一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究

文献情報

文献番号
201716005A
報告書区分
総括
研究課題名
一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究
課題番号
H29-認知症-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 仁(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 伸弥(東京大学 医学部附属病院老年病科)
  • 石井 知行(医療法人社団知仁会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 在宅で生活する軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させる効果的なリハビリテーション手法を確立することを目的とする。
 本研究成果により、認知症やその進行を早期段階で予防するとともに、残存する生活機能を維持することができれば、住み慣れた地域での生活や就労を継続可能とし、結果的に介護者の介護負担を軽減させることで介護者への支援につながると考える。また、本法を地域高齢者に対するポピュレーションアプローチに応用・展開していくことにより、認知症への理解が深まり、認知症施策総合戦略の中で述べられている「認知症への対応に当たっては、常に一歩先んじて何らかの手を打つという意識を、社会全体で共有していかなければならない」ことの実現に貢献できるとともに、地域で活躍できる高齢者が増加することで、地域の活性化にもつながるといった波及効果が期待される。
研究方法
①新たなシステムの作成
 研究代表者である岡村は、株式会社 中電工との共同研究で、運動と認知トレーニングを組み合わせた他にはない認知機能障害改善システムを開発し、認知症高齢者の認知機能障害の改善に対する効果および安全性をランダム化比較試験により検証する臨床研究(UMIN試験ID: UMIN000022344)に取り組んできた。このシステムは、パソコンのディスプレー上に任意に表示された目標速度(回転数)の軌跡に近づけるように、上肢駆動が可能なエルゴメーターを駆動させ、目標回転数域(±5)に達しない場合警告音が発信される、運動+認知トレーニング法である。今回の研究では、MCI及び在宅で生活する認知症の人を対象とすることから、本システムをさらに簡便化するためにスマートフォンや家庭のテレビに繋げて実施でき、かつ楽しみながらトレーニングができる新たなシステムを作成することを試みた。
②生活機能改善プログラムの検討
 海外および国内の複数のデータベースを用い、「mild cognitive impairment(軽度認知障害)」「ADL(日常生活活動)」「Instrumental Activities of Daily Living(手段的ADL)」「randomized controlled trial(無作為化比較試験)」「systematic review(システマティックレビュー)」「meta-analysis(メタ分析)」のキーワードを組み合わせ、2000年以降に出版された論文について検索を行った。論文の選択にあたっては、2名の研究者が独立して行い、全文をチェックした後、方法論的な質、エビデンスレベルなどを評価したランダム化比較試験よりデータを抽出し、メタ分析を実施した。
 得られた結果と、先行研究でのシステマティックレビューやメタ分析の結果を総合的に評価し、MCIや初期認知症の人のADLの維持・向上に有用と考えられるプログラムを検討した。
結果と考察
①新たなシステムの作成
 従来のシステムから以下の点を改良した、新たな認知機能障害・周辺症状改善システムを作成した。
・軽量化し、持ち運びを可能とした。
・コードレス化するとともに、スマートフォン、タブレット端末、家庭のテレビに繋げても実施できる簡便なものとした。
・楽しみながらトレーニングができるよう、ゲーム性のある画面とし、難易度も3段階に設定した。
②生活機能改善プログラムの検討
 システマティックレビューを行い137件の論文を抽出し、一次スクリーニングで8件のメタ分析の論文を含む19件の論文を選定した。二次スクリーニングを経て、既存のメタアナリシスからの論文を加えた計9論文についてメタ分析を行った。その結果、MCIや初期認知症の人を対象としたADL介入は運動と認知トレーニングのみであり、運動のADL向上の有効性は示されたものの、認知機能改善への効果は結論付けられなかった。
 本結果から、新たなプログラムは見出せず、運動と認知トレーニングを組み合わせた①のシステムを新たな手法として今後の介入に用いるのが妥当と考えた。
結論
平成29年度の研究により、MCI及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させることを目指した新たなリハビリテーション手法が作成された。平成30年度以降は、作成した新たな手法の効果検証のため、在宅で生活しており、通所施設を利用しているMCIおよび初期認知症の人を対象に3か月間の介入を行い、認知機能、アパシー、ADL、さらには介護者の介護負担を効果指標としたランダム化比較試験を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-04-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-04-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201716005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,004,000円
(2)補助金確定額
5,004,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,079円
人件費・謝金 311,101円
旅費 38,420円
その他 3,488,400円
間接経費 1,154,000円
合計 5,004,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-