介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究

文献情報

文献番号
201715004A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究
課題番号
H27-長寿-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 裕(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 社会科学系 自立促進と介護予防研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
  • 荒井秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
  • 田中弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科 臨床栄養学)
  • 安藤雄一(国立保健医療科学院 予防歯科学)
  • 戸原 玄(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
  • 枝広あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 社会学系 自立促進と介護予防研究チーム )
  • 平野浩彦(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター病院 歯科口腔外科)
  • 渡部芳彦(東北福祉大学総合マネジメント学部産業福祉マネジメント学科)
  • 伊藤加代子(国立大学法人新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)
  • 小原由紀(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野)
  • 本間達也(医療法人生愛会総合リハビリテーション医療ケアセンター)
  • 大河内二郎(社会医療法人若弘会介護老人保健施設竜間之郷)
  • 糸田昌隆(大阪歯科大学医療保健学部口腔保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,494,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険において口腔と栄養管理の充実に係る改訂が行われ,診療報酬においても,歯科と栄養の連携が評価されることになった.しかしそれらに関するエビデンスに基づく連携,支援のあり方が提示されておらず,口腔管理と栄養管理のガイドラインの提示が急務となったことを受けて,要介護高齢者に対する口腔管理と栄養管理のガイドラインの作成を行った.
また,介護保険施設退所者が在宅療養を長く継続するには,退所後に生じる問題を早期に把握し解決する必要がある.そこで老人保健施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態を明らかにすること,口腔と栄養の状態が在宅療養の継続に与える影響について検討することを目的とした.
研究方法
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインの作成に関して,日本老年歯科医学会, 日本在宅栄養管理学会を通じてガイドラインに関するパブリックコメントを募集した.得られたパブリックコメントの内容に対して作業委員会で回答を作成し,ガイドラインの修正も行った.また,口腔管理および栄養管理に関するエビデンスの不足を補うために,既存データの追加分析を行い,アルツハイマー病高齢者の食生活の自立維持を目的とした身体組成,栄養状態に関する比較検討,介護老人福祉施設入所高齢者の摂食嚥下機能の簡易評価と死亡との関係,特別養護老人ホームにおける30ヶ月の死亡率とMini Nutritional Assessment®-Short Formとの関連,日本の介護施設入所者におけるCouncil of Nutrition appetite questionnaire(CNAQ) と死亡率との関係:1年間の縦断研究,日本のナーシングホーム入所者の自発摂食能力と死亡率に関する研究:2年間の縦断研究,介護保険施設利用者における複合プログラムに関する質的研究,要介護高齢者における口腔内および顔面の過敏症状軽減を目的とした手技の効果検証を行った.
また,介護保険施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態調査と在宅療養の継続に影響する因子の検討を行うとともに,介護保険施設退所者に対する口腔と栄養管理に関する無作為化比較対照試験を開始した.
結果と考察
アルツハイマー病高齢者の食生活の自立と身体組成,栄養状態に関する知見,介護老人福祉施設入所高齢者の摂食嚥下機能の簡易評価と死亡との関係,介護施設入所者の死亡率とMini Nutritional Assessment®-Short Form,Council of Nutrition appetite questionnaire(CNAQ) ,自発摂食能力との関係を明らかにした.介護保険施設利用者における複合プログラム,口腔内および顔面の過敏症状軽減を目的とした手技の効果,介護保険施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態調査と在宅療養の継続に影響する因子を明らかにした.これら知見はガイドラインの次期改訂に用いるよう準備している.
結論
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインは完成したが,既存のエビデンスがなく介護現場で有用なガイドラインとしては十分でないと思われる.今後は本研究事業で得られた口腔・栄養管理に関する評価,効果に関するエビデンスを追加,修正を行うとともに,改訂を行っていく必要がある.
在宅高齢者に対する多職種連携による経口維持支援の効果検証については,在宅療養を継続するには,摂食嚥下機能を回復し食形態を改善すること,在宅における口腔ケアを支援することが重要であることが示唆された.口腔と栄養に関する支援が在宅療養の継続に与える効果の創出と,それらに基づいた制度等の基盤整備および地域の支援体制の構築を行っていく必要がある.

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201715004B
報告書区分
総合
研究課題名
介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究
課題番号
H27-長寿-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 裕(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 社会科学系 自立促進と介護予防研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
  • 荒井秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
  • 田中弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科 臨床栄養学)
  • 安藤雄一(国立保健医療科学院 予防歯科学)
  • 戸原 玄(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
  • 枝広あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 社会学系 自立促進と介護予防研究チーム )
  • 平野浩彦(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター病院 歯科口腔外科)
  • 渡部芳彦(東北福祉大学総合マネジメント学部産業福祉マネジメント学科)
  • 伊藤加代子(国立大学法人新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科)
  • 小原由紀(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野)
  • 本間達也(医療法人生愛会総合リハビリテーション医療ケアセンター)
  • 大河内二郎(社会医療法人若弘会介護老人保健施設竜間之郷)
  • 糸田昌隆(大阪歯科大学医療保健学部口腔保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年度の介護報酬改定で,介護保険施設における口腔と栄養管理の充実に係る改訂が行われ,平成28年度の診療報酬改定においても,歯科と連携した栄養サポートチームに対する加算など,口腔と栄養の連携が評価されることを受けて,要介護高齢者に対する口腔管理と栄養管理のガイドラインの作成を行った.
また,ガイドライン作成にあたり,口腔管理および栄養管理に関するエビデンスが不足していたことから,これを補うことを目的に,これまで当該研究班員が行ってきた研究の結果の追加分析を行い,戦略的なエビデンスの作成を行った.
また,介護保険施設退所者が在宅療養を長く継続するには,退所後に生じる問題を早期に把握し解決する必要がある.そこで老人保健施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態を明らかにすること,口腔と栄養の状態が在宅療養の継続に与える影響について検討した.
研究方法
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインを日本老年歯科医学会,日本在宅栄養管理学会の協力を得て作成した.平成29年度に学会を通じてパブリックコメントを募集した.得られたパブリックコメントの内容に対して回答を作成し,ガイドラインの修正も行った.また,口腔管理および栄養管理に関するエビデンスの不足を補うために,既存データの追加分析を行い,アルツハイマー病高齢者の食生活の自立維持を目的とした身体組成,栄養状態に関する比較検討,介護老人福祉施設入所高齢者の摂食嚥下機能の簡易評価, Mini Nutritional Assessment(MNA-SF), Council of Nutrition appetite questionnaire(CNAQ), 自発摂食能力それぞれと死亡率との関係を検討した,また,介護保険施設利用者における複合プログラムに関する質的研究, 二次予防対象者における運動・口腔・栄養の複合プログラムの効果,通所サービス利用者における口腔機能向上および栄養改善の複合サービスの長期介入効果,介護保険施設入所者に対する口腔管理の効果,要介護高齢者における口腔内および顔面の過敏症状軽減を目的とした手技の効果検証を行った.
介護保険施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態調査と在宅療養の継続に影響する因子の検討を行うとともに,介護保険施設退所者に対する口腔と栄養管理に関する無作為化比較対照試験を実施した.
結果と考察
要介護高齢者における口腔内および顔面の過敏症状の実態,要介護高齢者における咬筋厚と四肢骨格筋量との関連, アルツハイマー病高齢者の食生活の自立と身体組成,栄養状態に関する知見, 介護保険施設入所者の摂食嚥下機能の簡易評価, MNA-SF, CNAQ, 自発摂食能力, それどれと死亡率の関係を明らかにした.二次予防対象高齢者, 介護保険施設利用者における複合プログラム,口腔内および顔面の過敏症状軽減を目的とした手技の効果,介護保険施設退所後の口腔と栄養に関する経過の実態調査と在宅療養の継続に影響する因子を明らかにした.これら知見はガイドラインの次期改訂に用いるよう論文作成等行っている.
結論
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインは完成したが,既存のエビデンスがなく介護現場で有用なガイドラインとしては十分でないと思われる.今後は本研究事業で得られた口腔・栄養管理に関する評価,効果に関するエビデンスを追加,修正を行うとともに,改訂を行っていく必要がある.
在宅高齢者に対する多職種連携による経口維持支援の効果検証では,在宅療養を継続するには,摂食嚥下機能を回復し食形態を改善すること,在宅における口腔ケアを支援することが重要であることが示唆された.今後は,口腔と栄養に関する支援が在宅療養の継続に与える効果の創出と,それらに基づいた制度等の基盤整備および地域の支援体制の構築を行っていく必要がある.

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201715004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインの作成に関しては、既存のエビデンスがないなか、高齢者の口腔と栄養に関する2つの専門学会の協力を得て作成し、パブリックコメントの募集、対応まで行い完成させた意義は大きい。また、口腔・栄養に関連する評価指標の開発検証、5つの介入試験による効果検証を実施したことは、ガイドラインの提示とともに、当該分野の研究の推進に大きく貢献するものと考える。
臨床的観点からの成果
本研究事業にて要介護高齢者の口腔・栄養管理の指標として、その妥当性を明らかにした食欲の指標(CNAQ)と自発摂食能力評価は、介護者でも簡便に評価することができる指標であり、これらは要介護高齢者に対するケアに根拠を与え、ケアの質の向上に大きく貢献すると思われる。また、介護保険施設等で実際の要介護高齢者を対象に実施した無作為化比較対照試験の結果についても、介護の現場に大きな影響を与えるものと考える。
ガイドライン等の開発
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドラインを作成し、日本老年歯科医学会、日本在宅栄養管理学会のホームページにて公開した。
その他行政的観点からの成果
社保審-介護給付費分科会 第153回(H29.11.29) 口腔衛生管理体制加算のメリット(口腔内の状況)において本研究による知見が参考とされた。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
26件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakamoto M, Watanabe Y, Edahiro A. et al.
Self-feeding ability is a predictor of mortality in Japanese nursing -home residents: A two-year longitudinal study
J Nutr Health Aging. , 23 (2) , 157-164  (2019)
10.1007/s12603-018-1125-2.
原著論文2
Mikami Y, Watanabe Y, Edahiro A. et al.
Relationship between mortality and Council of Nutrition Appetite Questionnaire scores in Japanese nursing home residents.
Nutrition , 25 (57) , 40-45  (2018)
doi: 10.1016/j.nut.2018.05.030.
原著論文3
Kugimiya Y, Ueda T, Watanabe Y. et al.
Relationship between Mild Cognitive Decline and Oral Motor Functions in Metropolitan Community-Dwelling Older Japanese: The Takashimadaira Study.
Arch Gerontol Geriatr. , 81 , 53-58  (2019)
10.1016/j.archger.2018.11.008.
原著論文4
Igarashi K, Watanabe Y, Kawai H. et al.
Relationship between knee extension torque and occlusal force in community-dwelling elderly individuals.
J Oral Sci. , 61 (4) , 508-511  (2019)
10.2334/josnusd.18-0381.
原著論文5
Ito K, Edahiro A, Watanabe Y. et al.
Qualitative analysis of the vocabulary used in work logs of a preventive program for elderly oral function and nutrition.
J Oral Rehabil. , 46 (8) , 723-729  (2019)
10.1111/joor.12804.
原著論文6
Yamamoto K, Motokawa K, Watanabe Y. et al.
Association of Dietary Variety and Appetite with Sleep Quality in Urban-Dwelling Older Japanese Adults.
J Nutr Health Aging. , 24 (2) , 152-159  (2020)
10.1007/s12603-019-1297-4.
原著論文7
Motokawa K, Yasuda J, Watanabe Y. et al.
The Mini Nutritional Assessment-Short Form as a predictor of nursing home mortality in Japan: A 30-month longitudinal study.
Arch Gerontol Geriatr. , 86  (2020)
10.1016/j.archger.2019.103954.
原著論文8
Kugimiya Y, Watanabe Y, Igarashi K. et al.
Factors associated with masticatory performance in community-dwelling older adults: A cross-sectional study.
J Am Dent Assoc. , 151 (2) , 118-126  (2020)
10.1016/j.adaj.2019.10.003.
原著論文9
Hoshino D, Watanabe Y, Edahiro A. et al.
Association between simple evaluation of eating and swallowing function and mortality among patients with advanced dementia in nursing homes: 1-year prospective cohort study.
Arch Gerontol Geriatr.  (2020)
10.1016/j.archger.2019.103969
原著論文10
Iwasaki M, Motokawa K, Watanabe Y. et al.
Association between oral frailty and nutritional status among community-dwelling older adults: the Takashimadaira Study.
J Nutr Health Aging. , 24 (9) , 1003-1010  (2020)
10.1007/s12603-020-1433-1.
原著論文11
Yamamoto K, Motokawa K, Watanabe Y. et al.
Dietary variety is associated with sleep efficiency in urban-dwelling older adults: A longitudinal study.
Clinical Nutrition ESPEN , 41 , 391-397  (2020)
10.1016/j.clnesp.2020.10.013.
原著論文12
Ohara Y, Kawai H, Watanabe Y. et al.
Association between anorexia and hyposalivation in community-dwelling older adults in Japan: a 6-year longitudinal study.
BMC Geriatr. , 20 (1)  (2020)
10.1186/s12877-020-01905-0.

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201715004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,841,000円
(2)補助金確定額
5,827,000円
差引額 [(1)-(2)]
14,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 348,100円
人件費・謝金 3,132,509円
旅費 346,875円
その他 653,500円
間接経費 1,347,000円
合計 5,827,984円

備考

備考
平成30年3月に研究支援で雇用した者が出勤していたが、タイムカードの機器の故障で刻印がなかったため、出勤とならず研究費から支払いが出来なかった。このため1日分の賃金14000円が差異として生じた。この賃金については研究代表者が私費にて支払った。

公開日・更新日

公開日
2019-03-20
更新日
-