非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備

文献情報

文献番号
201713004A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備
課題番号
H29-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部内科学(血液)教室)
研究分担者(所属機関)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学 大学院医学研究科医学専攻内科学講座血液内科学)
  • 日野 雅之(大阪市立大学 大学院医学研究科血液腫瘍制御学 )
  • 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科)
  • 中世古 知昭(千葉大学大学院医学研究院 血液内科学)
  • 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部技術部)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部再生医療科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部 内科学講座血液・腫瘍内科部門)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)件数と比較すると、非血縁者間骨髄移植件数は未だに低い。本研究の目的は、これまで非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)の導入を検討してきた研究班の成果を踏まえ、造血幹細胞移植医療体制を支える様々な組織と連携し、包括的視点から非血縁者末梢血幹細胞の効率的提供と、その至適な利用率増加に繋がる様々な調査、解析を実施し、UPBSCTにおけるドナーの安全担保と効率的な提供体制の構築と移植成績向上に役立てることである。具体的には、地域内及び地域間の採取施設の効率良い連携体制の確立、海外における末梢血幹細胞採取の効率化に関する情報の収集と我が国への導入の可能性、移植合併症の有効な予防法の開発、そして治療へのアクセスを担保する治療体制の整備、UPBSCTを受ける患者選択の最適化、血縁・非血縁ドナー安全情報の一元管理システムの構築などの視点から取り組み、目的達成を目指す。
研究方法
UPBSCT後の慢性GVHDの対策と治療体制の整備に関しては、慢性GVHDの有力な治療法ECPの至適配置について、ECPが末梢血幹細胞採取capacityとの競合を視野に入れて検討した。慢性GVHDの効率的予防に関しては、少量ATGによる予防の有用性について、臨床データを用いて後方視的に検討を加えた。2.ドナーコーディネートと末梢血採取(UPBSCC)体制の効率化に関しては、骨髄バンクと連携し、アンケート方式による観察研究を実施、骨髄採取と末梢血幹細胞採取のドナー負担を比較した。非血縁ドナーからの末梢血幹細胞採取に関するデータを解析し、ドナーの負担軽減のために1日で採取が終了する件数を増加させる方策を検討した。採取体制の効化に関しては、日本赤十字社がUPBSCCに関与する可能性に関しても検討した。3.ドナー安全情報管理の一元化に関しては、ドナー傷害保険加入適適格性の判定とフォローアップを、日本造血細胞移植データセンターに移行し継続するプロセスを構築した。
結果と考察
少量のATGを移植直前に投与することで、移植後の慢性GVHDの頻度と重症度を非血縁者間骨髄移植と同等のレベルまで低下させることを明らかにし、慢性GVHDのリスクを減らして安全なUPBSCTを施行する為にATG投与が有効である可能性を確認した。 今後は、他の研究班と連携し、多数の症例での解析で、この結果を確認する。また、北海道をモデルとした慢性GVHD治療のためのECPの効率的な配備についての検討では、行政の規定する地域にこだわることなく、現状で既に構築されている移植医療連携体制を視野に入れて、その配備を検討することが必要と考えられた。現状から予測されるUPBSCC増加に対応する採取キャパシティーについては、近畿地域での検討で対応可能と判断されたが、今後は、交通の整備やドナーの利便性や地域性を検討して施設を増やすことが必要と考えられた。現在の採取マニュアルを今後も遵守するのではなく、今後はドナーの利便性の視点から、見直しを計ることも必要と考えられた。これに関しては、ドナーの安全性評価に必要なG-CSF投与中の検査の見直しを行うこと、UPBSCCの安全性を担保して効率を高めることで、今回の検討でドナーの負担軽減に繋がる可能性を明らかにした。UPBSCCへの日本赤十字社アフェレーシスナースが貢献できる余地が有ると考えられたが、採取医療機関内での活動が望ましく、採取を集約する場合でも医療機関に隣接する場所に整備する必要があると教えられた。ドナー安全情報の収集については、日本造血細胞移植データセンターと日本造血細胞移植学会ドナー委員会が連携し、有害事象報告に対する追加調査や解析、対応策の検討、ガイドラインへの反映などが円滑に施行できるものと考えられる。

結論
UPBSCTの安全性と成績向上について、その合併症(特に慢性GVHD)対策として、移植前少量ATG投与重症慢性GVHDの頻度は有意に低下しGRFSが改善することを示した。慢性GVHDに有効な治療法としてのECP承認後のECP施行施設について、その効率よい配置には、地域のPBSCC採取capacity、施設へのアクセスの視点が不可欠であることを確認した。UPBSCCの体制の安全性は確認できたが、現在の採取マニュアルを今後も遵守するのではなく、今後はドナーの利便性という視点から、これまで骨髄バンクおよびドナー登録事業に蓄積されたデータを解析し、そのデータに基づいて、ドナーの安全性評価に必要なG-CSF投与中の検査項目や採取の方法の見直しを計ることも必要と考えられた。血縁・非血縁者ドナーからの末梢血幹細胞採取の安全性に関しては、JDCHCTと連携して血縁・非血縁同種末梢血ドナーの長期安全情報一元化管理体制を新たに構築した。

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201713004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,190,000円
(2)補助金確定額
8,190,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,789,074円
人件費・謝金 0円
旅費 2,446,630円
その他 64,300円
間接経費 1,890,000円
合計 8,190,004円

備考

備考
物品を購入した際、4円不足したため自己資金で補った

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-