、医療機器の使用期間やICUの入室期間の情報が不足していることもわかった。
 NCDAのデータは、これまでに検討してきたMIAと同等の評価が可能で、インフルエンザの重症度と医療機関への負荷は、分母情報をもって、毎シーズンを比較できる形で評価できることが判明し、電子カルテデータベースとしての、個々の症例の詳細な臨床データを用いてより詳細な重症度評価と臨床的な記述ができることが判明した。
 オセルタミビルの倍量・倍期間投与の有効性については、過去の報告からは明確なエビデンスを見いだすことはできず、これは厚生労働科学審議会新型インフルエンザ対策小委員会において資料として提出された。実際の季節性インフルエンザにて国内で使用されている抗ウイルス薬を調査したところ、データソースによって相違があり、特にタミフルとラピアクタにてその相違が大きかった。
 米国では、CDCの開発したパンデミックリスクアセスメントツールによって、プレパンデミックワクチンの備蓄などの検討に用いられており、そのアルゴリズムなどを検討したところ、これらは系統的で透明性が高く、今後本邦でも同様の評価方法が必要なことを示した。
結論
 パンデミック対策は季節性インフルエンザの延長線上にあり、平常時からそのインパクトや重症度を評価できるサーベイランスを整備しておく必要があり、パンデミック発生時にも慌てずに対処するためには、平常時の状況を絶えずモニターし、それらを通して得られる、きちんと説明できるエビデンスを持って、パンデミック対策を考えておくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201718014Z