災害派遣精神医療チーム(DPAT)の機能強化に関する研究

文献情報

文献番号
201717026A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)の機能強化に関する研究
課題番号
H28-精神-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡 路子(公益社団法人 日本精神科病院協会 DPAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 太刀川 弘和(筑波大学 医学医療系・臨床医学域精神医学)
  • 大鶴 卓(独立行政法人 国立病院機構 琉球病院)
  • 山口 喜久雄(熊本県精神保健福祉センター 精神保健福祉分野)
  • 丸山 嘉一(日本赤十字社医療センター 国際医療救援部・国内医療救護部)
  • 久保 達彦(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 来住 由樹(岡山県精神科医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
12,647,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DPATの設立に伴い、災害時の精神科医療体制は着実に定着しつつあるが、その経時的な評価や、DPATと既存の地域精神保健体制との連携の議論はなされていない。また、それに基づく政策へのフィードバックも着手されていない。
本研究班は、超急性期から中長期にかけての連続性のある支援体制や、医療と保健などの幅広い分野との連携を目的に、過去の災害でのDPAT活動の実態を検証し、エビデンスに基づいたDPAT活動手法の開発を行うとともに、国・自治体および関係機関における現状を踏まえた災害時の精神科医療体制に対する提言を行う。
 本研究の成果は以下3点とする。
1.「DPAT活動マニュアル」の改訂に資するエビデンスの構築
2.DPAT活動の実態に即した情報支援ツールの実用化
3.DPAT活動に必要な精神保健医療機関のネットワークや各機関のフェイズごとの
役割と連携のあり方を明確化し、DPAT活動マニュアルに反映、DPAT研修で周知
研究方法
DMHISSに蓄積されている個票データから1)被災者の精神症状、精神科診断、2)被災地で実施した個別対応の特性を分析し、DPAT活動に即した個票データセットを開発した。熊本地震で活動したDPAT隊員へのアンケート調査の結果を解析し、DPAT活動の課題を解決するための対策を提示した。熊本県における中長期の活動を検証し、超急性期から中長期への連続した災害精神保健医療体制を検討した。一方、医療と心理社会的支援の連携については日赤こころのケアチームとの連携モデルを検証した上で、支援者支援に関するマニュアル作成を進めた。さらに、全自治体に対し、災害時の精神科医療体制の現状を調査し、平成30年度より医療計画に盛り込まれた災害拠点病院機能の現状を分析した。上記の結果を踏まえ、本研究班として、現行のDPAT活動マニュアルの改訂案と、DPAT活動に必要な情報支援システムの実用案を提示した。
結果と考察
DMHISSに蓄積されている過去のDPAT活動実績を分析し、精神症状は、不安・不眠・気分・情動・身体症状が、頻度の多い中核症状であること、一方で問題行動は主に統合失調症圏、器質性精神障害圏によって生じており、既存障害への対応も重要であることが確認された。さらにこれまでの災害での相談ニーズは発災2週間後までに最大となるため、急性期支援は重要であることが確認された。これを踏まえ、DPAT活動に即した個票データセットを開発した。熊本地震で活動したDPAT隊員へのアンケート調査では、報告書等の様式統一、DPAT間および他団体との連携・情報共有の手法、派遣元の準備・支援体制の強化等の課題を抽出、DPAT活動マニュアルの具体的な改定項目案を提示した。また、熊本県における中長期の活動を検証し、発災後2か月から、精神保健医療分野でのニーズは減少していくため、フレキシブルに動くことができる地元の医療機関中心のL-DPATから市町村・保健所へのつなぎが重要であり、熊本県精神保健福祉センターとその主管課である障がい者支援課が主体となってその役割を担っていることがわかった。一方、医療と心理社会的支援の連携については日赤こころのケアチームとの連携モデルを検証した上で、支援者支援に関するマニュアル作成を進めた。また、平成30年度医療計画に盛り込まれた災害拠点精神科病院機能の現状を分析したところ、既存の災害拠点病院にある精神病床は全精神病床の3%しかなく、今後想定される大規模地震等における精神科医療ニーズには対応できないことが明らかであった。さらに既存の精神科病院における災害時入院患者受入可能数からは、南海トラフ地震の際には自ブロックのみでの受入は不可能であること、さらにDPATの派遣機能を有する病院が18%に留まっていることから、大量患者の一時避難を含む広域搬送とDPAT体制整備の更なる必要性が示唆された。上記の結果を踏まえ、本研究班として、現行のDPAT活動マニュアルの改訂案と、DPAT活動に必要な情報支援システムの実用案を提示した。
結論
今年度の結果を踏まえ、平成30年3月末に厚生労働省によるDPAT活動要領の改訂、およびDPAT事務局によるDPAT活動マニュアルの改定が行われた。また、同年4月にはDPATが活用する情報支援システムJ-SPEEDの運用が開始された。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
14,992,990円
差引額 [(1)-(2)]
7,010円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,923,196円
人件費・謝金 3,717,281円
旅費 3,855,204円
その他 3,144,309円
間接経費 2,353,000円
合計 14,992,990円

備考

備考
旅費の支出計算に誤差があったため。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
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