障害児入所支援の質の向上を検証するための研究

文献情報

文献番号
201717007A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児入所支援の質の向上を検証するための研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
北住 映二(心身障害児総合医療療育センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 米山 明(心身障害児総合医療療育センター 小児科 )
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター 整形外科)
  • 下山田 洋三(愛徳医療福祉センター 小児科)
  • 小山 友里江(北里大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全種別の福祉型と医療型の障害児入所施設における、入所児童の状況、被虐待児の状況、支援の実態と課題を明らかにする。
研究方法
福祉型と医療型の全種別の障害児入所施設に対し、調査票方式で①入所児童の状況、支援体制、支援内容等についての調査、②被虐待児童の数、個々の児童の状況、支援体制等の調査(施設調査票、個人票による調査)、③心理担当職員、ソーシャルワーク担当職員の配置状況とその業務内容や課題についての調査(施設票と個人票による)を実施した。職員の業務の内容につきタイムスタディ調査を行った。実践好事例として小規模グループケア(ユニットケア)についての検討を行った。
結果と考察
調査票を送付した492施設の282施設(57%)から回答あり入所児童総数5759名だった。知的障害児施設においても自閉症を主とする「発達障害」児か「発達障害」を伴う児が多い傾向があり行動上の困難さのある入所児童が多数だった。肢体不自由児施設では知的障害を伴う児童が多数であり重症心身障害児が福祉型施設で14.5%医療型肢体不自由児施設で40%だった。福祉型施設では、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童相談所一時保護所からの入所が27~32%で、医療型施設においても乳児院、児童養護施設からの入所が約11%だった。措置による入所が半数を越え、外泊、帰省が年1~2回程度か無しの児童が全入所児童の66%に上っていた。ほとんどの種別の施設において配置基準以上の職員配置がなされていた。多くの施設が、保護者、家族への支援を関係機関とも連携しながら行っているが、自由記載で多くの問題が指摘されている。職員確保の困難性についての指摘が多数あった。<被虐待児調査>児童相談所が認定している「被虐待児童」と児童相談所の認定はないが施設判断として虐待があるか強く疑われる「被虐待疑い児童」につき調査した。対象492施設中423施設(86%)から回答があった。回答施設の全入所児童数9016名で、うち「被虐待児童」は2200名、「被虐待疑い児童」は640名で、合計の全被虐待児童は2840名で入所児童の31.5%だった。福祉型肢体不自由児施設で50%、医療型自閉症児施設で43%、知的障害児施設で42%だった。過去の調査と比較して被虐待児の比率が増加していると考えられた。個人票による調査は206施設から1772名の個人票が返送あり。1461名(82%)は虐待を受ける前に基礎疾患、障害があり、その内容は知的障害78%、脳性麻痺8%だった。397名(22%)は虐待の結果、基礎疾患や障害が生じたりその程度が悪化していた。虐待の内容はネグレクトが1164名(66%)と最も多く身体的虐待が776名(44%)であった。養育者の問題では、知能の問題が488名(32%)にみられた。児の問題では疾病・障害が945名(62%)と全ての要因の中で最多で、疾病や障害が障害児虐待のハイリスクになっていることが示され、家庭の問題では経済的不安定が699名(46%)、育児負担過大が493名(32%)みられており、障害児虐待発生の予防として養育者へ支援が重要であることが示された。<心理担当職員、ソーシャルワーク担当職員についての調査>心理職員について施設票は125施設から、個人票は209名から、ソーシャルワーク担当職員は、施設票は142施設から、個人票は275名から回答があった。心理担当職員の常勤のうち半数が入所児童への心理業務以外の児童の直接支援業務等との兼務だった。ソーシャルワーク担当職員として専門職が配置されているのは37施設のみであった。自由記載意見では多くの課題と問題点が指摘されていた。<タイムスディ調査>福祉型、医療型計10施設を対象に、ボイスレコーダーによる音声記録(一部ウェアラブルカメラでの記録)も併用しながら実施シートへ1分間ごとの業務内容をコードで記載し、それを分析した。一人の職員が同時刻に多重課題を実施しているという現実が顕著に表れた結果となった。生活介護業務にかかわる時間が多い傾向は、医療型・福祉型問わず、それぞれの施設に入所している子どもの重度化・重症化が背景にあるものと推察された。<小規模グループケア(ユニットケア)の実践と今後の在り方の検討>好事例として、小規模グループケア(ユニットケア)を実践している福祉型と医療型障害児入所施設につき確認検討し、入所施設において増加しつつある被虐待障害児への適切な支援を踏まえた今後の障害児入所施設の今後の有るべき姿につき、検討し考察した。
結論
全ての種別の障害児入所施設についての調査が行われたのは今回が初めてである。福祉型および医療型の障害児入所施設における、最近の児童の状況や支援体制、被虐待児童の状況などについて、重要なデータが把握された。これを踏まえ、今後のあり方につき提案を行った。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201717007B
報告書区分
総合
研究課題名
障害児入所支援の質の向上を検証するための研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
北住 映二(心身障害児総合医療療育センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 米山 明(心身障害児総合医療療育センター 小児科)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター 整形外科 )
  • 下山田 洋三(愛徳医療福祉センター 小児科 )
  • 小山 友里江(北里大学 看護学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
福祉型と医療型の障害児入所施設における入所児童の状況、被虐待児の状況、支援の実態と課題を明らかにする。
研究方法
福祉型と医療型の全種別の障害児入所施設に対し調査票方式で①入所児童の状況、支援体制、支援内容等についての調査、②被虐待児童の数、個々の児童の状況、支援体制等の調査(施設調査票、個人票による調査)、③心理担当職員、ソーシャルワーク担当職員の配置状況とその業務内容や課題についての調査(施設票と個人票による)を実施した。職員の業務の内容につきタイムスタディ調査を行った。実践好事例として小規模グループケア(ユニットケア)についての検討を行った。
結果と考察
調査票送付492施設の282施設(57%)から回答あり入所児童総数5759名だった。知的障害児施設においても自閉症を主とする「発達障害」児か「発達障害」を伴う児が多い傾向があり行動上の困難さのある入所児童が多数だった。肢体不自由児施設では知的障害を伴う児童が多数であり重症心身障害児が福祉型施設で14.5%医療型肢体不自由児施設で40%だった。福祉型施設では、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童相談所一時保護所からの入所が27~32%で、医療型施設においても乳児院、児童養護施設からの入所が約11%だった。措置による入所が半数を越え、外泊、帰省が年1~2回程度か無しの児童が全入所児童の66%に上っていた。ほとんどの種別の施設において配置基準以上の職員配置がなされていた。多くの施設が、保護者、家族への支援を関係機関とも連携しながら行っているが、自由記載で多くの問題が指摘されている。職員確保の困難性についての指摘が多数あった。<被虐待児調査>児童相談所が認定している「被虐待児童」と児童相談所の認定はないが施設判断として虐待があるか強く疑われる「被虐待疑い児童」につき調査した。対象492施設中423施設(86%)から回答があった。回答施設の全入所児童数9016名で、うち「被虐待児童」は2200名、「被虐待疑い児童」は640名で、合計の全被虐待児童は2840名で入所児童の31.5%だった。福祉型肢体不自由児施設で50%、医療型自閉症児施設で43%、知的障害児施設で42%だった。過去の調査と比較して被虐待児の比率が増加していると考えられた。個人票による調査は206施設から1772名の個人票が返送あり。1461名(82%)は虐待を受ける前に基礎疾患、障害があり、その内容は知的障害78%、脳性麻痺8%だった。397名(22%)は虐待の結果、基礎疾患や障害が生じたりその程度が悪化していた。虐待の内容はネグレクトが1164名(66%)と最も多く身体的虐待が776名(44%)であった。養育者の問題では、知能の問題が488名(32%)にみられた。児の問題では疾病・障害が945名(62%)と全ての要因の中で最多で、疾病や障害が障害児虐待のハイリスクになっていることが示され、家庭の問題では経済的不安定が699名(46%)、育児負担過大が493名(32%)みられており、障害児虐待発生の予防として養育者へ支援が重要であることが示された。<心理担当職員、ソーシャルワーク担当職員についての調査>心理職員について施設票は125施設から、個人票は209名から、ソーシャルワーク担当職員は、施設票は142施設から、個人票は275名から回答があった。心理担当職員の常勤のうち半数が入所児童への心理業務以外の児童の直接支援業務等との兼務だった。ソーシャルワーク担当職員として専門職が配置されているのは37施設のみであった。自由記載意見では多くの課題と問題点が指摘されていた。<タイムスディ調査>福祉型、医療型計10施設を対象に、ボイスレコーダーによる音声記録(一部ウェアラブルカメラでの記録)も併用しながら実施シートへ1分間ごとの業務内容をコードで記載し、それを分析した。一人の職員が同時刻に多重課題を実施しているという現実が顕著に表れた結果となった。生活介護業務にかかわる時間が多い傾向は、医療型・福祉型問わず、それぞれの施設に入所している子どもの重度化・重症化が背景にあるものと推察された。<小規模グループケア(ユニットケア)の実践と今後の在り方の検討>好事例として、小規模グループケア(ユニットケア)を実践している福祉型と医療型障害児入所施設につき確認検討し、入所施設において増加しつつある被虐待障害児への適切な支援を踏まえた今後の障害児入所施設の今後の有るべき姿につき、検討し考察した。
結論
全ての種別の障害児入所施設についての調査が行われたのは今回が初めてである。福祉型および医療型の障害児入所施設における、最近の児童の状況や支援体制、被虐待児童の状況などについて、重要なデータが把握された。これを踏まえ、今後のあり方につき提案を行った。

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201717007C

収支報告書

文献番号
201717007Z