障害児支援のサービスの質を向上させるための第三者評価方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201717015A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児支援のサービスの質を向上させるための第三者評価方法の開発に関する研究
課題番号
H29-身体・知的-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
  • 松葉佐 正(芦北療育医療センター)
  • 渡辺 顕一郎(日本福祉大学 子ども発達学部)
  • 堀口 寿広(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部)
  • 安達 潤(北海道大学 大学院教育学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
8,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年広がりを見せている障害児者支援の事業所には、サービス事業所間の支援の質の格差が大きいことが課題となっており、第三者評価導入の必要性が指摘されている。しかしながら、任意で受審する既存の第三者評価の仕組みは、十分に普及しているとは言いがたく、評価に使用する項目の作成だけでなく評価者の養成方法、また、評価方法としての普及促進のための方策もあわせて検討する必要がある。本研究は、合理的な手法に基づき障害児支援の第三者評価方法を提示することを目的とする。
研究方法
 平成29年度は国内外の先進的な地区や機関、当事者団体などを訪問しヒアリングや有識者インタビュー、利用者アンケートなどにより評価項目草案を作成のうえ評価者養成講座の内容や方法を検討し、モデル案の試行・検証を行う。
 国内については第三者評価を行っている全国社会福祉協議会、東京都福祉保健財団、大阪府の評価項目を検討する。さらに県独自の事業所評価を行っている福島県、放課後等デイサービス事業所ヒアリングと利用者アンケートを行う。既存の評価項目や先行研究等の文献に基づき作成した項目草案を、実際に放課後等デイサービス及び福祉型入所施設の管理者、一般職員、利用者(家族等)へ面接調査をし項目内容の妥当性を検討する。またインタビュー等により、支援者・利用者・行政職員等の第三者評価制度の有用性や問題点などの意識を明らかにし、普及推進活動を検討する上で参考となる基礎的資料を得る。海外についてはイングランドの第三者評価機関であるOfsted (The Office for Standards in Education, Children's Services and Skills), CQC(The Care Quality Commission)、及びスコットランドの第三者評価機関であるthe Care Inspectorate等を訪問し評価システムのあり方を学ぶ。評価者養成研修について、国内外の先行事例で使用している教材を収集し内容と構成を分析する。
結果と考察
 イングランドでは査察のフレームワークとして①安全、②有効性、③ニーズへの対応、④アウトカムのエビデンスが、スコットランドでは①良いリーダーシップ、②良い職員、③利用者と介護者の良好な関与が重視されていた。さらに評価のストラクチャー、ブロセス、アウトカム評価の方法を学び、我が国の課題と研究の方向性が明確になった。スコットランドでは2018年に従来福祉サービス種ごとに制定されていたスタンダードが領域横断的に統合され、当事者主体が重視されるようになったことがわかった。
 一連の国内外調査から①受審事業所の負担軽減を考慮すべく項目草案との重複項目の整合化や手順の検討も必要であること、②事業所の特色を評価する多様な評価軸を追加する必要性が示され評価項目草案に反映させた。従来の評価軸としてのサービス事業所の管理運営、配慮、専門性に応じたサービス提供に関する項目に加えて、利用者の社会参加と地域生活支援、家族等との連携・交流と家族支援といった社会的な支援を意識した評価軸を加えた。 国内外の調査で得られた既存の第三者項目の特色と問題点を考慮し、全社協の項目を中心にし、東京都・大阪府の項目を結合して整理するのが適切と考えられた。その結果、各サービス共通の「組織マネジメント評価」49項目、「サービス共通評価」20項目、各サービス独自の「サービス種別評価」が放課後デイ9項目、入所型施設17項目となった。研修には座学と受講者同士の実習の双方が用いられ、研修の様子は映像で記録すること、遠隔地研修を可能とするe-learningの推進と、研修資料には冊子媒体に加えDVD等の制作も必要と考えた。
結論
 現在我が国での第三者評価はイングランドやスコットランドと比較して問題点が大きく、ストラクチャーについては評価者の養成方法や資格要件について、プロセスについては評価の密度が低く時間も短い点、アウトカムの指標についてもWebで結果が詳細に公開されていないことなどが検討点である。
 本研究により浮き彫りになった第三者評価の改善点について、評価者研修を行うことでより客観的で公正な評価が可能となり、事業所およびサービスの質と内容の向上を目指すことができる。また、虐待などの不適切な支援を防止する事業所内部の改善ツールとして用いることも期待される。
 今後、我が国の障害児支援サービスの質を向上させるためには、障害児支援機関を対象にしたエビデンスにもとづく第三者評価の実施が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201717015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,440,000円
(2)補助金確定額
11,440,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,367,218円
人件費・謝金 1,139,988円
旅費 3,916,111円
その他 2,376,683円
間接経費 2,640,000円
合計 11,440,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
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